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陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)による東日本大震災の緊急観測結果(31)

2011年3月11日14時46分頃(日本時間、以下同じ)、東北地方の太平洋沖(北緯38.32°、東経142.37°、深さ32km)を震源とする、国内観測史上最大となるマグニチュード9.0の地震(東日本大震災)が発生しました(地震の規模・位置については米国地質調査所(USGS)による発表を参照)。この地震の影響で発生した津波は、東北から関東にかけての沿岸地域に甚大な被害を与えました。また、その後も海域・内陸問わず地震が頻発し、各地で大きな揺れと被害が報告されています。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2011年3月11日の大地震以降、陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)による現地観測を継続して実施してきました。本観測では、2011年4月7日に行われたPALSAR観測で取得された画像を2010年11月20日に同じ軌道から取得した画像と比較し、東日本大震災に伴った地殻変動の検出を試みました。

図1:2011年4月7日に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)により観測された全体図(青枠は図2で示す今回PALSARで観測した領域を表す。赤い星印は東日本大震災の震央位置を示す。数値標高データはSRTM3を使用)

図1: 全体図(数値標高データはSRTM3を使用)
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青枠は図2で示す今回PALSARで観測した領域を表します。赤い星印は東日本大震災の震央位置を示しています。

図2左:東日本大震災に伴う地殻変動を検出するため、陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)により観測された地震前(2010年11月20日)と地震後(2011年4月7日)に取得した画像を使用して作成した差分干渉処理画像、白枠内は2011年3月19日に発生した茨城県北部地震、赤枠内は2011年3月23日に発生した福島県浜通り地震による地殻変動を表していると思われます。
図2右:陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)により地震後(2011年4月7日)に観測された画像

図2: (左)PALSAR差分干渉画像(地殻変動図)。白枠内は2011年3月19日に発生した茨城県北部地震、赤枠内は2011年3月23日に発生した福島県浜通り地震による地殻変動を表していると思われます。
(右)地震後(2011年4月7日)に観測されたPALSAR画像。

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東日本大震災に伴う地殻変動を検出するため、地震前後に取得したPALSARデータの差分干渉解析(DInSAR解析)を行いました。図2左は地震前(2010年11月20日)と地震後(2011年4月7日)のPALSARデータから得られた差分干渉画像(地殻変動図)、図2右は地震後に観測されたPALSAR画像です。図2左の差分干渉画像中、広範囲に渡り多くの干渉縞(虹色の縞々)が確認できます。少なくとも、茨城県水戸市で60cm以上,岩手県盛岡市でも80cm以上の衛星に近づく向きの地殻変動(東向きの水平変動を含む地殻変動)があったことを示しており、今回の地震が非常に大きなものであったことが分かります。また、図2左中白枠・赤枠内に、周囲の干渉縞のパターンとは明らかに異なる局所的な干渉縞が確認できます。これは、2011年3月19日に発生したM6.1茨城県北部地震による地殻変動(白枠内)と同年3月23日に発生したM6.0及びM5.8福島県浜通り地震による地殻変動(赤枠内)を表していると思われます。

JAXAでは今後も「だいち」による当該地域への観測を継続していく予定です。

(注1) パルサー(PALSAR):
フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ。衛星から発射した電波の反射を受信するマイクロ波レーダで、夜や曇天時も撮像が可能です。

(注2) 差分干渉処理:
PALSARは『2つのデータ取得時(例えば地震の前と後)における衛星−地面間の距離』に変化があった場合、それを高い精度で検出することが可能です。地震前後のデータを比較すると、地震によって発生した地面の隆起や沈降などの地殻変動は、衛星−地面間の距離の差となり、画像では干渉縞として表わされます。本例では、青→緑→黄→赤→青の色の変化は地面が衛星に近づくことを、逆の色の変化は地面が衛星から遠ざかることを表します。(今回の観測では画像の東側から西側に向けて観測しているので、地面が衛星に近づく場合は東向きの水平変動もしくは隆起を、地面が衛星から遠ざかる場合は西向きの水平変動もしくは沈降、を意味します)。なお、色の一周期は11.8cm分の距離変化(地殻変動;変動量は画像内での相対的な値)を表します。

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