図(A)は、4月7日から5月7日までの1ヵ月分のGLIデータを用いて、雲のない晴天域のみを合成した画像(モザイク画像といいます)です。北極を真上から見た画像で、日本は画像右上に上下逆さに見えています。画像中央の北極海を埋めつくす海氷域をはじめ、シベリア(北極海の右側)、アラスカ、カナダ(北極海の左側)などの永久凍土帯・北方針葉樹林帯に広がる積雪域全体が薄水色に映し出されています。
(A)のモザイク画像から、積雪と海氷を区別できるように色づけしたものが、(B)の画像です。白色の部分が陸上の積雪域を、薄水色の部分が海氷域を表しています。また、濃い緑色は陸域を、紺色は海水域をそれぞれ表しています。積雪や海氷は太陽光をよく反射するので、地表の受取る太陽の放射熱量に関係します。このため、積雪や海氷の広がりは地球の気候と関係がある大切なデータです。
積雪面の反射の強さは雪のよごれ方で違います。汚れて黒っぽいと反射は悪くなり、太陽熱を吸収しやすくなり、雪温は上がります。(C)の画像が表す積雪の汚れは、雪と一緒に降り積った大気中の煤や土埃によるものです。汚れが多いと、春になってから雪温が上がり雪氷の解け方が速まりますので、季節進行のリズムが変わることになります。また、(D)の画像が表す積雪の粒径は、新雪のときに最も小さく、時間が経つにつれ大きくなっていきますが、雪温が高いところほど速く粒径が大きくなる傾向があるため、積雪の汚れと密接に関係しています。
(C)の画像を見ると、グリーンランド(北極海の左下の濃い青の部分)で積雪の汚れが少なくなっていることがわかります。グリーンランドは標高3000mを超える高地で、周辺に大都市などないので、海氷域に比べ大気汚染の影響が小さく、積雪の汚れも少ないと考えられます。また、(D)の画像では、積雪粒子の直径が積雪域の低緯度側の端の方で大きくなっており、南に行くにつれて気温の増加に伴って積雪が変化している様子が分かります。(なお、北極点周辺に見える黒い部分は、太陽高度が低すぎるために、データ解析の対象から除いている地域です。) |