地球が見える 2004年
サンゴ礁特集②
衛星からサンゴ礁の分布をとらえることができるか
衛星を利用してサンゴ礁の分布を把握するためには、衛星画像から海底の底質−サンゴ・砂・岩礁など−を分類できな ければなりません。そこで、まずトレーニングエリア(こうした分類の標本を抽出するために設定される場所) として、那 覇から船で西に1時間のところに位置する慶良間列島(図1)を選びました。沖縄本島周辺のサンゴは産卵期に慶良間 から海流にのって運ばれてきたと考えられており、慶良間は美しいサンゴ礁の宝庫としてダイバーからも高い人気を集 めている島々です。
次に、この慶良間列島のいくつかの地点(図2 -A,B,C )を選んで図3のような航空写真を撮り、現地調査に基づいて航 空写真を判読して、図4のようなサンゴの被度(サンゴが海底を覆っている割合)や底質の分類を示す図を作成します。 その結果から、それぞれの地点でトレーニングデータ(標本)を取得します(図5)。そして、慶良間列島の衛星データ ( こ こでは LANDSAT データ)を取得して、まず砂地とそれ以外に大分類した後、トレーニングデータの分類に基づいてサン ゴ、砂、岩礁、深海に分類したものが図6です。この分類結果は、水深 2 〜 3m 程度の浅い海域の高被度サンゴについて は、約 80% の正解率となりました。
このように衛星画像から海底の底質を分類する手法の開発により、サンゴ礁の分布を把握するために衛星画像が利用可能であることがわかりました。しかし、今後こうした手法を沖縄本島周辺の海域などに適用していく上で、解決すべき問題がいくつかあります。例えば、図6のような底質の分類は水深が深い海域では精度が落ちてしまうこと、死んだ直後のサンゴは表面に藻が付着しており(生きた)サンゴとして誤分類される可能性があること、そして赤土の流出した海域は取り除く必要があることなどが挙げられます。 サンゴ礁の実態を把握することは、サンゴ礁の分布する地域だけの課題ではありません。サンゴ礁は、共生藻の光合成により、熱帯雨林による二酸化炭素の吸収量が年間2-3kg/㎡であるのに対し、4.3kg/㎡もの二酸化炭素を吸収しており、サンゴの減少は大気中の二酸化炭素の増加につながります。 今後、打上げが予定されている陸域観測技術衛星(ALOS)搭載の高性能可視近赤外放射計2型(AVNIR-2)は、10mの地上分解能のメリットを活かした調査が可能になると期待されています。EORCでは、今後もサンゴ礁の実態調査への衛星画像の利用を検討・促進していくことで、地球環境問題の解明に貢献していきます。
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