Documents -台風データベースについて- 用語解説 home  
TRMM台風データベース Version 1.0  2002年10月, 宇宙開発事業団 地球観測利用研究センター
TRMM台風データベース Version 1.1  2003年10月, 宇宙航空研究開発機構 地球観測利用推進センター
TRMM台風データベース Version 1.2  2004年6月, 宇宙航空研究開発機構 地球観測利用推進センター

1. TRMM台風データベースの概要

1-1. はじめに

 本データベースは、TRMMの観測のすべての期間で得られた標準プロダクトから、台風(台風、ハリケーン、サイクロン等の熱帯低気圧全般)が観測されている部分を検索し、それらの領域について、おもな標準プロダクトから切り出して収録したものです。本データベースのデータファイルのフォーマットはHDF形式で、構造はオリジナルの標準プロダクトとまったく同じです。


1-2. 収録データの概要

  • 対象期間

  •  1997年12月7日〜
     ただし、2001年8月7日〜8月24日までは、衛星高度上昇のため、データが取得されていません。

  • 対象エリア

  •  PR: 北緯36度〜南緯36度
     TMI,VIRS: 北緯38度〜南緯38度

  • 収録プロダクト

  •  PR: 2A23, 2A25
     TMI: 1B11, 2A12
     VIRS: 1B01

    プロダクト
    バージョン
    1997/12/07 〜 2001/08/062001/08/07 〜 2001/08/242001/08/25 〜 2004/03/312004/04/01 〜
    5 軌道高度上昇
    のためデータ
    未取得
      
    5A   
    6   

  • ファイル形式

  •  HDF形式(gzip圧縮)

    2. データの編集方法

     本データベースで収録されているデータファイルは、PRで降雨が観測されている領域と、台風の位置情報とを関連づけ、台風の観測された領域を標準プロダクトから切り出したものです。
     ここでは、標準プロダクトから台風が観測されている領域を検出し、データファイルを編集する手法について解説します。

  • 経路データの入手


  •  ハワイ大学の台風情報サイト「Tropical Storms, Worldwide」より、台風の位置情報データを取得し、予報データを除いた実況データ部分のみを抽出します。

  • 降雨域の検出


  •  2A25標準プロダクトに含まれる、全レンジビンの降雨強度の平均値について、各スキャンごとに求めたアングルビン方向の合計値を、スキャン方向に5スキャン移動平均した値が3mm/h以上となるスキャンが存在する場合に、降雨域として検出します(図中の降雨域Aおよび降雨域C)。なお、別の3mm/h以上の値が24スキャン以内に存在する場合は、合わせて一つの降雨域とします。(図中の降雨域B)

     さらに、ある降雨域の位置から経緯度それぞれ±5度の範囲に他の降雨域が存在する場合、それらのすべての降雨域を含むような、最も広い矩形範囲(図中の黒枠)の経緯度を求めます。
     このようにして求められた範囲は、降雨域が連続しない場所もある程度含まれている、いわば広域の降雨地域であり、熱帯低気圧そのもの雨域が不明瞭な場合や、雨域が断片的な場合にも対応するためのものです。

  • 降雨域と台風位置との関連づけ


  •  上記の矩形雨域が含まれる一軌道分の標準プロダクトの観測時刻に対して、前後6時間以内に存在する台風の位置を抽出します。
     台風が矩形の雨域(図中の黒枠)またはこれから±5度に拡張した範囲(図中の赤枠)に含まれる場合に、TRMMにより台風が観測されたものして、本データデースの収録対象としています。



  • HDFデータの編集


  •  台風が観測された場合には、台風位置と上述の矩形雨域(図中の黒枠)を含み、その範囲からさらに経緯度それぞれ5度づつ拡張した範囲を、最終的なデータ範囲としています。
     このようにして求められたデータ範囲を、1軌道分の標準プロダクトから切り出しをおこなうことにより、本データベースにおけるHDFデータが作成されています。
     なお、上記の編集は台風ごとにおこなわれており、複数の台風が近い位置に存在する場合には、データ範囲が重複する場合でも別ファイルとなることがあります。

     なお、作成されたHDFデータのうち、雲画像などから判断して明らかに台風の検出が不適当であるものについては、データベースの対象から除外や、データ範囲の変更をおこなったものがあります。
     このようにして編集されたHDF形式のデータファイルは、gzip圧縮をおこない、データベースに収録しました。

