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日本域高解像度土地利用土地被覆図【2022年】
(バージョン23.12)
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1. はじめに
宇宙航空研究開発機構 (JAXA) 地球観測研究センター (EORC) は, 人工衛星で観測されたデータを活用して, 地域や国レベルを対象とした高解像度の土地被覆分類図を作成しています。これらは生態系評価 (動植物の生育・生息域, 各種生態系サービス) , 資源管理 (農林水産業, 景観等) , 災害対策 (洪水・土砂災害等) 等, 地域・国土の保全の基盤情報としてご活用頂くことを目的としています。
本プロダクトは2022年の日本全域の状況を反映した日本域高解像度土地利用土地被覆図バージョン23.12 (以下v23.12) です。日本のALOS-2衛星 (合成開口レーダPALSAR-2) をはじめ, 欧州のSentinel-2衛星および米国のLandsat-8衛星 (いずれも光学センサ) のデータを使用しています。2021年11月にリリースしたv21.11には無かった「湿地」「農業用温室」という2つのカテゴリを本プロダクトで新設しました。また, v21.11ではマルチスペクトル・時系列特徴空間でのパターン認識に特化した分類アルゴリズム (SACLASS2) を使いましたが, 本プロダクトではそれに改良を施したもの (SACLASS2.5) を使用しました。分類手法の更新や衛星データ・教師データの品質向上により, v23.12は95.53%の全体精度を達成しました。
今後は現在運用中の地球環境変動観測衛星 (GCOM-C) や打上予定の先進レーダ衛星 (ALOS-4) の活用も視野に入れ, さらなる改善に取り組んでいこうと考えております。
v23.12では, 以前のバージョンと比べて, 主に以下の点で更新されています。
- 入力データの改善: Sentinel-2について
- L1CからL2A (HARMONIZED) への変更
- 雲抜きアルゴリズムの更新: QA60→Cloud Probability
- 季節別中央値画像を4時期から6時期 (2か月毎) の使用に変更
- NDSI (正規化積雪指標) の計算と特徴量への追加
- 入力データの改善: ALOS-2/PALSAR-2について
- HBQ (6 m; HH/HV/VH/VV) から山口4成分分解を計算し, 特徴量に追加
- UBS (3 m; HH) からテクスチャ情報を計算し, 特徴量に追加
- 入力データの新規追加: 筆ポリゴン, OSM (Open Street Map)
- 教師点・検証点データを全数目視検査・選別
- 分類カテゴリの追加: 湿地・農業用温室
- 分類アルゴリズムの更新 (SACLASS2.5)
- アクティブラーニングによる教師点の追加
- アンサンブル学習によるノイズ除去
この結果, 全体精度は前バージョン (v21.11) の88.85%に対し, 本バージョン (v23.12) は95.53%に上昇しました。v21.11に比べてノイズが大幅に減少し, 河川敷や海岸線などの分類精度やディティールが良くなりました。追加した湿地や農業用温室のカテゴリについては良く分類できていました。
2. 使用したデータ
- Sentinel-2 Level-2A (L2A) Google Earth Engine APIより取得。
- ALOS-2/PALSAR-2 (HBQ, UBS)
- 教師点・検証点 (v21.11で使用した点を再選別+湿地・農業用温室カテゴリ用に新規追加, アクティブラーニング追加分)
- ALOS PRISM Digital Surface Model (AW3D)
- DSMから求めた傾斜のラスターマップ
- 農林水産省 筆ポリゴン
- オープンストリートマップによる道路網ベクターデータ (道路からの距離のラスターマップの作成に使用) © OpenStreetMap contributors
3. 分類方法
v23.12で採用された分類方法を以下に示します。
3.1 前処理
- Sentinel-2 L2Aについて 雲マスク処理, 2ヶ月中央値コンポジット
- 特徴空間の構築:
Sentinel-2 L2A (バンドB2, B3, B4, B5, B6, B7, B8, B8a, B11, B12) , NDVI, GRVI, NDWI1, NDWI2, NDSI, GSIの時系列データ
PALSAR-2 HBQ, UBS, それらから計算される各種物理パラメータ
補助データ (AW3D DSM, Slope, 筆ポリゴン, OSM, 緯度経度情報) の非時系列データ - 平均と標準偏差を用いた標準化を特徴量毎に適用
