地球が見える 2003年
アラスカまで達していたシベリア森林火災の煙
—近紫外域、1km解像度にて世界で初めて捉えた陸域を含むエアロゾル分布—
ロシア東部で今年の春に発生した大規模な森林火災の煙が東アジアや西太平洋だけでなく、アラスカ上空にまで達していたことをGLIが捉えました。みどりIIに搭載されたGLIは近紫外域の観測チャンネル(380nm)において1kmの高い解像度と1,600kmの広い観測幅を世界で初めて実現したので、陸域を含む広域のエアロゾルを捉えることができました。 図1は、2003年5月19日にGLIが観測したデータから、エアロゾルの濃度を求めたものです(*注)。エアロゾルは大気中の小さな浮遊粒子で、森林火災や焼畑による煙のほか、車や工場の排ガス、沙漠から吹く砂塵、海洋上に薄く広がっているものなど、様々な種類があります。図にはユーラシア大陸の東半分、北太平洋及び北アメリカ大陸を含む広い範囲が含まれていますが、黄色ないし赤色で示される濃度の高いエアロゾルが、主な火災発生源であるバイカル湖付近のシベリアからカムチャツカ半島の北西を経てアラスカにまで分布していることが分かります。黒い部分は雲の領域か観測データがないことを示しています。 科学者たちは、大気中を漂うエアロゾルが気候変動に対して与える影響についてより良く理解するために、エアロゾルのグローバルな分布と輸送について研究しています。GLIは従来に比べてより高い空間分解能、より広い観測幅を近紫外域の観測チャンネルで実現しており、このため、高解像度で陸域を含むエアロゾルを広域的に捉えており、これは世界初の快挙と言えます。 図2は同日の日本付近をGLIで観測した、肉眼で見た場合に近い画像です。この画像でも、朝鮮半島、極東ロシアからサハリン北部にわたる広い範囲で煙(白い雲と比較してやや灰色に見える部分)が捉えられており、図1の内容と一致していることがわかります。
なお、本年5月23日のトピックス 「北日本に流れ込む森林火災の煙」 では、バイカル湖付近の無数の火元から出た煙が、サハリンや日本の北海道や東北地方に流れ込んでいることが示されています。 (*注) GLIが観測したデータのうち、チャンネル2(400nm)とチャンネル1(380nm)の反射率のデータの比からエアロゾルの濃度を求めたものです。元々の分解能は1kmですが、図では0.125度毎のデータにまとめています。 |