漁業

漁業

 近年、衛星のデータは、さまざまな漁業で有効利用されるようになってきています。しかしながら、最も一般的に利用されている赤外センサによる海面水温観測の場合、どうしても雲の影響を受けてしまうため、時期や場所によっては長い期間にわたって観測ができないということも起きてしまいます。たとえば、冬の日本海では晴れている時の方が少ないため、なかなか海面水温の情報を得ることができません。マイクロ波は雲の影響を受けにくいことから、継続的に海面水温の情報を得ることができます。このために、漁業への利用が非常に期待されており、今後さらに利用が進むと考えられます。

各季節のTMIによる日平均水温場と漁場位置
 これらの図は各季節の海面水温分布に、赤い丸で漁場位置を重ねあわせたものです。延縄漁業が対象とする魚は、ビンナガマグロ、メバチマグロ、キハダマグロといった、日本の水産では最も重要な魚たちです。それぞれの魚ごとに適した水温があるため、似たような色(水温)の領域に漁場が集まっています。温度の異なる水域で漁場が二極化しているのは、対象となっている魚種が異なっているからです。さらに、暖かい水の張り出し部分や、色(水温)が変化する境目に漁場が集まっていることも確認できます。衛星データから水温を推定できれば、ターゲット魚種の漁場がどこに出来る可能性が高いのかを判断し、効率的に漁船を動かして、魚を獲ることが出来るようになります。衛星情報は、魚類資源の永続的な保護と管理を可能にし、今後重要な役割を果たすようになるでしょう。
 漁場データ提供:(財)漁業情報サービスセンター、斎藤克弥氏。