地球が見える 2004年
レーダで見る最後のフロンティア:アラスカ
図1は、日本の地球資源衛星1号(JERS-1)に搭載した合成開口レーダ(SAR)のデータを用いて作成した、アメリカ合衆国アラスカ州の画像(*1)です。白枠部分にカーソルを合わせると、それぞれA北アメリカ最北端の町であるバロー周辺(*2)、Bアラスカを東西に貫くユーコン河とフォートユーコン周辺、Cアラスカ最大の都市アンカレッジとプリンス・ウィリアム湾に流れ込むコロンビア氷河周辺、Dヤクタットとアラスカ最大の氷河であるマラスピナ氷河周辺、E州都ジュノーと世界遺産に登録されているグレーシャー・ベイ国立公園付近の拡大図を見ることができます。 この画像は、1997年夏季の画像と、1997および1998両年の冬季の画像を重ね合わせて用いた特殊な色付けをした画像で、色の違いは夏季と冬季における地表面の状態の違いを表しています。例えば、Aでは冬季に凍結し、夏季に水面となる池や湖の部分が青い斑点で見え、Bでは植生の違いが赤や黄色に見えます。またC、D、Eの氷河では冬季に大量に積もる雪(氷河涵養域)が水色で見え、夏季に氷が融け出す部分(氷河消耗域)が赤色で見えます。もう一度図1を見ると、水色の氷河涵養域がアラスカの南岸に沿った山岳地帯に集中していることが分かります。これは、アラスカ南岸を反時計回りに流れるアラスカ海流の影響で、この地域の降雪量が多いためと考えられます。この画像は、以前、本ページで紹介した東南アジアのSAR画像(*3)と同様に、JERS-1全球森林マッピングプログラム(GFMP)の一つである全球北方林マッピング(GBFM)で作成されました(*4)。 寒帯林地帯や永久凍土(ツンドラ)地帯のモニタリングは、地球規模での気候変動や水循環、炭素循環を考える上でとても重要な役割を担っており、これらの解明には広い領域を細かく観測できる人工衛星データ、特にSARの利用がとても有効です。今後、打上げが予定されている陸域観測技術衛星(ALOS)には、2つの光学センサとともに、JERS-1 SARの後継としてPALSARという合成開口レーダが搭載されます。EORCではALOS PALSARのデータを用いて、GFMPを引き継ぎ、さらに発展させた「ALOS京都・炭素観測計画(Kyoto & Carbon Initiative)」(*5)を進めています。これは森林や土地被覆の変化の抽出、森林バイオマス量の変動把握、湿地などのメタンガス発生源のマッピングとモニタリングなどを目的とし、直接的または間接的な様々な国際貢献が期待されています。
(*1) SARは、雲に覆われた地域でも地面を10数mの細かさ(分解能)で観測することが可能です。図1は、一日ずつ西へずれる高度568kmの極軌道上から観測した画像(観測幅75km)をつなぎ合わせて合成したモザイク画像です。 (*4) このプログラムのメンバー機関のひとつであるアラスカ大学のアラスカ衛星施設(ASF)はアラスカ第2の都市フェアバンクスにあります。また、JERS-1衛星は1992年から1998年までおよそ6年半にわたって搭載テープレコーダも使用して全陸域の観測を行いましたが、観測データの受信には、このアラスカ大学の多大な協力を得ました。 GFMPで作成された全てのモザイク画像は、研究もしくは教育目的での利用に限り無料で提供しています。ホームページでは500mおよび2km分解能のモザイク画像がご覧になれますが、100m分解能のモザイク画像を収録したCD-ROM/DVD-ROMも提供しています。 関連ページ (*2)アラスカでの積雪観測 −速報− (*3)レーダで見る東南アジア・インドシナ半島 (*4)JERS-1 SAR 全球森林マッピング(GRFM/GBFM)プログラム (*5)ALOS 京都・炭素観測計画(Kyoto & Carbon Initiative)
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