画像ライブラリー
陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)による霧島山(新燃岳)噴火における緊急観測結果(3)
2011年1月19日午前1時27分頃(日本時間、以下同じ)、霧島山(新燃岳)にて小規模な噴火が発生し、その後も噴火が続いて1月27日午後3時41分には大きな空気振動を伴う爆発的噴火を観測しました。宇宙航空研究開発機構(以下JAXA)では1月21、23、24、28、29、30、及び31日に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載の高性能可視近赤外放射計2型(アブニール・ツー)による緊急観測を実施し(1)(2)、またLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)による緊急観測を1月27、29、及び30日に実施しました。ここではPALSARによる緊急観測の結果を示します。
図1はPALSARによる観測位置を示し、赤枠は2011年1月27日と29日(昇交軌道)、青枠は2011年1月30日(降交軌道)のおよその観測位置を示します。
図2左上は2010年2月17日(噴火前)にPALSARで取得された新燃岳周辺の画像、他は噴火後の緊急観測による画像で、2011年1月27日(図2右上)と1月29日(図2左下)は昇交軌道による西南西方向からの観測となります。1月30日(図2右下)の観測は降交軌道による東南東方向からの観測となります。それぞれの図中の白枠が霧島連山(新燃岳)周辺を表します。
図2の霧島連山周辺(白枠部分)を拡大したのが図3です。 図3左上が2010年2月17日(噴火前)、2011年1月27日(図3右上)と1月29日(図3左下)は噴火後の観測結果で、それぞれの黄枠内が新燃岳です。これらの画像は全て西南西方向からの観測のため、西南西側に向いた山の斜面や火口縁からの散乱が強く、白く輝いていますが、それぞれPALSARからの入射角が異なるため、その写り方はやや異なります。一方、1月30日(図3右下)の観測では東南東方向からの観測のため、他の観測結果とは写り方が全く異なります。
図4は新燃岳周辺の拡大画像で、西南西方向から観測した2010年2月17日(図4左)、2011年1月27日(図4中央)、2011年1月29日(図4右)の画像です。噴火前の画像(図4左)では、新燃岳の火口内に火口湖と思われる暗い領域(注1)が確認されます。噴火後の1月27日(図4中央)の画像では新燃岳火口内の火山湖と思われる暗い領域は確認できず、消失したものと推測されます。一方、火口内中央付近には反射が強い領域が確認され、火口内中央付近の表面が局所的に隆起しているのではないかと推測されます。また、1月29日(図4右)にはその隆起していると思われる領域が広がっているように見えます(注2)。
図5は新燃岳周辺の拡大画像で、東南東方向から観測した2011年1月30日(図5右)と同じ方向から観測した2011年1月18日(図5左)の画像と比較します。2011年1月18日(図5左)は噴火前日ですが、この画像では新燃岳の火口内に火口湖と思われる暗い領域が2010年2月17日(図4左)と同様に確認されます。2011年1月30日(図5右)の画像ではその火山湖は消滅し、火口内部がやや広く滑らかに隆起しているように見えます。
取得された画像は、内閣官房、気象庁、防災科学技術研究所などに提供しました。
JAXAでは今後も「だいち」による新燃岳周辺の観測を継続していく予定です。
(注1): 水面が暗く写るという合成開口レーダの特性を利用し、火口内に境界が明瞭な暗い領域を火山湖と推定しています。
(注2): 全画像オルソ補正無し。
関連情報
2011/1/28: 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)による霧島山(新燃岳)噴火における緊急観測結果
JAXA EORC