    3. データの扱い方

    3-1 ファイル名・ダウンロード方法

     本データベースにおけるHDFデータのファイル名は、下記のように「プロダクト名」「観測日」「軌道番号」「プロダクトバージョン名」「熱帯低気圧番号」「台風名」「拡張子(HDF)」により構成されています。



  • プロダクトバージョン


  •  TRMMの標準プロダクトすべてに統一して付けられるバージョンで、降雨算定アルゴリズムの改訂とともに一括して変更されるものです。
     本データベースで収録されているデータは、プロダクトバージョン「5」「5A」「6」のいずれかです。2001年8月7日以前のデータはプロダクトバージョン「5」、2001年8月25日から2004年3月31日までのデータはプロダクトバージョン「5A」、2004年4月1日以降のデータはプロダクトバージョン「6」です。

  • 軌道番号


  •  TRMMの衛星軌道の南端から南端までを1周として、TRMMの運用開始から通算した周回数をあらわす番号で、「オービット番号」「シーン番号」と呼ばれることもあります。軌道番号はHDFファイルのファイル名に付けられており、TRMMの標準プロダクトのファイル単位でもあります。
     本データセットでは、標準プロダクトから台風の観測されている部分を切り出して、その部分のデータを1ファイルにしているため、軌道番号が同じでも台風ごとに別のファイルとなっている場合もあります。

     HDFデータは、本データベースのホームページよりダウンロードすることができます。ダウンロードされたデータは、gzip圧縮されています。


    3-2 TRMMプロダクトについて

     各プロダクトに格納されている物理量やフォーマットに関する詳細な情報は、下記の文書を参照して下さい。

  • TRMMデータ利用手引書 (PDF 4.0MB)
  • TRMMデータ講習会資料 データの読み出し方法について (PDF 409KB)
  • TRMMデータ講習会資料 Appendix (PDF 1.7MB)
  • 地球観測データ利用ハンドブック -TRMM編- (PDF 11.2MB)


  •  また、2001年8月の衛星高度変更にともなうプロダクトへの影響に関しては、下記の文書を参照してください。

  • 熱帯降雨観測衛星(TRMM)の軌道高度変更について(報告)
  • PR Version 5Aプロダクト使用上の注意
  • 1B21プロダクトバージョン5Aに関する注意事項


  •  プロダクトバージョン6のデータについては下記の文書を参照して下さい。

  • PRバージョン6プロダクトにおける変更点 (PDF 72KB)
  • TRMM降雨レーダー(PR)のアルゴリズム説明書(第2版) (PDF 463KB)
  • NASA プロダクトバージョン6情報 (英語ページ)


  • 3-3 主要な物理量について

     以下には本データセットに収録されているデータについて、主要な物理量とその格納先を示します。

  • 降雨レーダ(PR)プロダクト


  • 物理量 格納プロダクト 項目名 配列の要素 単位
    降雨タイプ分類 2A23 rainType スキャン数×49 -
    ブライトバンド高度 2A23 HBB スキャン数×49 m
    降雨頂高度 2A23 stormH スキャン数×49 m
    レーダ反射因子
    (降雨減衰補正済)
    2A25 correctZfactor スキャン数×49×80 dBZ
    降雨強度 2A25 rain スキャン数×49×80 mm/h
    地表付近の降雨強度 2A25 nearSurfRain スキャン数×49 mm/h


  • TRMMマイクロ波観測装置(TMI)プロダクト


  • 物理量 格納プロダクト 項目名 配列の要素 単位
    輝度温度
    10,19,37GHz 水平/垂直
    21GHz 垂直
    1B11 lowResCh スキャン数×7×104 K
    輝度温度
    85GHz 水平/垂直
    1B11 highResCh スキャン数×2×208 K
    降雨量 2A12 surfaceRain スキャン数×208 mm/h
    雲水量 2A12 cldWater スキャン数×14×208 g/m3
    雨水量 2A12 precipWater スキャン数×14×208 g/m3


