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PRISMとAVNIR-2による中国四川省で発生した地震に関する観測結果(6)
宇宙航空研究開発機構(以下, JAXA)では、2008年5月12日(日本時間, 以下同じ)に中国四川省で発生したマグニチュード8.0の大地震による被害状況把握のために、陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)による観測を継続的に実施しています。2008年6月4日、パンクロマティック立体視センサ(PRISM; プリズム)と高性能可視近赤外放射計2型(AVNIR-2; アブニールツー)による現地の同時観測を実施しました。
図1は6月4日午後12時50分頃に取得されたAVNIR-2画像です。これまでで最も少ない雲で観測することができ、これまでに見えなかった現地の様子をとらえることができました。地震後これまでに観測された画像、および地震前の画像との比較を行いました。
図2~図4は2008年6月4日(午後12時50分頃。日本時間、 以下同じ)に取得されたPRISMとAVNIR-2画像を用いて作成したパンシャープン画像(※)による鳥瞰図です。PRISMはOB1と呼ばれる前方視・直下視・後方視それぞれ35km観測幅で撮影され、3方向視全てが重なる範囲については地形(標高)情報(数値地表モデル; DSM)を算出することができます。
PRISMとAVNIR-2によるパンシャープン画像とは、2.5mのものが識別できる能力(地上分解能)を持つPRISM画像と、10mの地上分解能を有するAVNIR-2を用いて、擬似的に2.5m地上分解能のカラー画像にしたものです。
図2は世界遺産に指定されている都江堰付近の鳥瞰図で、手前に見える都江堰上流の紫坪捕ダムは、地震により決壊のおそれがあるため、大量に放水をしていることが報じられています。(南東方向を見たもので手前側約4kmの幅があります)。
図3は、綿竹市から北西に37kmに位置する場所で、斜面のあちらこちらで発生した土砂崩れ(山肌が土色に見えている箇所)を立体的に見ることができ、その被害の大きさを推察することができます。なお、水色で囲ったところは土砂で川が堰き止められている様子がわかります。 (北西方向を見たもので手前側約2.5kmの幅があります)。
図4は綿竹市から北西に33kmに位置する場所で、斜面のあちらこちらで発生した土砂崩れ(山肌が土色に見えている箇所)を立体的に見ることができ、その被害の大きさを推察することができます。水色で囲ったところはこれまで発見された土砂崩れの中では最大規模であることが推察されます。なお、図5の一番北の黄枠で囲んだ土砂崩れの西側と同じ箇所です。 (北東方向を見たもので手前側約5kmの幅があります)。
図5は地震前後で変化が確認できた箇所を拡大したもので、それぞれ災害前後の同じ場所の約15km四方を切り出しました。左が2008年6月4日観測された画像、右が災害前に観測された画像です。これまで雲などの影響で確認できなかった多数の土砂崩れの様子や、崩れた土砂が川をせき止め増水している様子を確認することができました。黄枠で囲んだ画像の北に見える土砂崩れは、面積がおよそ10km² あり、これまで確認できた土砂崩れでは最大規模であると推察されます。
また、図5の上はAVNIR-2のバンド4, 3, 2を用いたフォールスカラー画像で植物が赤色で見え、土砂崩れなどにともなう森林域の変化が見やすくなっています。一方、図5の中はバンド3, 2, 1 を用いたトゥルーカラー画像で人の目で見た色に近い色で見えますが、フォールスカラー画像と比べて地表面の変化が見えにくい場合があります。
また、図5の下は災害前後の画像を重ね合わせその画像を繰り返し切り替えることで、災害前後の変化をより効果的に示しています。図6は地震前後で変化が確認できた箇所を拡大したもので、それぞれ災害前後の同じ場所の約縦12km×横18km四方を切り出しました。左が2008年6月4日観測された画像、中が地震発生後の2008年5月16日に観測された画像、右が災害前に観測された画像です。
これらの範囲を時系列で並べて比較すると、災害前から地震直後に崩れた土砂が川をせき止め増水させ、約3週間経過後、川の水量がさらに増加している様子を確認することができます。関連記事
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