陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)による岩手・宮城内陸地震に関する観測結果について

平成20年6月14日(日本時間、以下同じ)に岩手県南西部で発生したマグニチュード7.2(気象庁発表)の地震(岩手・宮城内陸地震)による被害状況を把握する為に、宇宙航空研究開発機構(以下JAXA)は、平成20年7月11日に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)による現地の観測を実施しました。本観測では、平成18年7月8日に取得した同じ軌道からの画像を使用し、差分干渉処理によって地殻変動状況を把握いたしました。「だいち」は北から南へ飛行しながら、震央を含む領域を観測しました 。(図2)

図1左:地震前(平成18年7月8日)と地震後(平成20年7月11日)の画像を比較したPALSAR差分干渉画像
図1右:南北約250kmに渡る地震後(平成20年7月11日)の陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のPALSARによる画像

図1左: PALSAR差分干渉画像 右: 地震後PALSAR強度画像
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図1左は地震前と地震後の画像を比較した差分干渉画像、図1右は南北約250kmに渡る地震後のPALSAR画像を示したものです。図1左の震央の周辺では、狭い範囲での変動(変動の勾配)が大きすぎて、差分干渉処理では変動量の検出が困難であると思われます(虹色が不明瞭で、これを干渉度が低い(=検出が困難)と言います)。しかし、その領域の両側では明瞭な干渉縞が確認でき、少なくとも、震央の西側では8周期=94.4cmの衛星に近づく向きの地殻変動が、東側では4周期=47.2cmの衛星から遠ざかる向きの地殻変動があったことがわかります。これは震央西側の主として東方向への水平変動と震央東側の主として西方向への水平変動を示していると考えられます。今回の「だいち」による観測から、岩手・宮城内陸地震に伴って広い範囲に渡る大きな地殻変動が生じたことが確認できました。

JAXAでは今後も「だいち」による岩手・宮城内陸地震被災地の観測を継続していく予定です。

(注1) 震央の西側では緑→黄→赤→紫→青→緑の色の変化(緑の領域から緑の領域まで、ここまでで1周期=11.8cm。この順番の色の変化は、衛星に近づく変動を表わします)が8周期確認されるため11.8cm×8=94.4cmの変動と推定されます。反対に震央の東側では緑→青→紫→赤→黄→緑の色の変化が4周期確認されるため11.8cm×4=47.2cmの変動と推定されます。

図2:観測地域全体図

図2: 全体図
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