宇宙からみた 1月8日内陸部の大雪

図1 実況天気図(2017年1月8日18時)
図1 実況天気図(2017年1月8日18時)

南岸低気圧の通過と内陸部の大雪

2017年1月8日から1月9日にかけて、低気圧が発達しながら日本の南の海上を通過しました。 この影響で、九州から東北地方にかけての広い範囲で雨や雪が降りました。 伊豆諸島では、1時間に20ミリ以上の強い雨の降った所がありました。 関東甲信地方には、低気圧に向かって北東から冷たく湿った風が吹き込み、関東の北部山沿いや甲信では、 8日の昼過ぎから9日の明け方にかけて雪となりました。 9日5時までの24時間降雪量は、栃木県日光市で20センチ、群馬県草津町で24センチ、山梨県の富士河口湖町で43センチ、 甲府市で9センチ、長野県松本市で22センチなどと、各地で大雪になりました。

JAXAのGSMaPで見る降水域

これは、気象衛星の画像に、JAXAのGSMaPプロダクトのデータを重ね合わせたものです。 GSMaPのデータは、宇宙から雨を観測できる複数の衛星を利用して観測された降水分布で、地上レーダがない地域でも観測可能です。 データは世界中を10km間隔でくまなく網羅しており、ほぼリアルタイムで入手できます。 日本付近をみると、この時間は低気圧や前線の雲が本州付近から南の海上にかかっており、そのうち発達した雨雲の部分が降水エリアになっています。
関東甲信地方付近を詳しく見ると、降水エリアがほぼ全域にかかっています。 このうち、降水強度が1時間あたり15~20mmのやや強いエリアが伊豆諸島や静岡県などにあって東へ進んでいます。

図2 GSMaP(2017年1月8日18時)JAXA「世界の雨分布リアルタイム」より引用)
図2 GSMaP(2017年1月8日18時)JAXA「世界の雨分布リアルタイム」より引用

上空では雪(茨城県つくば市館野)

これは、2017年1月8日21時の茨城県つくば市上空のエマグラムと呼ばれるものです。 地上から上空の気温などの分布を表しています。 横軸が気温(℃)、縦軸は高度の代わりに気圧(hpa)の自然対数がとってあります。 黒い実線が気温と気圧を結んだ線です。 つくば市は、この時間は地上(高度26m)の気温が6.7℃で、雨が降っていました。 上空の様子を見ると、気圧870.2hpa(高度1,193m)の気温が0.1℃となっていて、これよりも上空の気温は氷点下です。 つくば市では、この高度付近で上空の雪が解け始め、地上には雨で到達したということになります。 エマグラムの線は、一番寝ている緑色の線が乾燥断熱線、次の青色の線が湿潤断熱線、一番立っている紫色の線が等飽和混合比線と呼ばれます。 また、グレーの線は湿潤断熱線と平行に引かれた線です。 黒い実線とグレーの線は気圧850hPa付近までほぼ重なり、この高度までの湿度が100%ということが分かります。 気温は、地上(高度26m)から高度1,193mにかけての1,167mで6.6℃下がったことになり、湿潤断熱減率の典型的な値(6~7℃/1,000m)に近い値です。

図3 エマグラム(館野:2017年1月8日21時)"
図3 エマグラム(館野:2017年1月8日21時)
ワイオミング大学のサイトより引用

関東北部の山沿いや甲信で大雪に

1月8日18時の関東甲信地方周辺の気温の様子です。 この時間は、栃木県や群馬県の山沿いや、山梨県・長野県の所々で地上の気温が0℃以下になり、雪が降りました。 地上の気温が0℃以上の所は、多くの地点で雨でした。
関東北部の山沿いや山梨県・長野県の各地では、低気圧に伴う発達した雲がかかった8日昼過ぎから9日明け方にかけて、 地上の気温が0℃以下だったため雪が降り続き、大雪となりました。

図4 アメダス気温(2017年1月8日18時)
図4 アメダス気温(2017年1月8日18時)

(解説:日本気象協会) 宇宙から見た気象現象シリーズ第1弾