地球が見える 2004年
25万年前の氷を蓄える白い島:グリーンランド
画像は昨年初夏のグリーンランドを捉えています。グリーンランドの沿岸部では雪や氷が融けて、地表が見えていますが、内陸部は分厚い氷床(*1)に覆われて真っ白に見えています。グリーンランド西部では、氷床の端が南北に細長く灰色ないし半透明に見えています。同様に海氷も灰色ないし半透明に見えています。これは、氷の表面が融けて数多くの池ができた状態であることを示しています。海岸線は多くのフィヨルド(*2)によって非常に複雑になっています。グリーンランド北部の海岸や北極海はまだ雪と氷に覆われています。画像左上にはエルズミア島が、左にはバフィン島が、左下にはラブラドル半島の一部が、右下には大西洋が、右にはアイスランドが、それぞれ見えています。画像右下の海域はやや明るい青色に見えており、ブルーミング(植物プランクトンの大発生)が起きていることが分かります。 フレームAで東西に延びる白い筋はイルリサット氷河です。この氷河は、1日に25〜30 mも成長し、ディスコ湾に注いで多くの氷山を供給しています。大きなものは、海面からの高さが100mにも及ぶそうです。これらの氷山はラブラドル海流によって南の方に運ばれ、ニューファンドランド島沖まで達します。 フレームBには首都ヌーク(*3)が含まれ、その北東140kmほどのところのイスアでは、世界最古級の38億年前の堆積岩や枕状溶岩が見つかっています。これらの岩石は、38億年前にすでに海があったことを示しています。 フレームCには「グリーンランド」という名前の由来となった最初の入植地、ナルサルスアークが含まれています(付録を参照願います)。 グリーンランド北端のモリス・ジェサプ岬は北緯83°39′、北極点まで708kmのところにあり、陸地の最北点に当たります。 世界最大の島であるグリーンランドの面積は約218万平方km(日本のおよそ6倍)に及びますが、大部分は北極圏にあり、約85%は氷床に覆われています。グリーンランド氷床の平均高度は2,132mで、最高点は3,231mに達します。一方、氷床の最大の厚さは3,411mであり、その基底部は、海面下約300mのところにあります。これは、氷の重さによって、地殻がへこんでいることを意味します。また、グリーンランド最高峰のグンビヨルン山(標高3,700m)は東部の沿岸域にあり、沿岸にある山脈が、フライパンの側面のように、巨大な氷床が海に流れ出ないようにせき止めていることが分かります。 グリーンランドにある氷の体積は285万立方kmと推定されており(*4)、氷床の中央部の最深部には、25万年以上前の氷が蓄えられています。万が一、この氷床すべてが融けると海面が7.2m上昇すると推定されています(*4)。 (*1)氷床とは、広い地域にわたって数千年〜数十万年分の氷を蓄えている場所を言います。南極とグリーンランドの氷床はその中でも最大のものです。 (*2)フィヨルドは、ノルウェー語で内陸部へ深く入り込んだ湾という意味で、氷河が滑りながら厚い氷の底にある地面を深く鋭く削りとってできた深い谷間(氷食谷)に、海水が入り込んでできた地形のことです。 (*3)グリーンランドはデンマーク領ですが、1979年のグリーンランド内政自治法により、大幅な自治が認められ、ヌークが事実上の首都となっています。 (*4) IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル)2001レポートによります。南極氷床には2571万立方kmの氷が蓄えられており、この氷床すべてが融けると、海面が61.1m上昇すると推定されています。但し、2100年までに南極とグリーンランドの氷床が大量に融けるとは予測されておらず、2100年には1990年に比べて、海面が9〜88cm上昇すると予測されています。IPCC2001レポートについては、下記ページを参照願います。 関連ページ ・地球産業文化研究所(GISPRI)ホームページ ・IPCCホームページ
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