東南アジア、インドシナ半島の広域観測画像を例に、光学センサと合成開口レーダの画像から何がわかるか見てみましょう。 |
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最初の画像は光学センサGLIの画像(注1)です。この画像は目で見た色に近い色になっており、緑色は植生、ベージュ色は植生の少ない土壌や濁ったトンレサップ湖の水面、青色は海面など地表の様子がわかります。しかし白く映る雲は地表を隠してしまいます。森林、農地、草地、湿原などの植生観測では、雲を取り除くために数日かけて複数回観測し地表の見える部分を集めて合成した画像を作ります。このような合成画像から反射スペクトル毎の画像を組み合わせて、植生分類、植生指数などの植生の情報が得られます。なお画像の中心から東側のヴェトナム沖から南シナ海にかけて海面が明るいのは、鏡のように太陽光を反射しているためです。
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次の画像は全天候観測が可能な合成開口レーダ(SAR)のカラー合成画像(注2)です。黄緑色が森林、青色が山地、赤色が乾季に地表を覆い雨季に冠水する水稲などの植生、黒色が海面、湖沼、河川、湿地帯、水田などの水域です。メコン・デルタの様々に変わる色あいは、稲などの生育状況を表しています。これらの画像から森林バイオマス(植生量)、農作物の生育状況、水田、河川、湖沼などの冠水状態からメタンガス発生量の見積もりなどの情報が得られます。
当地球観測研究センター(EORC)では、京都議定書のための森林モニタリング、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)などのグローバルな炭素循環の定量化への貢献のため、国際的な研究コミュニティとともに、光学センサと合成開口レーダの特長を生かし、相互補完的にデータを利用する解析手法の研究計画「京都・炭素観測計画」(Kyoto & Carbon Initiative、詳細は こちら :)に取り組んでいます。この計画は、みどりIIのGLIと来年打上げ予定の陸域観測技術衛星(ALOS)を複合的に利用する重要なテーマです。
注1:
2003年4月13日にGLIで観測した分解能1km、観測幅1,600kmの画像。インドシナ半島上空を通過する極軌道から一回観測するだけで、全域が観測できます。
注2:
1997年1〜2月(乾季)、1998年8月(雨季)に地球資源衛星1号「ふよう」(JERS-1)に搭載したSARで観測した分解能18m、観測幅75kmの画像から作成したモザイク画像。一日ずつ西へずれる極軌道上から観測した南北に長い短冊状の画像をつなぎ合わせて合成したモザイク画像です。まず①乾季(1997年1〜2月)と②雨季(1998年8月)の二枚の画像を作成します。この画像はレーダの反射強度の強さを明るさで表したものです。さらに12.5m間隔で並んだ画素の8行×8列分の領域毎に反射強度の標準偏差と平均値の比を明るさで表した③レーダテキスチャ画像(乾季の画像より作成)を作ります。この画像では地形が激しく変化する山岳地域は明るく、平坦な平野部は暗く見えます。①、②、③の画像に、赤、緑、青を割り当て合成したのが、このカラー合成画像です。なおこれら東南アジアのJERS-1/SAR合成画像については、間もなくCD-ROMで無償配布の予定です(全球森林マッピング計画(Global Forest Mapping Program)の詳細は こちら :)。
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