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地球が見える 2018年

シリーズ「衛星データと数値モデルの融合」(第2回)
衛星海面水温を用いた「海中天気予報」システムの運用を開始しました

JAXAでは、衛星によって地球の観測を行うことで、さまざまな有用なデータを提供しています。衛星データと数値モデルをあわせて利用(融合)することで、欠損がなく連続的なデータを作成し、さらに衛星では得られない物理量についても提供することができるようになります。これは最近の世界的な潮流でもあります。衛星データとモデルの融合の代表的な例は、気象機関が実施している数値気象予報への衛星データの同化による数値予報精度の向上ですが、近年、そのほかの分野でも数値モデルでの衛星データの利用が進んでいます。
今回は、衛星データと数値モデルを融合する最新の研究開発を紹介するシリーズ「衛星データと数値モデルの融合」の第2回として、衛星データと海洋モデルの融合による「海中天気予報」の開始について紹介します。

海中天気予報は、衛星が観測した海面水温データを高解像度の領域海洋モデルに同化して作成されたプロダクトです。このプロダクトでは、衛星では取得できない海洋内部の情報を提供することができるほか、将来予測も含まれます。また、衛星が観測した海面水温データを同化することにより、海洋モデルは、より現実的な海の状態を再現することができます。

「海中天気予報」システムの概要と目的

衛星による海洋観測で得られる情報は海面の変化のみに限られており、また、海流などの情報を直接的に取得することもできません。そこで、JAXAは、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と共同で、JAXAが提供する衛星海面水温プロダクトを高時空間解像度(約3km、1時間毎)の海洋モデルでのアウトプットと合成させるデータ同化システムを用いて、日本付近の「海中天気予報」を行うシステムを開発しました。このシステムでは、土曜日を除く週6日の更新頻度で約2週間先までの予報を行って行きます。海中天気予報によって得られたデータは、本日リリースしたJAXAが提供する可視化サイトで公開されます。
JAMSTECが運用してきた日本域の海洋データ同化プロダクトは、従来、週2回更新される空間解像度約10kmの日毎のプロダクトでしたが、海中天気予報では、日本沿岸域の小さな変化をより良く再現するために、海洋モデルの時空間解像度を向上させました。また、新たに、潮汐の影響を海洋モデルに組み込み、衛星海面水温データを直接的に海洋モデルに同化していくことで、より現実的な海洋の変化を捉えることが期待されます。本研究は衛星による海洋情報をより身近に利用できることを目的とし、高い時空間解像度の現況及び予測データを頻度高く提供します。これらの情報が水産試験場や漁業者などの漁業分野で定常的に利用されることで、効率的な漁業操業へ貢献できると考えています。

衛星海面水温の海洋モデルへの同化

データ同化技術は、一般に、数値計算によって得られたアウトプットと衛星や船舶などによって得られた観測値とを合成させて、より現実に近い解析値を得る手法です(図1)。より現実に近い解析値を数値モデルの初期値として用いることで、より正確な将来予測ができるようになります。データ同化は、発展の著しい研究分野であり、世界中の研究者によって、様々な同化手法が開発されています。研究の動向としては、コンピュータの計算能力が高くなることに伴い、より高度で複雑な同化手法が実用化されてきています。本プロダクトの数値計算に用いている海洋モデルは、JAMSTECが開発した潮汐を考慮した高解像度領域海洋物理モデル(JCOPE-T)です。このモデルは、1日よりも小さな時間スケールの現象を調べることを目的として構築されており、1時間ごとにアウトプットを出力しています。対象範囲は、日本周辺海域(117°E-150°E、17°N-50°N)であり、空間解像度は、約3km(1/36 deg.)です。

また、同化に用いられている観測値は、JAXAが作成する4機の衛星による海面水温データ(GCOM-W/AMSR2、ひまわり8号/AHI、GPM主衛星/GMI、Coriolis/WindSat)と衛星海面高度データおよび、船舶観測によって得られた水温塩分データです。

データ同化によって得られるプロダクトのイメージ図

図1 データ同化によって得られるプロダクトのイメージ図

「海中天気予報」が捉えた台風21号による海面水温の低下

海洋データ同化システムを用いる利点の一つは、衛星では海面水温の観測が困難な領域(マイクロ波放射計の場合の強降雨域や、赤外放射計の場合の雲域など*1)を物理法則に従って補間できることです。その一例として、同システムを用いることで、2018年9月1日から4日かけて太平洋上を日本へと北上した台風21号の通過に伴って生じた進路上における顕著な海面水温低下を図2のように捉えることができました。同じ領域について作成したひまわりの海面水温(図3)では海面水温低下は明確ではありません。この水温低下は、主に台風に伴う強風によって海面下の比較的冷たい海水が海面に湧き上げられたことによるものと考えられます。*2
実際の台風21号の経路図を図4に示します。このような台風通過時の海面水温低下の連続的な情報は、以降の台風の発達・衰退や進路等を予測する上でも重要な情報となります。

台風21号の経路図

図4 台風21号の経路図
気象庁のウェブページから引用。

海中天気予報システム可視化ウェブページの紹介

これらの情報を利用者が容易に閲覧できるように、JAXAでは海中天気予報システムによって得られた画像を可視化する、2種類のウェブページを公開しました。1つは、海面高度、水深0mから500mまでの水温、塩分の水平分布図と、水温、塩分の東西・南北断面図と鉛直分布図を公開しています(図5)。

もう一つは、海中天気予報システムによってえられた水深500mまでの水温、塩分とひまわり8号が観測した海面水温、クロロフィルa濃度を並べて比較しています(図6)。

JAXAでは海中天気予報システムによって得られたデータのうち、海面水温データの提供をひまわりモニタのP-Treeシステムで開始しました。深さ方向のデータを含むその他のデータのご利用に関しては、共同研究グループである海洋研究開発機構・アプリケーションラボのJCOPEグループ、e-mail: にお問い合わせください。

次回はシリーズ「衛星データと数値モデルの融合」の第3回として、平成30年7月豪雨を例とした気象予測について解説します。

論文情報


補足説明

*1 衛星による海面水温の観測
衛星に搭載されている地球観測センサーのうち、海面水温を観測できるセンサーは大きく二つに分けることができます。一つは、ひまわり8号などに搭載されている「赤外放射計」、もう一つはGCOM-Wなどに搭載されている「マイクロ波放射計」です。赤外放射計は、空間解像度が数kmの高空間解像度観測が可能ですが、雲の下は観測することができません。一方、マイクロ波放射計は、雲を透過する電磁波を検出するので雲の下の海面水温も観測することができます。ただし、得られる海面水温の空間解像度は50kmほどです。

*2 台風による湧昇
台風の下の海面では、台風の中心から外側へと向かう海流ができます。そして、台風の中心では、下層から海面へと冷たい海水が持ち上がってきます。詳しくは、以下の気象庁のページをご参照ください。
https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/data/db/kaikyo/knowledge/taifuu_suionteika.html

備考
本研究は、JAXA-JAMSTECの共同研究及び「日本沿海予測可能性実験(JCOPE)」の一環として行われました。

本記事は、海洋研究開発機構との協力のもと作成されました。

本文ここまで。
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