地球が見える 2004年
サンゴ礁特集①
いま、サンゴ礁に何が起こっているか
図1の各衛星画像は、アメリカの地球観測衛星LANDSAT-5, 7が写した沖縄本島と周辺の島々です。島々の沿岸海域がエメラルドグリーンに輝いて見えるのは、浅いサンゴ礁の海底を覆う白い砂が太陽光を反射するためです。いま、この美しい沖縄周辺のサンゴ礁の海に何が起こっているのでしょうか。
サンゴのうち、造礁サンゴ(イシサンゴ)と呼ばれるものが浅い海に生息して石灰質の石の骨格を作り、サンゴ礁という巨大な地形を築きます。造礁サンゴは水温が18〜30度くらいの熱帯・亜熱帯の海岸に分布し、もっとも多く生息しているのはインドネシア、フィリピン、ニューギニアで囲まれた海域(図2)です。日本では、主に種子島以南の海域に分布しています。しかし近年、さまざまな要因から世界のサンゴを取りまく環境は悪化しています。宇宙航空研究開発機構(JAXA)地球観測研究センター(EORC)では、サンゴ礁の実態調査に衛星画像を利用できるかどうかを検討するべく(財)亜熱帯総合研究所との共同研究を実施し、沖縄周辺のサンゴ礁を調査しました。
1998年夏、世界的に海水温が上昇し、大規模なサンゴ礁の白化現象が起こりました。沖縄のサンゴ礁も大きな打撃を受けました。サンゴの白化現象とは、造礁サンゴが体内に沢山住まわせている小さな藻(共生藻)を失って白い骨格が透けて見え、白くなる現象です(図3)。造礁サンゴは共生藻の光合成によってエネルギーの多くを得ているため、白化した状態が長く続くと共生藻からの光合成生産物を受け取ることができなくなり、死んでしまいます。この白化現象は、サンゴが高水温・低水温・強い光・紫外線・低い塩分などのストレスを受けて共生藻を失うことによって起こると考えられています。 また、陸からの赤土の流出も沖縄のサンゴ礁の生態系を破壊している大きな原因です。赤土の流出は、強い雨が降る と開発現場、農地、米軍演習場などから土壌が流出して海を濁らせるものです(図4)。沖縄の土壌は、接着剤の役目 をする腐植層(黒い土の層)が極めて薄いなど、赤土が流出しやすい自然の要因をはらんでいる上に、開発のために 山の植生を引きはがし裸地状態にするという人間活動が加わって、赤土の流出が引き起こされていると言えます。
このように、沖縄のサンゴ礁は高水温による白化や赤土の流出などの危機に直面しています。こうしたサンゴ礁の実態を調査するために、EORCでは広い地域を、同じ条件で、何度でも観測できる衛星の画像を利用することを検討し、開発された手法を用いてサンゴ礁の分布を把握しました。次回のサンゴ礁特集②「衛星からサンゴ礁の分布をとらえることができるか」では、衛星画像を使ってサンゴ礁の分布を把握するまでの方法と結果、今後の課題などについて報告します。
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