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「だいち2号」による2026年8月26日のネパール洪水・土砂災害の観測結果
概要
- 2026年8月26日(現地時間)、ネパール北部の中国との国境付近で大規模な洪水・土砂災害が発生しました。氷河を含む斜面崩壊との関連が指摘されており、下流の河川沿いに被害が広がりました。
- 「だいち2号」(ALOS-2)搭載の合成開口レーダ「PALSAR-2」が取得した災害前後の観測データを用い、地表面の変化を把握するためのカラー合成画像を作成しました。
- 災害前の画像を赤、災害後の画像を緑と青に割り当てることで、災害後に後方散乱強度が低下した場所を赤色で表示しています。この変化に着目し、土砂の流下・堆積などに伴う地表面の変化を調べました。
はじめに
2026年8月26日(現地時間)、ネパール北部の国境付近で大規模な洪水・土砂災害が発生しました。ネパールにある国際総合山岳開発センター(ICIMOD)によると、大量の水や土砂、岩塊がボテコシ川・トリシュリ川水系を流下し、周辺地域に被害をもたらしました(ICIMOD*1)。米国地質調査所(USGS)は、国境付近の山岳地で発生した、氷河を含む急激な斜面崩壊が、今回の洪水・土砂災害の起点となった可能性を指摘しています。ただし、USGSの初期解析では、氷河の一部を巻き込んだ斜面崩壊であったのか、氷河自体の崩壊であったのかは明確ではないとされています(USGS*2)。
本記事では、「だいち2号」が災害前の2026年1月30日と災害後の8月28日に取得したデータを用いた解析例を紹介します。モンスーン期のヒマラヤでは、雲に覆われることが多く、光学衛星による地表の観測が難しい場合があります。一方、「だいち2号」に搭載されている合成開口レーダ(SAR)は、夜間や雲に覆われた状況でも地表を観測でき(JAXA*3)、洪水や土砂災害に伴う地表面の変化を把握するうえで有効です。
図1に解析対象範囲、表1に使用した観測データを示します。なお、本解析に用いたデータは無償公開されております(JAXA*4)。

| 観測日時(日本時間) | 衛星 | パス番号 | 観測モード | ビーム番号 | 軌道・観測方向 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2026年1月30日15時20分頃(災害前) | だいち2号 | 49 | Stripmap 10m | F2-5 | 降交・右 |
| 2026年8月28日15時20分頃(災害後) | だいち2号 | 49 | Stripmap 10m | F2-5 | 降交・右 |
JAXAにおける解析例
1) 災害前後のカラー合成画像
図2は、災害前後のHH偏波の後方散乱強度画像を用いたカラー合成画像です。HH偏波は、水平偏波の電波を送信し、地表から戻ってきた電波の水平偏波成分を受信する観測方式です。
カラー合成では、「災害前の画像を赤(R)、災害後の画像を緑(G)と青(B)」に割り当てています。両時期に共通の明るさの表示条件を適用することで、①:赤色で災害後に後方散乱強度が低下した場所、②:水色で災害後に後方散乱強度が増加した場所、③:白・灰色・黒などの無彩色で両時期の後方散乱強度が近い場所を表しています。
2) 河川周辺の土砂の流下・堆積に伴う変化
図3に、河川周辺を拡大した画像を示します。
SARが観測する後方散乱強度は、地表面の凹凸や植生、水分状態などによって変化します。例えば、洪水によって比較的平滑な水面が広がった場合や、流下した土砂が堆積して比較的平滑な面を形成した場合には、衛星に戻る電波が弱くなり、後方散乱強度が低下することがあります。このような場所は、今回のカラー合成画像では赤色に表示されます。
河道の拡幅や土砂の流下・堆積が想定される場所と重なる赤色域は、今回の災害に伴って地表面の状態が変化した可能性を示しています。ただし、今回比較した画像は、2026年1月30日と8月28日に観測されたものであり、約7か月の間隔があります。そのため、季節的な変化や、この期間中に生じた別の出水・土砂移動などによる変化も含まれる可能性があり、赤色の領域がすべて今回の土石流に伴う変化を示すわけではありません。光学衛星画像や現地情報などと併せて、今後さらなる詳細な解析が必要です。
関連リンク
JAXAでは引き続きこの地域の観測を継続する予定です。