トリム衛星とグーグルアースで何ができるの?
そのひとつが台風の観測。 TVの天気予報では伝えられない世界中の台風も、トリム衛星とグーグルアースを駆使すると、発生から消滅までの成長過程を追うことができます。 誰よりも早く台風の発生を見つけ、台風ウォッチャーになってみませんか?
台風はどこで生まれるの? そんな質問をすると「雲が沸き立つところ」と声があがるかもしれません。
そうです。 台風の大部分は雲と雨と風です。 ではどこで雲と雨が多く、風が強いのでしょうか?
そんなときにはグーグルアースの天気レイヤが便利。 世界中のどこで雲が沸き立ち、集まってきているのか確認できます。
え、冬には台風がないのでつまらない? そんなことはありません。北半球が冬でも南半球は夏です。 さあ雲レイヤにチェックをいれて台風の生まれそうな場所を探してみましょう!
最初に表示した雲レイヤは残念ながら動きません。
止まっていると、とくに風の動きなどがよくわかりません。
そこで今度はグーグルアースの雲レイヤからInformationレイヤに切り替えてみましょう。
アニメーションのリンクをクリックすると、
場所パネルに Cloud Animation レイヤが登場。
右上のタイムスケールで再生ボタンを押して、世界中の雲の動きをしばらく観察してみましょう。
風の強さや渦の巻き方など、たくさんの特徴を捉えることができます。
さあ、これから台風になりそうな雲の動きが見えてきましたか?
だんだんと、世界の雲の状況はわかってきました。
今度は中身です。 雲の中でどんな雨が降っているのか、これはトリム衛星から知ることができます。
世界の雨分布速報サイトは、トリム衛星も含めた降雨観測情報の提供サイト。
現在の雨の分布と重ねて雲の中身を覗いてみましょう。
色がオレンジや赤いところが雨の強いところ。
雲のレイヤを少し半透明にすると、雨と雲の分布が比較しやすいですよ。
雲が多くて、雨が降っていても、実は台風が発達するには、暖かい海の上という条件が必要。
その情報もトリム衛星はちゃんと提供しています。
下のボタンをクリックしてTRMM海水面温度(SST)をダウンロードし、グーグルアースに表示してみましょう。 黄色からオレンジに塗りつぶされたところ(およそ26℃以上)の暖かい海ですと台風が発生する可能性が高いのです。
トリム衛星とグーグルアースを使って、世界中の雲と、雨と、海の温度の様子をながめることができましたね。
それぞれの画像をグーグルアースに表示すると、最初はなんだかわからない状態ですが、しばらく眺めているうちに緯度ごとの大きな風の動き、渦の巻き方、雨が集中している場所の特徴、、、だんだんとその特徴が目に入ってきます。
見ている間に、ここに台風が発生してそうだということが想像できます。
そうなったらしめたもの。
確認するために、実際に台風・ハリケーンを監視している「ハリケーン・ライブポジション」で、今発生している台風やハリケーンの情報を見てみましょう。
どうですか? あなたの想像は当たっていましたか?
グーグルアースを使うと、世界中の台風がどこに位置するのか簡単に把握することができます。
夏も冬も、世界のどこかで台風って発生しているものだということがよくわかりますね。
もしかすると、あなたが予測した台風らしきものは、まだ「ハリケーン・ライブポジション」に登録されていないかもしれません。
また、逆に登録されていないエリアに注目して、探すのもひとつの方法です。
今まで得た、雲と、風と、雨と、海水面の情報から、グーグルアースの上でぐるぐると動かし、これはと思う台風らしき現象を誰よりも早く先取りしてみましょう。 みつけたときには、ぜひとも自分で名前をつけることをおすすめします。
せっかく自分で見つけても、しばらくするとすぐに忘れてしまいます。
そのために、グーグルアースの上でメモを残しましょう。
例えば、このあたりから発生したとか、ここで渦を巻き始めているとか、
風はこちら側からこのように吹いているなど、気になり始めると、いろいろと特徴がでてきます。
日記風に、今日はこんな動きをしていたとか、ここまで大きくなったとか記録するのも楽しいですね。
自分で見つけた台風も、大きくなるとすぐに各機関がチェックを始めます。例えばJAXA/EORC台風データベースでは
TRMM を含めた地球観測衛星が最新の台風画像を公開しています。
自分でみつけた台風を追跡しながら、
グーグルアースにメモしていくと台風の観察日記になります。
日記風に、今日はこんな動きをしていたとか、
ここまで大きくなったとか記録するのも楽しいですね。
日本には「デジタル台風」というサイトがあり、日本周辺の台風情報を詳細にアーカイブしています。この資料は非常に便利。
こちらのデータもグーグルアースに取り込んで、自分の予想結果と比較してみましょう。現在発生中の台風情報の他に、一年分の台風の軌跡を表示したりと、台風に関する過去のアーカイブがいろいろなKMLデータとしてが公開されています。
ハリケーンライブポジションの予測値と比較したり、