  • 可視赤外観測装置(VIRS)プロダクト


  • 物理量 格納プロダクト 項目名 配列の要素 単位
    放射輝度 1B01 channels スキャン数×5×261 mW/cm2μm・sr



    3-4 TRMMプロダクトの可視化ソフトウェア

     TRMMデータの可視化ソフトウェア「TSDIS Orbit Viewer」は、NASAのTSDISにより開発されたもので、簡易な操作で、TRMMのHDFデータを画像やグラフ、テキスト等の形式で表示することができます。「TSDIS Orbit Viewer」は、下記サイトよりダウンロードできます。

  • TSDIS Orbit Viewer(Windows版、UNIX版)のダウンロード


  •  プロダクトバージョン6に対応したソフトウェア「TSDIS Orbit Viewer(v1.3)」は、TSDIS/NASAの下記サイトよりダウンロードできます。(英語版)

  • TSDIS Orbit Viewer(v1.3)のダウンロード




  • 3-5 TRMMツールキットライブラリについて

     UNIX上で直接TRMMデータを読み出すときには、ツールキットと呼ばれる、CおよびFORTRANのサブルーチンを使用することができます。ツールキットの使用したプログラミングの方法については、TRMMデータ講習会資料 データの読み出し方法について(PDF 409KB)を参照してください。



    4. その他

  • 「台風データベース」という呼称について


  •  本データセットでは、最大風速が34ノット未満の熱帯低気圧や、太平洋北西部以外の地域に存在し「ハリケーン」や「サイクロン」等の名称で呼ばれるものなど、正確には「台風」と呼ばれないものも含めた熱帯低気圧全般を対象としています。このため、便宜上「台風データベース」の名称が熱帯低気圧全般に対して用いられています。

  • 熱帯低気圧の分類基準について


  •  熱帯低気圧の正式な分類や命名は、国際気象機関(WMO)が地域ごとに定める「地域センター」によっておこなわれますが、本データベースでは、米国の合同台風警報センター(JTWC)、米国海洋大気庁ハリケーンセンター(NHC)、および中部太平洋ハリケーンセンター(CPHC)で用いられている基準に準拠しています。

  • 台風情報、経路データの出典について


  •  TRMMの観測データから熱帯低気圧を検出する際の熱帯低気圧の位置情報として、ハワイ大学のwebサイト 「 Tropical Storms, Worldwide 」 で公開されている経路データを使用しました。
     また、本データベースに収録されている経路図や、熱帯低気圧の分類、最大風速等の情報は、JTWC, NHC, CPHCの解析によるベストトラックデータを使用しました。

  • 時刻について


  •  本データベースでは、経路図や観測画像などにおいて、時刻に関する情報はすべて世界標準時を使用しています。

  • 経路図、画像等について


  •  本データベースに収録されている経路図、PR/VIRS観測画像、TMI観測画像、観測範囲画像に関しては、等緯度経度の正距円筒図法を使用しています。
     これらの画像については、Wessel and Smith(1995)による、「The Generic Mapping Tools (GMT)」を使用して作成しました。


    5. 注意事項

  • TRMM台風データベースの画像データをパンフレットに掲載する等により広く配布する場合には、EORC/TRMM事務局(trmmcont@eorc.jaxa.jp)にコンタクトして下さい。


  • TRMM台風データベースを用いて論文、レポート等を出版する場合は、謝辞として以下のような文章を明記して下さい。

     日本語の場合:

     「TRMM台風データベース (Ver. 1.2)は、宇宙航空研究開発機構地球観測利用推進センターにおいて作成されており、同センターより提供を受けました。」

     英語の場合:

     "'TRMM Tropical Cyclones Database (Ver. 1.2)' was produced and supplied by the Earth Observation Research and application Center, Japan Aerospace Exploration Agency."

     また、EORC/TRMM事務局では関連文献の収集を行っています。TRMM台風データベースを利用した論文、レポート等などについて、別刷またはコピーを送るなどの御協力をお願い致します。
     送付先は以下の通りになります。

     〒104-6022
     東京都中央区晴海1-8-10
     晴海アイランドトリトンスクエア オフィスタワーX棟22階

     宇宙航空研究開発機構 地球観測利用推進センター
     EORC/TRMM事務局

     FAX: 03(6221)9192
     E-mail:

  • TRMM台風データベースに関してコメント、疑問、質問などありましたら、EORC/TRMM事務局( )に御連絡下さい。