PRによる地表面観測 |
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これは降雨レーダ(PR)で観測された地表面状態の合成カラー画像です。上図が1998年2月、下図が1998年8月の様子です。PRは真下から左右17度の範囲で電磁波のビームを左右に振りながら地面や降雨からの反射を観測しています。陸上では、3〜8度の入射角に対する地表面からの反射は植生が多いほど小さくなるので、この範囲のデータについては反射が小さいほど緑色になるように色づけされています。入射角9〜13度付近は地表面が湿っているほど反射が強くなるという影響が良く現れるので、反射が強いほど青色になるように色づけされています。また、入射角が14から18度付近では、砂漠のように地表面が鏡のように滑らかであるほど反射が弱くなるので、反射が弱いほど赤くなるように色づけされています。
したがって、合成カラー画像は:
・緑色の領域は植生が多い
・青色は湿っている領域に対応している
・赤色は乾燥域や砂漠にみられる
・黄色い領域は青の逆であり、乾燥した草地である
と、判読できます。乾燥地で植生が少なくなるにつれて、緑、黄緑、黄色、オレンジ、そして赤と変化していると考えられますし、地表面が湿ってくると青色の成分が混じり、紫(植生少)やシアン(植生大)等の色が見られます。
カラー合成画像の2月と8月を比較すると、南アメリカのアマゾン川流域、東南アジアモンスーン領域、アフリカのコンゴ川流域などで熱帯雨林が分布している様子、あるいはモンスーン林で雨季(北半球では8月)には緑色の領域が拡大し、乾季には減少する様子がわかります。砂漠や荒れ地を示唆する赤い色の領域は、北アフリカのサハラ砂漠、アラビア半島のルブアルハリ砂漠、そしてオーストラリア中央のグレートビクトリア砂漠などに特に顕著にあらわれています。耕地や草原の土壌の湿潤度、あるいは水面面積に対応していると考えられる青色は、アフリカ北部のサヘル砂漠、インドやタイ、ベトナムの農耕地帯などで雨季に顕著に見られます。
協力:東京大学 生産技術研究所 沖研究室
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PRによる土壌水分の推定 |
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TRMMの降雨レーダ(PR)による地表面観測データには地表面の乾湿の他に、植生量や表面のでこぼこ等の情報も含まれています。そこで、可視・近赤外センサから得られる植生指標やマイクロ波散乱理論等を用いてそうした効果を除去し、土壌水分量に変換したのが右の図です。
上が1998年2月、下が1998年8月に対応しています。
両者を比較すると、例えば8月には乾季の終わりに近い南米のアマゾン川流域では乾燥化していますが、そのすぐ北のオリノコ川流域は雨季の最中であるため湿潤化していることがわかります。アジアモンスーン地域における8月の湿潤化も顕著です。地表面からの反射に色付けをしたカラー合成画像では砂漠地帯にも様々な模様が見られましたが、この定量的な土壌水分推定結果ではサハラ砂漠やルブアリ砂漠等はきちんと乾燥域として推定されています。なお、斜面の影響から散乱理論の入射角依存性をうまく利用することができない山岳部付近と、森林密度が非常に高い熱帯雨林領域については、現在のところ土壌水分を推定することはできず、図では欠測(黒い部分)となっています。
協力:東京大学 生産技術研究所 沖研究室 |
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