地球が見える 2004年
衝突クレータを記憶する楯状地:カナダ、ラブラドル半島
画像は昨年早春のカナダ北東部のラブラドル半島を捉えています。北緯 50 °付近より北の地域はまだ雪と氷に覆われています。画像左上にはハドソン湾が、左下には五大湖の一部が、右下にはセント・ローレンス湾、ノバスコシア半島、小説や映画で有名な「赤毛のアン」シリーズの舞台となったプリンス・エドワード島が、右にはニューファンドランド島と大西洋が、それぞれ見えています。 ラブラドル半島は、 6 億年前(先カンブリア時代の終わりころ)にできた花崗岩の台地であるカナダ楯状地 (*1) の一部で、長年にわたる風雨や氷河による浸食によって湖の多い地形になっています。また、この地域には多くの巨大な衝突クレータ (*2) が残されており、 GLI 画像でも、以下のクレータが見えています。 A-C の枠内をクリックすると、それぞれの拡大図を見ることができます。クレータは、形成された時代や地質、その後の風化・浸食などの影響で、植物が繁茂したり、湖になったりしています。生成時期の古い順に示します。
なお、C.のマニコーガン・クレータは、フランスのロシュショール・クレータ(直径約25km)、カナダ・マニトバ州のセント・マーティン・クレータ(40km)などとともに連鎖クレータであることがわかっています(*3)。連鎖クレータとは、1994年7月に木星に衝突したシューメーカー・レビー第9彗星のように元々一つの天体が、いくつかに分裂して、次々に衝突してできたクレータを言います。月や木星の衛星ガニメデにもそのようなクレータが見られます。 さて、ニューファンドランド島の西海岸にあるグロス・モーン国立公園のテーブルランドは 4 億 5000 万年前(オルドビス紀)に北アメリカ・プレートとユーラシア/アフリカ・プレートが衝突した時に上部マントルの一部が海洋底の地殻を突き破って地表に露出し、高さ 600m のカンラン岩の台地となったものです。このことが主たる要因となって、グロス・モーン国立公園はユネスコの世界遺産として登録されました。 一方、ニューファンドランド島最北端にあって、世界遺産として登録されたランス・オ・メドウ(低湿地のところの入り江の意)では、今から6000年前の原住民の活動の跡と、コロンブスの西インド諸島到達よりおよそ500年早い西暦1000年ころのバイキングの集落跡が見つかっています。 (*1)楯状地(たてじょうち)とは、おもに先カンブリア時代の岩石でできている平らで広大な地域を言います。全体的に見ると、中央部がやや高く、周辺に向かって次第に低くなっていて、中世の騎士が使った楯を伏せたような形をしていることから楯状地と呼ばれます。カナダ楯状地の他にはバルト楯状地などがあります。 関連ページ (*2) カナダのニュー・ブルンズウィック大学が運営している地球衝突データベース (*3)シカゴ大学のニュースリリース
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