台風の強さを示すカテゴリで比べてみると実感しやすいですね。
台風が日本に近づいてきたら、気象庁の降雨レーダがその詳細を捕らえてくれます。ここまでくると、
トリム衛星よりも解像度が細かくなりますし、トリム衛星の北限もありますので、レーダ・降水ナウキャストにバトンタッチです。
グーグルアースにいくつものレーダー画像を張り付けると、
日本全体の詳細な降雨分布がよくわかりますね。
台風とハリケーンの強さは、大きく「10分間の平均風速」を用いる世界(日本を含む)の基準と「1分間の平均風速」を用いる米国の基準の2種類があります。「デジタル台風」などは前者、「ハリケーン・ライブポジション」では後者を採用されておりますので、厳密な比較はできませんが、1分間平均風速は10分間平均風速よりも1.2~1.3倍ほど大きく出る傾向にあるため、おおまかにこのような比較が可能です。
あくまで大まか比較ということですが、双方のデータを重ねて表示するときには参考にしてください。
何度かご紹介しましたが、グーグルアースに書き込んだ情報はKMLとして保存できます。操作は左側の場所パネルから。でも、なんでもかんでもすべての情報をグーグルアースに残しておくと、グーグルアースの動作はどんどん重くなりますので、必要なときにはKMLを読み出し、不要なときには場所パネルから削除しておくと快適な作業ができます。
追加ボタンでいろいろ書きこんだら
右クリックメニューから [名前を付けて保存...] でメモした情報はなくさないよう保存しておきましょう。
せっかく記録した台風の記録日記。日に日に大きく成長した記録を比較したり、
実際のスケールを実感しやすい日本付近にまで移動して、代表的な台風と比較したり
台風日記に記録した情報を並び替えてみると意外なことがわかってきます。
例えば、
2005年に猛威をふるったハリケーンカトリーナが日本にやってきていたら、、
と衛星画像を移動することもグーグルアースは簡単にできます。
カトリーナを日本にそのまま移動した場合
もちろん、トリム衛星の情報を比べることで、内部の雨の状況を比較することだってできます。
自分でメモしたKMLデータをフォルダで整理して一つのKMLにまとめましょう。
今まで作成したメモや経路情報などをこのように整理して、ひとつのKMLとして保存すれば後で見返すときも便利ですね。
これで、
台風の生まれる場所から、その予想経路、途中経過、そして上陸と一連の流れと、
それに対応する便利なデータセットについてご紹介しました。
トリム衛星は、台風を観測するいくつもの眼をもち、様々な角度でその情報を伝えてくれます。
この中で登場したグーグルアースのテクニックを駆使して、
トリム衛星の情報をもっと活かすあなたなりの活用方法をみつけてみてはいかがでしょうか?
EORC台風データベースのサイトは、トリム衛星も含めた、地球観測衛星が捕らえた台風の情報が1997年から現在まで保存された、まさに台風情報の図書館。
希望の条件で絞り込むことができ、。下の図は台風データベースサイトにて2005年にトリム衛星が観測したデータに絞り込む設定です。
トリム衛星の場合、記録されている情報としては、降水量と雲画像、それに3DのCG映像まで確認できます。台風日記をつけているあなたにとっては、あのときの台風はこんな強さだったのかなどと振り返ることもできます。
データベースに登録されている三次元CG画像のアーカイブはこのような映像。
台風を一回りして内部をスキャンするのがわかりやすいですね。
デジタル台風のサイトには、1951年から現在までの台風の軌跡データがグーグルアース用データとして公開されています。この50年間で台風の軌跡がどう変化したのか? 最近5年間はどうだったのか? など様々な視点ごとにデータをダウンロードできますので、自分が記録していたマイ台風が、他の台風と比べて特殊なルートだったのか? 寿命は長かったのか? 規模は大きかったのかなどグーグルアース上で比較できます。
下の図は、過去50年間のうち 2006年(黄)、2005年(青)、2004年(赤)の経路のみを表示したものです。
この3年間では29個の台風が発生した2004年の赤いラインがよく目立ちます。また全体として大きく「くの字」にカーブするコースが、典型的な日本周辺の台風のコースなのですが、それ以外のコースもなかなか興味深いものがあります。
発生から一週間かけて反時計回りに一周した2002年の台風11号。屋久島・種子島上空を通過しながら、東シナ海へと移動していきました。
Typhoon FUNG-WONG(14W)
ぐるっと回っても、方向転換するわけではなく、再び同じルートに戻ってきた台風。このときは時計回りに回転しています。
Super Typhoon PARMA(21W)
台風の強さとしてはカテゴリ2が最大と、それほど強くはないけれど、降水量が多く、移動速度が遅かったために大きな被害をだした2007年の台風フィートウ。その軌跡を見てみるときれいなS字カーブを描いて日本列島を縦断したことがわかります。
Typhoon FITOW(10W)