地球が見える 2005年
茨城沖まで達した親潮
図1を見ると、東北沖に青色で示される海面水温5℃以下の低温の海水が南北に帯状に伸びている様子が見られます。これは、千島列島から北海道東方沖を南下する親潮系の水です(図1に見えるこの冷水部は親潮第一分枝(*)と呼ばれています)。画像では、東北地方の約50〜100km程度沖合いのところを中心にこの親潮系の水が茨城沖まで南下している様子が鮮明にとらえられています。 茨城沖から三陸沖の海域は、暖かくて塩分濃度の高い黒潮と冷たくて塩分濃度の低い親潮に挟まれ、黒潮起源の暖水塊と親潮起源の冷水塊が混じり合う海域で、「混合水域」と呼ばれています。 図2は2004年11月における海面水温分布図です。このときの親潮の南限(青色の範囲に相当)は、例年並で、岩手県沖(北緯40度くらい)に位置しています。その後、2005年1月下旬から2月初めの短い期間で親潮の南端が宮城県沖から茨城県沖に南下する様子が海面水温画像から観測されています(MODIS準リアルタイム画像のページで1km→SST(海面水温)と進んで画像を参照願います)。
図3は途中経過を示したもので、図3 (a), (b)(1/22、24)の画像では親潮の南端は金華山沖に留まっていましたが、28日には福島沖まで広がり、一部は筋状に渦に巻き込まれ茨城沖にまで達しています(図3 (c))。31日には茨城沖の冷水の幅も20km程度までひろがっています(図3 (e))。31日には茨城沖の冷水の幅も20km程度までひろがっています(図3 (e))。この現象は親潮の異常南下と呼ばれ、アリューシャン低気圧の強化と深い関係があることが知られています。気象庁の気候系監視報告によると、2004年10〜11月にアリューシャン低気圧が強まっていたことが指摘されており、その数ヶ月後に親潮の南下が生じていることになります。 親潮系の冷水の南下は沿岸の環境に大きな影響を与えることが知られています。過去の親潮の異常南下の際は、魚群の分布の変化や不漁など、沿岸漁業への影響が生じました。今年(2005年)の3月には、日本周辺では通常、北海道沖でしか見られない水生生物のクリオネが茨城沖で採取されるなどの冷水の影響が報告されています。また、この冷水が夏まで存在すると、東北地方の太平洋岸に冷夏をもたらす影響を与えている可能性が以前から指摘されています。海面水温画像の解析によって、このような時間的な変化が速く、空間規模が数十km程度の海洋変動現象を捉えることが可能になります。 (*)親潮第一分枝(おやしおだいいちぶんし):本州東方沖では親潮系の水が複数の舌状に分かれて南に張り出すことがあります。このような舌状の冷水部は沿岸側から第一分枝、第二分枝と呼ばれています。
関連サイト: AMSR-Eで見えた黒潮大蛇行 海洋 MODIS準リアルタイム画像 (1km→SST(海面水温)と進んで画像を参照願います) |