1998〜2013年の16年間の7月の一ヶ月平均。上段から、降雨頂高度(単位は m)、高度6km、4km、2kmの降雨強度(単位は mm/30days)。 降雨頂高度は地表面降雨強度が0.5mm/hr以下をマスクしている。
雨が観測される一番高い高さを降雨頂高度と呼び、海面からの高度で表す。 大気中のどの高さまで雨が存在するかは、潜熱の放出を通じて、大気の暖まり方や循環に大きく影響する。 陸上では海上よりも地表面が暖められやすく、対流活動が発達しやすいために、海上よりも高いところまで雨が降っているのが普通である。 夏半球にある大陸上では、8kmや時には10kmにまで達する降雨が起こるが、海上では高くても6km〜7km程度の降雨であり、海陸での差異が明確である。 特に標高が高く、地表面自体が海面から4km〜5kmの高度にあるチベット高原などでは、降雨システム自体の降雨高さはそれ程高いわけではないが、海面から換算すると8km〜10kmの大気上層にまで雨があることになるため、その変化が潜熱を介して世界的な気候に影響を与える。
図は、16年間平均した、7月のPRによる降雨の鉛直分布と降雨頂高度である。 大陸、すなわちアフリカ大陸の赤道から北側にかけて、チベット高原を含むアジア域、北米において、高い高度の降雨が観測されている。 概ね、海でも陸でも、熱帯の多雨域では高い高度の降雨が観測されるが、場所によっては、多雨域にも関わらず、低い高度の雨が支配的な場合もある。 例えば、インド亜大陸の西海岸がそれにあたり、強い雨が2km の高度の降雨分布で観測されているが、6kmの高度では顕著ではなくなる。