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「テラサー・エックス」(TerraSAR-X)による東日本大震災の観測結果

2011年3月11日14時46分頃、東北地方の太平洋沖で国内観測史上最大となるマグニチュード9.0と推定される地震が起こり、現在も余震が相次いで起こっています。この地震の影響で発生した津波は、震源に近い東北地方の太平洋側では最大で10メートル以上の高さに達したと見られ、沿岸地域に甚大な被害を与えています。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、ドイツ航空宇宙センター(DLR)の協力により提供されたTerraSAR-X(テラサー・エックス)衛星の観測データの解析を実施しました。TerraSAR-Xは、DLR(ドイツ航空宇宙センター)およびEADS Astrium社が共同で開発・運用している地球観測衛星で、Xバンド合成開口レーダを搭載しています。このレーダは、陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR)と原理は同様ですが、PALSARとは異なる波長のマイクロ波を用いて観測を行っています。
DLRは、JAXAとの間で災害時の衛星データの交換に係る協力を進めている他、国際災害チャータの加盟メンバーであることから、今回の協力を得ました。ドイツ及びDLRの関係者の皆様に感謝します。

図1:ドイツ航空宇宙センター(DLR)TerraSAR-X(テラサー・エックス)衛星により観測された仙台付近の災害前後カラー合成画像(R: 2010年10月21日観測 GB: 2011年3月13日観測)

図1: TerraSAR-Xの仙台付近の災害前後カラー合成画像
(R: 2010年10月21日観測 GB: 2011年3月13日観測)

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図1は、TerraSAR-Xの仙台付近の画像で、災害前の2010年10月21日(日本時間、以下同じ)観測の画像を赤に、災害後の2011年3月13日(5時43分頃)の画像を緑と青に割り当てたカラー合成画像です。この図で赤色の個所は、災害後に後方散乱(画像の明るさに相当)が小さくなったことを示し、津波により冠水しているなどの状況が考えられます。

図2: TerraSAR-Xの仙台付近の変化抽出図

図2: TerraSAR-Xの仙台付近の変化抽出図
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図2は、同じTerraSAR-Xの災害前後のデータを使用し、変化個所を抽出したものです。背景には災害後の画像を白黒画像で表示しています。赤く表示された領域が災害後に後方散乱(画像の明るさに相当)が大きく変化した個所で、津波による浸水や、建物倒壊などの被害を表していると考えられますが、散乱係数の変化を機械的に抽出したものであり、必ずしも実際の被害の状況と一致しない可能性もあります。また、海上に見える変化個所は、津波により流された漂流物や、養殖いかだの流失等を表していると考えられます。

図3左:2011年3月13日に観測されたTerraSAR-Xの岩手県南部の沿岸部周辺の災害後画像
図3右:TerraSAR-X岩手県南部の災害後画像を目視により判読し、被災個所を赤色で、津波によって流され漂流していると思われるものを水色の円で示しました。

図3: TerraSAR-Xの岩手県南部の災害後画像(2011年3月13日観測)
左図: TerraSAR-X原画像、右図: TerraSAR-X画像を元にした被災個所判読結果

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図3左は、同じ2011年3月13日(5時43分頃)に観測されたTerraSAR-Xの岩手県南部の沿岸部周辺の画像です。図3右は、この画像を目視により判読し、被災個所(広域にわたり浸水・建物倒壊等の被害が生じていると想定される区域)を赤色で示しました。また、津波によって流され漂流していると思われるものを水色の円で示しました。沿岸部の津波による浸水被害が広範囲にわたっており、また漂流物が沖合まで流されていることが分かります。

図4左:2011年3月14日(17時37分頃)に観測されたTerraSAR-Xの岩手県南部から宮城県気仙沼市の沿岸部周辺の災害後画像
図4右:TerraSAR-X岩手県南部から宮城県気仙沼市の沿岸部周辺の災害後画像を目視により判読し、被災個所を赤色で、津波によって流され漂流していると思われるものを水色の円で示しました。

図4: TerraSAR-Xの岩手県南部の災害後画像(2011年3月14日観測)
左図: TerraSAR-X原画像、右図: TerraSAR-X画像を元にした被災個所判読結果

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図4左は、約1日半後の2011年3月14日(17時37分頃)に観測されたTerraSAR-X画像で、図3よりやや南側の、岩手県南部から宮城県気仙沼市の沿岸部周辺をとらえたものです。図4右はその判読結果です。図3と比較すると、大船渡市の沖合の漂流物が、さらに遠方へ流されていることが分かります。

図5: TerraSAR-Xの茨城県東部の災害後画像(2011年3月13日観測)

図5: TerraSAR-Xの茨城県東部の災害後画像 (2011年3月13日観測)
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図5は、茨城県行方市と鉾田市を結ぶ、鹿行(ろっこう)大橋の周辺のTerraSAR-X画像です(2011年3月13日5時43分頃)。画像の左上部分に示した拡大図では、鹿行大橋の一部が地震によって崩落したため、画像上では線が途切れているように読みとれます。その北側に架かる大型の新鹿行大橋も不完全な形状で見えていますが、これは橋が建設中であるためです。

取得された画像は、内閣府を始めとする防災関係省庁並びに地方自治体等に提供しています。
なお、JAXAでは今後も当該地域の観測、データ解析を継続する予定です。

関連情報:
2011/3/14: 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)による東日本大震災の緊急観測結果(3)
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