地球が見える 2004年
宇宙から見た中越地震の爪跡
10月23日の新潟県中越地震で、山古志村とその周辺の各処で地すべりや斜面が崩れる被害が発生しました。山古志村にある地すべりの中でも虫亀地区の地すべりは特に有名で、1980年に県道や水田を流出させ、河川をせき止めました。今回の地震でも虫亀地区で地すべりが発生し、土砂が県道を覆っている様子が画像からわかります(拡大図E)。 山古志村一帯は、第三紀(注)層地すべりに分類される地すべりがたくさんあります。一般的に、第三紀層は軟らかい岩でできていて、雨水や雪融け水によってもろく崩れやすくなる特徴があります。中越地震の3日前には台風23号がこの地域に大雨をもたらし、長岡では一日に100mmを超える降雨量がありました。この雨で、普段よりも地下水位が上がり、地盤が水を多く含んで土の中の水圧が高くなり、土の粒同士が離れやすくなる状態にあったと思われます。さらに、地震によって地盤が激しく揺さぶられると、土の中の水は自由に動けないので、土の中の水圧がさらに上昇し、地盤がさらに緩い状態になります。山古志村一帯に広く分布する地すべりの地盤が雨で緩み、そこに本震を含む4回の震度6弱以上の強い揺れが襲ったことでさらに地盤が緩んだため、地すべりが多発する結果となったのでしょう。 この他にも、岩盤でできた斜面が崩れています(例えば拡大図A)。これらは、地震そのものの強い揺れで岩盤が不安定になり崩れました。 山古志村と小千谷市は、ニシキゴイの発祥地と言われ、この地方の観光資源である闘牛「牛の角突き」は国の重要無形民俗文化財に指定されています。また、冬に中越地方に降り積もった雪は、春には雪融け水が豊富な地下水をもたらし、ブランド米「魚沼コシヒカリ」の産地となるとともに有名な日本酒の酒蔵も多く、人々の暮らしを支えています。しかし、時としてその豊富な水は、地すべり災害をもたらしました。平地が少ない山間部では、地すべりでできた平坦な土地を利用して水田や畑にする古くからの知恵があります。そうした知恵が、これまでの人々の生活を支えたことでしょう。被災された皆様にお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復興をお祈りいたします。 (注)第三紀:6,500万年前〜165万年前の地質年代。恐竜が絶滅した後、哺乳類が大発展しました。また、第三紀層は、北海道地方から北陸地方にかけて広く分布しています。
関連サイト: RADARSATによる新潟県中越地震干渉解析結果 付録:地すべりについての解説 地すべりは、すべる速度が速い順に崩壊型、流動型、ブロック型、クリープ型に分けられます。第三紀層地すべりでは、ゆっくりすべるブロック型およびクリープ型の地すべりが多くみられます。これらは、過去に崩れた土や粘土化した土が堆積した老いた地すべりで、目では見えないほどゆっくり動くものもあります。しかし、雨水や雪融け水がたくさん土の中に含まれると、土の中の水圧が上昇し、地盤がもろく崩れやすくなり地すべりが発生します。 地すべりの原因は素因と誘因に分けられます。素因は岩の種類や地形です。誘因は地すべりの引き金となるもので、降雨・融雪、地震などの外力、河川浸食、温度変化などです。第三紀層地すべりの誘因は、一般的に降雨や融雪です。流動型、崩壊型の地すべりは、地震や温度変化が誘因となります。第三紀層地すべりのように降雨や融雪を誘因とする地すべりでも、降雨や融雪によって緩んだ地盤に地震などの外力が複合的に作用すると、地震などの外力が地すべりの引き金になり、崩壊型や流動型の速くすべる地すべりとなります。新潟県中越地震では、この複合型の誘因による地すべりが多くの箇所で発生したと思われます。 |