日本の南海上で発生した台風4号は、26日午前6時の時点、小型で弱く中心気圧は985hPa、中心付近の最大風速は23m/sでした。その後勢力を強め、28日午後1時には中心気圧960hPa、中心付近の最大風速は35m/sになりました。 暖かく湿った空気が、台風の東側にある太平洋高気圧と台風との間を通って本州に入りやすい状態が続き、本州付近で大気が非常に不安定になりました。この影響で本州上に停滞している前線が刺激され、栃木県、福島県境付近で集中豪雨をもたらし、大きな被害を出しました。
これらはTRMMのマイクロ波放射計(TMI)によって観測された、8月16日〜20日の5日間平均の海面水温(左図)と、台風発生直前の8月23日〜24日の2日平均の海面水温(右図)です。
8月中旬まで、日本の南海上は場所によって30度を越えるような高い温度傾向にありました(左図)。この時期、日本の南海上空は長期間に渡って晴れの区域となっていたため、日射によって海洋表面が暖められて水温が上昇したものと思われます。しかし、この後、台風発生直前の23〜24日頃には海面水温が30度以上の海域は縮小していました(右図)。これは、台風の前身である熱帯低気圧に付随した雲が日本の南海上を広域にわたって覆い、日射をさえぎったために海面水温が低下したと考えられます。
台風の発達には海面水温の高低が非常に大きな役割を果たします。このような水温の低下が今回の台風の発達に影響を及ぼしている可能性も考えられ、今後継続して海面水温を監視することが重要になってきます。
これはTRMMのマイクロ波放射計(TMI)と降雨レーダ(TMI)がと同時に観測した図です。左図は10GHz、右図が85GHによる輝度温度分布です。10GHzのデータは解像度は粗いものの、降雨をより定量的に観測できるといわれています。85GHzのデータは、降水システム中の主に氷晶の分布を観測することができます。
TMIの複数の周波数によるデータとPRデータをあわせて解析すると、台風内部の降水粒子の分布がさらに詳細にわかります。例えば、右図の85GHzでは台風の西側にも環状の構造が見られますが、10GHzでは見られません。この部分ではPRでも弱い降水しか観測されておらず、10GHzと85GHzでのこのような構造の違いは、上空に氷晶が形成されているものの降水は少ないという状態に対応しているからと考えられます。