降雨レーダ

PRの検証と結果

  TRMM では降水分布の絶対量を精度良く測定することが目的となっているためレーダ反射因子、降水量、それぞれの絶対量の検証が必要であり、地上レーダ、雨量計網との比較などが重要です。
 地上レーダによる反射因子の検証は、石垣島の気象レーダ等の我が国の地上降雨レーダ、シンガポールに設置した英ラザァフォードアップルトン研究所のレーダで行っています。また、JAXA所有の可搬型気象ドップラーレーダを全地球エネルギー・水循環実験観測計画(GEWEX)アジアモンスーン実験(GAME)計画の一環としてチベットに設置し、約半年間の観測を実施しました。また、宮古島、鹿児島でもこのレーダを用いたキャンペーン観測を実施しました。その後、種子島にて定常観測を実施しており、これらのデータを用いて、TRMM/PR データとの比較検証を行っています。さらに、TRMM 降雨データは、GAME の集中観測と同期して観測されたゾンデ・レーダ等の地上観測のデータや我が国の雨量計による全国ネット観測網(気象庁のアメダス等)の結果とも比較検証を行っています。また同様に、TMI で得られたマイクロ波により観測された降雨量との比較検証も行っています。

検証 - キャンペーン実験
- 地上レーダ、雨量計を用いた常時観測
- レーダ反射因子(Z)と降水強度(R)を比較する
JAXA Xバンドレーダ
日本のキャンペーン実験
・IMCET、GAME−Tibet、X−Baiu、etc.
気象庁の石垣島レーダ (Cバンド)
・Xバンドレーダ (JAXA, 名古屋大学, 北海道大学)
CRL 航空機搭載マルチパラメータレーダ (CAMPR) (Kuバンド)

常時観測
・気象庁レーダ、レーダアメダス、アメダス
MUレーダ (京都大学)
・雨滴計 (名古屋大学)
 
 現在、TRMM レーダの状態は非常に良く、またその技術的な校正も内部校正、能動型レーダ校正器、さらに無降雨時の海面散乱強度などから1 dB 以内で信頼できるとの結果が得られています。さらに、地上レーダと異なり、異常伝播やクラッターの影響が小さくデータが非常にクリーンであるという特徴も確認されました。
 一方で、レーダの感度は限界があり弱い降雨が観測から漏れてこれが降雨統計にも数パーセントの誤差を含む可能性のあること、また上空の弱い降水粒子層を十分には観測できないらしいことなどの問題が指摘されています。また、クラッターにもアンテナサイドローブの影響と思われる極く弱いエコーが認められています。しかしながら、これらは素性が知れており、現アルゴリズムではクラッター除去処理が行われており、これらからTRMMレーダのデータの質は地上レーダなどと比較しても良いと考えられます。

校正・検証結果のまとめ

- PRは6年間、非常に安定している。
- 1dB(デシベル)の精度である。
- 充分かつ精密な校正を行っている。
- 地上レーダとPRの間で反射強度因子の測定に関して非常に良い一致を見た。

 
  1. アルゴリズム・・・フローチャートアルゴリズムの出力例
  2. 標準プロダクト・・サンプル画像
  3. PRの校正検証結果・・校正/検証と結果