地球が見える 2004年
沙漠を前進する不思議な河
中国内陸部・新疆ウイグル自治区。乾燥した沙漠地帯に、夏の間だけ姿を現し、約3カ月かけて大沙漠を横断するという不思議な河があります。 氷雪をいただく崑崙(コンロン)山脈の雪どけ水に源を発する伏流が山麓から数10kmも離れたところでオアシスを形成し、そこからさらにいくつかの流れが、タリム盆地をめざしながら深い谷を縫うように流れ、やがてホータン河と呼ばれる大河となります。毎年6月ごろ、水嵩を増したホータン河の流れは、広大なタリム盆地に広がるタクラマカン沙漠の中を人間が歩くぐらいの速さでゆっくりと前進しはじめ、8月にはタリム盆地の北部を流れるタリム河にまで達します。この間、500キロメートル以上にわたって北上しタクラマカン沙漠を縦断するのです。 図1と図2は地球観測衛星みどりⅡのグローバルイメージャ(GLI)がとらえた2003年6月15日と8月2日のホータン河の様子です。植物を感知できる近赤外チャンネルのデータを使って画像化したもので、水域は黒、植生は緑、雪や雲は白で表示されています。また、画像の大半を占める褐色の部分は、植物の生えていない沙漠などの裸地に相当します。 6月15日にはタクラマカン沙漠の途中で途絶えていたホータン河は、8月2日には沙漠の北側を流れるタリム河にまで至っていることが画像からわかります。また、この頃になると、崑崙山脈の雪(白くあらわされている部分)はだいぶ少なくなり、山麓の緑はその広がりを増しています。 ホータン河の途中にあるオアシス都市・ホータンの周辺には、沙漠の中に緑の帯が点在していることがわかります。古くからの交易路・西域南道はこれらのオアシスを結びながら、シルクロードの一部をなしています。
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