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地球が見える 2006年

火山の上の天文台銀座:ハワイ島

図1 ハワイ島
(Google Earthで見るハワイ島 (kmz形式、2.99MB、低解像度版))
図1は地球資源衛星(JERS-1)に搭載された光学センサが捉えたハワイ諸島最大の島、ハワイ島、通称ビッグ・アイランドです。この島にはマウナロア、マウナケア、キラウエア、フアラライ、コハラの5つの火山があり、このうち、太平洋最高峰のマウナケア山(標高4,205 m)の山頂は世界で最も天体観測に適した場所の一つと言われ、今では、最新鋭の光学・赤外線望遠鏡、サブミリ波望遠鏡及び電波望遠鏡が合計13も集まっており、「天文台銀座」となっています。
マウナロア山は標高4,169 mですが、マウナロア自身の重さで沈下した海洋底からの高さはおよそ17,000 mで、世界最大の火山です。マウナロアとはハワイ語で長い山を意味し、灰色の尾根が北東−南西方向に50 km以上にわたって延びていることが分かります。キラウエア山(標高1,234 m)は世界最大の活火山で、今もこの島を広げ続けています。マウナロアとキラウエアを含むハワイ火山国立公園は1987年、世界自然遺産に登録されました。ここには、希少な鳥、固有種の他、巨大なシダの森もあります。この島の北西部、コハラ・コーストでは カメハメハ大王が1758年ころ生まれ、この海岸からハワイ諸島の征服と統一を成し遂げていきました。有名なコナ・コーヒーは島の南西部、コナ・コーストの農園で栽培されています。島の南端、カラエ岬(北緯18゚56')は米国最南端でもあります。島の北東部にあるヒロはハワイ島で一番大きな町(人口およそ4万人)で、太平洋津波博物館があります。

図2a マウナケア山 図2b マウナケア山頂部
図2aはマウナケア山の拡大画像です。周辺は緑色で植生に覆われていますが、山頂付近は灰色に見え、植生が少ないことが分かります。また、黒っぽく丸い地形がいくつか見えますが、かつての噴火口のようです。白いのは雲で、左側に濃い陰を伴っています。図2bはマウナケア山頂部の拡大画像です。日本のすばる望遠鏡を含め、天文台のドームやアンテナが白い点として見えています。山頂は気候が安定していて、一年中北東の風(貿易風)が吹き、空気は薄く乾燥し、一年のうち300日以上が晴れの日です。さらに赤道付近にあるため北半球の天体すべてと南半球の天体のほとんどが観測できます。このような条件に恵まれているため、天体観測に最も適した場所の一つと言われています。

図3a マウナロア山 図3b マウナロア山の北側山麓
図3aはマウナロア山頂部の拡大画像です。画像中央に長径4.5 km、短径2.7 kmの巨大なカルデラが黒っぽく見えています。紫色や黒いところは溶岩ですが、数多くの黒い筋は比較的新しい溶岩の流れた跡です。図3bはマウナロア山の北側山腹の拡大図です。米国海洋大気庁(NOAA)のマウナロア観測所が白い点として見えています。ここでは、地球温暖化の大きな原因と言われている大気中の二酸化炭素濃度の観測が1958年から継続して行われています。ハワイ島はどの大陸からも遠く離れているので、ここで観測される大気中の二酸化炭素濃度は、局所的な数値ではなく、地球の平均的な大気状況を計測したものと考えられます。観測結果から二酸化炭素濃度は、最近のわずか40年の間に15パーセントも上昇していることがわかりました。世界に警鐘を鳴らすデータはここから発信されているのです。

図4a キラウエア山 図4b キラウエア山
図4aは光学センサによるキラウエア山周辺の拡大画像です。海に向かって斜面が暗い赤紫色になっていますが、この部分は表面が流れ出た溶岩に覆われていることを示しています。また、溶岩のところに白い雲が数多く見られますが、まだ冷え切っていない溶岩から大量の水蒸気が出ているためと考えられます。図4bの白黒の部分は合成開口レーダによるもので、長径約4.5 km、短径3 kmもの巨大なキラウエア・カルデラを始め、いくつもの噴火口が点在していることが分かります。同カルデラの南西端には直径約1 kmのハレマウマウ・クレータ(火の女神「ペレ」が住んでいると言われる)があります。最後に噴火したのは1974年で、現在小休止状態にありますが、代わって噴火口は東側へ移動しています。現在はプウウ・オオ火口が噴火の中心となっています。図4aではその噴煙が見えています。