3.2 分類
- SACLASS2.5*による上記入力データを使用した分類。SACLASS2では時系列データと非時系列データを同一の特徴空間にマッピングしてCNNによる分類を行いましたが, SACLASS2.5では時系列データはCNNへ, 非時系列データはNNへ入力を切り分けることにしました。入力データを切り分けることで特徴量の次元削減に繋がり, 分類精度の向上や計算コストの低減を達成しました。
*マルチスペクトル・時系列特徴空間でのパターン認識に特化した畳み込みニューラルネットワーク (CNN) およびニューラルネットワーク (NN) アルゴリズム。
3.3 後処理
- アンサンブル学習の適用
- ガウシアンフィルタの適用
- 目視検品による異常値修正 (精度評価には含まない)
4. データ形式
対象期間 | 2022年 |
---|---|
座標系 | 等緯度経度座標系 (WGS84) |
格納単位 | 緯度経度1度単位のグリッドタイル, 12,000ピクセル×12,000ライン |
メッシュサイズ | (1/12,000) 度 × (1/12,000) 度 (およそ10 m x 10 mに相当) |
ファイル命名規約 | LC_N45E142.tif (上記の場合北緯45から46度, 東経142から143度の範囲を指します。) |
格納形式 | GeoTIFF形式 |
ファイル数 | 131 (v21.11から5タイル追加) |
各画素のディジタル値は分類カテゴリのID番号であり, 下記の通りです:
- #1: 水域 (water bodies)
- #2: 都市 (built-up)
- #3: 水田 (paddy field)
- #4: 畑地 (cropland)
- #5: 草地 (grassland)
- #6: 落葉広葉樹 (DBF)
- #7: 落葉針葉樹 (DNF)
- #8: 常緑広葉樹 (EBF)
- #9: 常緑針葉樹 (ENF)
- #10: 裸地 (bare)
- #11: 竹林 (bamboo forest)
- #12: ソーラーパネル (solar panel)
- #13: 湿地 (wetland)
- #14: 農業用温室 (greenhouse)
(裸地に干潟や浅瀬が含まれるようになりました。)
5. 精度検証
表1 コンフュージョンマトリクス (v23.12)
参考情報として, 前バージョン (v21.11) の精度検証結果を掲載します (表2) 。
表2 コンフュージョンマトリクス (v21.11)
図1にv23.12の全域図, 図2~5に過去の結果 (v21.11) との比較例を示します。
v21.11では川沿いに本来は無いはずの畑・水田・人工構造物が見られましたが (誤分類) , v23.12ではそれらが無くなりました。
湿地はv21.11では草地とされていましたが, v23.12では新設カテゴリとして適切に分類されました。
農業用温室はv21.11では人工構造物や畑とされていましたが, v23.12では新設カテゴリとして適切に分類されました。
6. 参考文献
- 平山颯太, 田殿武雄, 大木真人, 水上陽誠, 奈佐原 (西田) 顕郎, 今村功一, 平出尚義, 大串文美, 道津正徳, 山之口勤 (2022) : JAXA高解像度土地利用土地被覆図日本域21.11版 (HRLULC-Japan v21.11) の作成. 日本リモートセンシング学会誌, 42 (3) , 199-216
- 平山颯太, 田殿武雄, 水上陽誠, 大木真人, 奈佐原 (西田) 顕郎, 伊藤駿, 平出尚義, 今村功一, 佐竹崚, 大串文美 (2023) : 2022年度版日本域高解像度土地利用土地被覆図の作成に関する事前検討, 日本リモートセンシング学会第75回学術講演会論文集, 25-28
- 平出尚義, 今村功一, 田殿武雄, 平山颯太, 奈佐原 (西田) 顕郎, 道津正徳, 佐竹崚, 大串文美 (2023) : 光学・SAR衛星データに対する高精度な教師・検証データを低コストで取得するためのRIL及び判読システムの開発, 日本リモートセンシング学会第75回学術講演会論文集, 29-30
- 伊藤駿, 平山颯太, 今村功一, 平出尚義, 大串文美, 佐竹崚, 奈佐原 (西田) 顕郎: 農業・生態系保全のための関東域高解像度土地利用土地被覆図の開発, 日本写真測量学会令和5年度秋季学術講演会予稿集, pp.37-38, 2023 (予稿, 発表資料)
- 泉澤遥, 平山颯太, 水上陽誠, 奈佐原 (西田) 顕郎 (2023) 統合的ローカライゼーションによる沖縄島域高解像度土地利用土地被覆図の作成, 日本リモートセンシング学会誌, 43 (2) , pp. 73-85.