地球が見える 2004年
レーダで見る東南アジア・インドシナ半島
図1は、日本の地球資源衛星1号(JERS-1)に搭載した合成開口レーダ(SAR)のデータを用いて作成した、東南アジアのインドシナ半島付近の画像(*1)です。SARを使うと、地形、森林の分布状況や土地の湿り具合といった地表面の状態、建造物などを把握することができます。また、雲に覆われた場所や、夜間でも、地表を細かく観測できる利点があります。白枠部分にカーソルを合わせると、それぞれA.メコン川河口付近(メコンデルタ地帯)、B.タイ王国バンコク市周辺、C.イラワジ川河口付近、D.シンガポール周辺の拡大図を見ることができます。図1は1997年1−2月の乾季の画像と、1998年8月の雨季の画像を用いて特殊な色付けをした画像(*2)で、乾季・雨季を通して植物が生い茂る熱帯雨林地帯などは黄色から黄緑色(C,D)、乾季と雨季で植物の生育状態に違いのある農地(主に灌漑水田)などは赤や緑(A,C)、市街地や道路沿いの人工構造物は白(B,D)、海・河川・湖沼などの水域と観測画像のないところは黒で表されています。 図1の画像は、JERS-1全球森林マッピングプログラム(GFMP)で作成されました。GFMPは、国際的な枠組みで進められてきた研究プログラムで、主に森林の分布とその変化を広域的かつ詳細に調査しようとするものです。GFMPは東南アジア、中央アメリカ、南米のアマゾン流域、中央, 西, 東アフリカなどの熱帯雨林地帯を対象とした全球熱帯林マッピング(GRFM)と、北米大陸、ユーラシア大陸などの寒帯林地帯を対象とした全球北方林マッピング(GBFM)の二つで構成されています(*3)。 2005年に打上げが予定されている陸域観測技術衛星(ALOS)には、2つの光学センサとともに、JERS-1 SARの後継としてPALSARという合成開口レーダが搭載されます。EORCではALOS PALSARのデータを用いて、GFMPを引き継ぎ、さらに発展させた「ALOS京都・炭素観測計画(Kyoto & Carbon Initiative)」を進めています。これは森林や土地被覆の変化の抽出、森林バイオマス量の変動把握、湿地などのメタンガス発生源のマッピングとモニタリングなどを目的とし、直接的または間接的な様々な国際貢献が期待されています。 (*1) SARは、雲に覆われた地域でも地面を10数mの細かさ(分解能)で観測することが可能です。図1は、高度568kmの極軌道上から観測した南北に長い短冊状の画像(観測幅75km)を約40日分つなぎ合わせて合成したモザイク画像です。 (*2)1997年1−2月の乾季に観測されたモザイク画像を赤、同時期のテクスチャ(地表面の粗さ)を青、1998年8月の雨季に観測されたモザイク画像を緑に割り当ててカラー合成を行いました。それぞれのモザイク画像は約1,800シーン分のデータを処理して、1kmの分解能で作成しました。このようなカラー合成の方法は、GLI画像のカラー合成の方法とかなり異なっているので、画像から何かを読み取る際には注意が必要です。 (*3) GFMPで作成された全てのモザイク画像は、研究もしくは教育目的での利用に限り無料で提供しています。ホームページでは500mおよび2km分解能のモザイク画像がご覧になれますが、100m分解能のモザイク画像を収録したCD-ROM/DVD-ROMも提供しています。 関連サイト: ・JERS-1 SAR 全球森林マッピング(GRFM/GBFM)プログラム ・ALOS 京都・炭素観測計画 (Kyoto & Carbon Initiative) ・伸縮自在な巨大湖:トンレサップ湖 ・東南アジア、インドシナ半島の広域観測画像 −光学センサと合成開口レーダの画像からわかること−
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