1998〜2013年の16年間の12〜2月の3ヶ月(季節)平均。 上段から、対流性降雨、層状性降雨の地表面降雨量(e-surface rain)で、単位は mm/30days。 最下段は、全降雨量に対する層状性降雨量の割合で、単位は %。 年間降雨量が600mm/yearを下回る領域は灰色で示されている。
弱いながらも長い期間に降る雨と集中豪雨的に数時間で降ってしまう雨では、降雨特性が異なると言える。 上昇流の強さや水平方向・鉛直方向の広がり、時間スケールを反映して、降雨は層状性(stratiform)と対流性(convective)の2 種類に分類される(水野, 2000)。 層状性の降雨は広範囲で持続性があり、対流性の降雨は局所的で一時的である。 層状性降雨の典型は低気圧の進行前方に広がる乱層雲からの降雨であり、対流性降雨の典型は発達した積雲や積乱雲からの降雨である。
TRMMに搭載された降雨レーダ(PR)のアルゴリズムでは、降雨の鉛直プロファイルの形状と水平パターンをもとに、その降雨が主として層状性であるか対流性であるかの判定を行い、それを考慮して降雨強度の推定を行っている。
図は、12〜2月(北半球の冬)について、PRの層状性・対流性降雨の判定による、層状性と対流性の雨の分布を示したものである。 また、最下段の図は、全体の降雨量に占める、層状性の雨による降雨量の割合で、600mm/yearを上回る領域のうち、赤色系統が層状性降雨の多い領域、青色系統は対流性降雨が多い領域を示している。
これらの図をみると、全般的に、大陸および海洋大陸上では対流性の雨が雨量の多くを占めている。 特に、夏半球のアフリカ大陸中部や南北アメリカ大陸において、対流性の降雨が卓越している。 逆に、海上では層状性の雨による寄与が大きく、中緯度の降雨(日本の東海上や南太平洋の南部)では、雨量の全体の6割以上の雨が層状性の雨に起因する。 また太平洋上の熱帯収束帯(ITCZ)においても層状性降雨による寄与が大きい。