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地球が見える 2005年

犬ぞりで行けなくなる?北極点 〜減少を続ける北極海氷〜

図1 AMSR-Eが捉えた北極海の海氷変動(3ヵ月毎)
* 10日毎の画像はこちら(Quick time形式 6.62MB)

図1はNASAの地球観測衛星Aquaに搭載されている日本のマイクロ波放射計AMSR-Eが捉えた北極海の海氷の年次変化の様子をアニメーションで示したものです。
図では観測された海氷を白色で表し、描画範囲内の地形のうち海の部分を濃い青、陸の部分を灰色で表しています。Aquaはその軌道の制約により北極点付近は観測できないため、図中央の北極点付近はデータのない濃い青い丸として描かれています。
北極海の海氷は北極海に流れ込む河川から供給される淡水を主な起源とする比較的塩分濃度が少ない海水が凍ったもので、季節によりその量は大きく変化します。

図2 AMSR-Eが捉えた北極海の夏季の海氷分布

図2は左から順に2002年、2003年、2004年のそれぞれ9月の月平均分布(降交軌道)を示しています。9月頃は1年のうちで、北極海の海氷域が最も小さくなる時期で、赤い線は、同月の1988年から2000年の平均値を示しています(米国National Snow and Ice Data Centerの作成によります)。2002年、2003年、2004年のいずれも、海氷域が赤い線の範囲に比べて一回り小さくなっていることが分かります。また、北アメリカ・ユーラシア両大陸沿岸と海氷の間に隙間(海面)ができ、大陸から北極点へ直接歩いたり、犬ぞりを使ったりして向かうことがむずかしくなってきたことがわかります。

北極海の海氷の量は、観測が行われるようになったここ数十年の間、減少を続けています。この原因は大気圏内の温室効果ガス(二酸化炭素、メタンなど)の増加による北極圏の気温上昇、いわゆる地球温暖化の現れであると考えられています。近年においては夏季における海氷の面積減少も顕著になっており、長年マイクロ波放射計SSM/Iで北極の海氷分布の観測を続けている米国国防総省の研究者は昨年、これについて「2010年以降、夏季の北極海からは海氷が殆ど失われてしまうようになるのではないか」という深刻な予測を発表しています。
北極海の海氷の減少は、単純に夏に北極点に立つことができなくなるというだけでなく、地球全体の海流パターンへの影響を通じて、大きな気候変動を招く原因になるのではないかとして注視されています。

例えば、夏季のみとはいえ北極海の海氷がなくなってしまうと、「ブロッカーのコンベアベルト」と呼ばれる海洋の大循環を維持する力が弱まることになります。その結果、例えばメキシコ湾流または北大西洋海流と呼ばれている暖流が弱まり、これまで暖流がスカンジナビア半島付近まで達することにより暖かく保たれていたヨーロッパの気候は一転して同緯度のシベリア並みの寒冷気候へと変貌するのではないかとの予測があります。この他にも世界的な多雨・少雨地域の移動、高温地域の拡大などが発生するとの予想が立てられています。
気候変動は世界各地に多大な影響を及ぼします。JAXAではこれからも衛星観測を通じて地球環境変動の観測を続けて行きます。



観測画像について:
(図1及び図2)

観測衛星: 地球観測衛星Aqua(NASA)
観測センサ: 改良型高性能マイクロ波放射計 AMSR-E (JAXA)
観測日時: 2002年9月1日〜2005年6月1日の3ヵ月毎(図1のFLASH動画)
2002年7月1日〜2005年7月11日の10日毎(図1のQickTime動画)
2002年9月、2003年9月、2004年9月(図2)
いずれもAMSR-Eの6つの周波数帯のうち、36.5 GHz帯の水平・垂直両偏波と18.7 GHz帯の水平・垂直両偏波のデータを元に、AMSR/AMSR-Eのアルゴリズム開発共同研究者(PI)であるNASAゴダード宇宙飛行センターの Josefino C. Comiso博士のアルゴリズムを用いて算出された海氷密接度を表しています。空間分解能はおよそ20 kmです。

関連サイト:
北半球の素顔−大地と海氷と海底−
地球が見える 北極・南極のページ
AMSR/AMSR-Eページ

付録:
ブロッカーのコンベアベルト:
地球の海の表層には、ハワイ付近の北太平洋からインド洋を抜け喜望峰を回り大西洋を縦断して北極海に至る巨大な暖流の流れがあることが知られています。
この海流は北欧・スカンジナビア半島沖で北極圏に達しますが、ここで海氷がこの海流に大きな変化を与えます。海氷は塩分の薄い海水が凍ってできるものであり、海氷ができることで凍れなかったその周辺の海水の塩分濃度は上昇します。この塩分濃度の高い、比重の重い海水を取り込んだ暖流は海氷に冷却されつつ海底へと沈降していきます。そして今度は逆に、大西洋を北から南に縦断する高塩分濃度の深層寒流へと姿を変え、喜望峰沖からは南極周回流に沿って東進しニュージーランドを経て元のハワイ付近まで帰り着くのです。この一連の流れは「ブロッカーのコンベアベルト」と呼ばれ、1サイクルに要する時間はおよそ2,000年と言われています。
この巨大な海水の循環は赤道付近の熱を極付近にまで運ぶ地球のヒートポンプとしての役割を果たしており、表層暖流を深層寒流として折り返す働きをする北極海の海氷はこの循環を回し続けるエンジンの一つを担っていると言えます。

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