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陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)による中国四川省で発生した地震に関する観測結果について

平成20年5月12日(日本時間、以下同じ)に中国四川省で発生したマグニチュードM8.0の大地震に関する被害状況を把握する為に、宇宙航空研究開発機構(以下JAXA)は、平成20年5月20日(同年5月19日UTC)に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)による現地の緊急観測を実施しました。本観測は、平成20年2月18日(同年2月17日UTC)に取得したデータと同じ軌道からの画像を使用して、差分干渉処理による地殻変動状況の把握と、振幅画像の差分解析による被災地抽出を実施しました。当日、だいちは地方の中心都市(綿陽市、徳陽市)を見ながら南から北に向かって飛行し、平野部から山岳地帯にかけて観測しました(図1)。
図1: 全体図
図1: 全体図
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1. 地殻変動検出

図2左は地震前と地震後を比較した差分干渉処理画像、右は南北700kmにわたる地震後の画像を示したものです。綿陽市、徳陽市は震源からそれぞれ約150km、120km離れた都市です。この画像からは断層(図中黒線)の南側で50-60cm地面が衛星に向かって近付いている(地殻変動)ことがわかります。

(注) 青 → 緑 → 黄 → 赤 → 青(青い領域から青い領域まで、ここまでで1周期=11.8cmの変動)の順番の色の変化は、衛星に近づく変動を表す。変動周期が4周期もしくは5周期確認できるため、11.8cm×4周期(もしくは5周期)で47.2cmから59cmの地殻変動といえる。

断層近傍約200km×75kmを拡大したものが図3で、断層運動による変動の様子をより細かく把握する事が可能です。最も変動が大きいと思われる断層直上、またその近傍では、変動が大きすぎて検出できませんでしたが、その領域の北側には衛星から遠ざかる変動があること、南北に目玉状の変動縞が分布することがわかります(図中白丸)。更にこの変動は断層から約100km北まで続きます。今回の地震でおおきな地殻変動が生じたことが衛星による観測から確認できました。

JAXAでは今後も「だいち」による被災地の観測を継続して実施していく予定です。
図1: 左:PALSAR差分干渉画像 右:地震後南北700km画像
図2: 左:PALSAR差分干渉画像 右:地震後南北700km画像
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図3: 南北200km×東西75km 干渉画像(拡大図) 図中黒線は断層
図3: 南北200km×東西75km 干渉画像(拡大図) 図中黒線は断層
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2. 災害検出

干渉処理で使用した災害前後の振幅画像を使用して変化の抽出を行いました。図4は平成20年5月20日観測のデータを赤、緑、平成20年2月18日観測データを青に割り当てた3色合成画像です(画像中の日付は世界時で表示)。図中赤枠で囲った領域で山体崩壊や大規模な土砂崩れが原因と思われる変化が抽出されました。SAR画像では土砂災害領域は明るく映る(強い後方散乱)傾向が多く見られ、合成画像では黄色に表示されます。図3の差分干渉図に赤枠の位置を重ねると、最も変動が大きいと思われる領域(推定される断層付近)に沿って分布しているのが確かめられます(図5)。
図5: 図3の差分干渉図に図4の赤枠変化抽出域の位置を重ねて表示
図5: 図3の差分干渉図に図4の赤枠変化抽出域の位置を重ねて表示
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図4の1、6、9、10で示した領域では、土砂等により川が堰き止められてできた湖が確認されました。一般的に、冠水した領域は暗く見える特徴があり、地震後に広がった湖は合成画像では青く表示されます。その中で最も大きい青枠10では赤枠4の土砂崩れにより堰き止められた湖がおおよそ上流10km以上に渡って確認できます。これは、平成20年5月16日に「だいち」のAVNIR-2により観測されたものと同じ湖です(関連記事: AVNIR-2による中国四川省で発生した地震に関する観測結果(2))。

青枠11はBeichuan(北川県)付近の拡大画像です。地震前の画像における平野部の強い散乱(明るい輝点)が地震後には減少しており(暗くなる)建物の崩壊を表していると考えられます。6、10の堰止湖の下流部に相当する青枠12では、地震前の画像で確認できたダム湖の水が地震後には広範囲に渡って減少しており(合成画像では黄色に表示)、ダム下流の平野部に放水されている様子が捉えられています。

(注) なお、図2、図4中の画像取得日はUTCによる日時を記載。

枠の拡大画像

図4: 災害前後の画像の3色合成画像。枠は大きな変化が抽出された領域
図4: 災害前後の画像の3色合成画像。枠は大きな変化が抽出された領域
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