図5 コハラ・コースト北部
図5はコハラ・コースト北部、ハワイ島北端の拡大図です。ここにカメハメハ大王生誕地といわれる場所があります。モオキニ・ヘイアウ*1から西に少し離れた場所に石垣で囲まれています。その中にカメハメハが産み落とされたといわれる「カメハメハ・アカヒ・アイナ・ハナウ」という名前の石があるそうです。なお、カメハメハ大王の遺骨はコハラ・コーストのどこかに葬られたと言われています。偉大な王の骨には特別のマナ*2が宿っているとされ後の王達も探したそうですが、現在でも、そのありかは明かされていません。



*1ヘイアウとはハワイ諸島にみられる宗教関係の建造物遺跡の一般名称です。モオキニ・ヘイアウは今から1500年程前に建てられたもので、クー (戦いの神)に捧げられたものです。

*2マナとは、メラネシア語で「力」を意味します。人や物へ特別な力を与えるものとされています。

参考文献:
野本陽代、巨大望遠鏡時代−すばるとそのライバルたち−、岩波書店

参照サイト:
ハワイ火山国立公園(UNESCO世界遺産のサイト)(英語版)
マウナケア山にある天文台 -パート I- 光学赤外線望遠鏡
マウナケア山にある天文台 -パート II- サブミリ波望遠鏡と電波望遠鏡
Mauna Kea Observatories(ハワイ大学天文学研究所のサイト)(英語版)
米国海洋大気庁マウナロア観測所のサイト(英語版)
米国地質調査所ハワイ火山観測所のサイト(英語版)

観測画像について:
(図1〜図5)
観測衛星: 地球資源衛星1号「ふよう1号」(JERS-1)
観測センサ: 可視近赤外放射計(VNIR)合成開口レーダ(SAR)
観測日時: 1993年1月24日、1996年7月24日(VNIR)
1997年7月2日(SAR)
地上分解能: 18.3 m×24.2 m(VNIR)
18 m (SAR)
地図投影法: UTM(ユニバーサル横メルカトール)
 VNIRの観測バンドのうち、近赤外域の760〜860 nm、可視域の630〜690 nm、520〜600 nmの各バンドに緑、赤、青色を割り当てているので、肉眼で見た色にほぼ近い色付けの合成画像です。森林は濃い緑色に、草地は明るい緑色に、溶岩は灰色、黒っぽい赤紫色ないし黒に、雲は白ないし薄紫に、海面は黒っぽく見えます。なお、右端の部分はSAR(観測周波数:1,275 MHz (Lバンド))による白黒画像に緑に色づけしました。黒はデータが無いことを示しています。

関連サイト:
地球が見える 陸地・地形

付録:
マウナケア山が天文台銀座になった訳:
ハワイ諸島はしばしば津波の被害を受けて来ました。1946年4月のアリューシャン地震による津波に続いて、1960年5月の「チリ地震」による津波でハワイ島最大の町ヒロでも大きな被害を被りました。経済的に苦しい中での町興しのアイデアがマウナケア山に天文台を誘致することだったのです。世界で最も天体観測に適した場所であることに加え、地元の援助もあり、下記のように次々と大きな望遠鏡が建設されました。なおマウナケア山の神聖さと環境を保護するため、これ以上天文台が建設されることはなさそうです。
1968年: ハワイ大学60 cm望遠鏡
(UH/0.6 m、山頂に最初に立てられた望遠鏡で今でも現役)
1970年: ハワイ大学2.2 m望遠鏡(UH/2.2 m、NASAとハワイ大が共同で運営)
1979年: NASA赤外線望遠鏡(IRTF、3.0 m)、
カナダ・フランス・ハワイ望遠鏡(CFHT、3.6 m)
イギリス赤外線望遠鏡(UKIRT、3.9 m)
1987年: カリフォルニア工科大学サブミリ波望遠鏡(CSO、10.4 m)、
ジェームズ・クラーク・マクスウェル電波望遠鏡(JCMT、15 m)
1992年: 米国国立電波天文台 (NRAO) の超長基線干渉計(VLBA) (口径25 mのパラボラアンテナ)、
ケックⅠ望遠鏡(10 m)
1996年: ケックⅡ望遠鏡(10 m)
1999年: ジェミニ北望遠鏡(8.1 m)、すばる望遠鏡(8.3 m)
2002年: サブミリ波アレイ(8×6 m、スミソニアン天体物理観測所と台湾中央研究院の天文・天体物理研究所との共同研究プロジェクト)

キーリング・カーブ:
マウナロア山で観測された大気中の二酸化炭素濃度のグラフは細かく振動しながら右肩上がりに上がる曲線を示しています。これは、大気中の二酸化炭素濃度が1年周期の季節変動をしながら徐々に増えていることを意味します。このことを発見したスクリプス海洋学研究所のチャールズ・D・キーリング博士にちなみ、この曲線はキーリング・カーブと呼ばれています。
本文ここまで。
画像:人工衛星の情報を掲載 サテライトナビゲーター
画像:衛星利用の情報を発信 衛星利用推進サイト
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