ここではTRMMによって観測されたエルニーニョに伴う海面水温の変動と、それに対応する降水量の分布を示します。
PRの観測から見積もられた1998年2月の高度2kmにおける月積算降水量です。夏半球である南半球に特に降雨の多い領域が見られます。赤道付近で東西に帯状に拡がる雨の多い領域が熱帯収束帯(ITCZ)です。平年のこの時期はオーストラリア北部やインドネシアなどの雨季に当たっており、西部熱帯太平洋から日付変更線にかけて雨の多い領域が拡がっていますが、この図では、降水量の最も多い領域がより東側の西経150度付近に移動しているのがわかります。これは、前年から続いていたエルニーニョの影響であると考えられます。なお、チベット高原やロッキー山脈、アンデス山脈などで降雨が示されていないのはそこでの標高が2kmを越えているためです。
下図に見られるとおり、通常水温の低い南米ペルー沖に至る東部赤道太平洋で非常に水温が高くなっており、逆に西部赤道太平洋では水温が下がっていました。エルニーニョによる海面水温の変動に対応して、上図の熱帯収束帯で降水量の多い領域が例年に比べ東側へ移動し、西部太平洋で降水量が少なくなっている様子が現れています。このような熱帯での大規模な降水域の移動は、世界の気象に大きな影響を及ぼします。
関連リンク Aqua/AMSR-Eから見た2002/03エルニーニョ