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全球高精度デジタル3D地図 (ALOS World 3D)

宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)によって撮影した約300万枚の衛星画像を用いて、全球陸域を対象とした高精度デジタル3D地図(※)を整備します。今回整備するデジタル3D地図は、5m水平解像度と5mの高さ精度で世界中の陸地の起伏を表現できるため、地図の整備や自然災害の被害予測、水資源の調査など、様々な用途に活用することが出来るのが特長です。

図1: デジタル3D地図のイメージ例:エベレスト
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JAXAではこれまで技術実証を目的として、月100枚程度のデジタル3D地図を作成し、精度検証や共同研究等に活用してきました。今回、全自動・大量処理に関する研究開発を実施し、月15万枚程度を作成できる見通しが立ちました。この技術を活用して2014年3月からデジタル3D地図の整備を開始し、2016年3月までに全世界をカバーする地図が完成する予定です。なお、本デジタル3D地図は株式会社NTTデータおよび一般財団法人リモート・センシング技術センター (RESTEC) を通して有償で一般に提供されます。

また、デジタル3D地図データを広くご利用して頂くために、JAXAは30m相当解像度の全球数値標高データを整備し、無償で公開しています。
これにより、日本発のデータが全世界のデジタル3D地図のベースマップとなるだけでなく、産業振興や衛星データの利用拡大、科学研究分野、地球観測に関する政府間会合 (GEO) などにも貢献することを期待しています。

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※補足説明

デジタル3D地図について

1. 背景

基盤地図情報の整備や津波、洪水等の防災用途のために世界中で地理空間情報の需要が高まっています。地理空間情報整備においてデジタル3D地図は基盤となるコンテンツですが、この整備にはこれまで航空機や人手による調査が必要であり、コストと期間の制約から整備されるエリアに限界がありました。
陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)は、2006年1月から2011年4月まで全世界の陸地を中心に高精度な観測を実施しました。「だいち」搭載のパンクロマチック立体視センサ(PRISM)*1はデジタル3Dを作成できる観測データを取得していましたが、作成処理の自動化に関わる課題や計算機能力の制約から広域整備が進んでいませんでした。

*1) パンクロマチック立体視センサ(PRISM; プリズム)
「だいち」(ALOS)搭載の光学センサで、可視域から近赤外域の電磁波を1つのバンド(白黒)で観測し、2.5mの解像度を持ちます。また衛星進行方向に対して前方・直下・後方の3方向の画像をほぼ同時に取得することができ、地形情報を高精度に抽出することができます。

2. 特長

<デジタル3D地図とは>
地表の3次元座標値 (水平位置と高さ) が記録されたデータのことで、高さを示す数値標高モデル (Digital Elevation Model, DEMもしくはDigital Surface Model, DSM) と、水平位置を示す正射投影 (オルソ補正) 画像の2種類のデータで構成されます。正射投影 (オルソ補正) 画像とは、上空から撮影された画像の地形にともなう歪みを除去し、正しい位置情報が付与された画像のことです。

<世界最高精度のデジタル3D地図>
今回整備するデジタル3D地図の数値標高モデルは、PRISMが5年強の間に取得した画像の中から雲が少ない約300万枚を活用して、世界で初めて5mの水平解像度 (正射投影画像は2.5m) という細かさと、5mの高さ精度 (標準偏差) で世界中の陸地の起伏を表現します。また、JAXAが公開予定の低解像度版数値標高モデルは30mの水平解像度、5mの高さ精度 (標準偏差) を予定しています。
図2は今回整備するデジタル3D地図の一例として、ブータン王国首都のティンプー市内の5m解像度数値標高モデル (左) です。また参考情報として、図2中央は30m解像度、右は90m解像度を模擬した数値標高モデルです。5m解像度では精細な地形の状況や建物の形などが確認できることが分かります。

図2: 整備するデジタル3D地図の5m解像度の数値標高モデルの例 (左)。
参考として、5m解像度から30m解像度 (中央)、90m解像度 (右) を模擬した数値標高モデルの比較

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