BBRの観測では3方向視による放射輝度データが得られますが、これらとMSIによる観測データを組み合わせて、大気上端における短波・長波放射フラックスが計算されます。さらに、CPRやATLIDによる鉛直プロファイルデータを組み合わせることで、高さ500mごとの各層における短波・長波加熱率が求められます。
衛星と観測センサ
広帯域放射収支計(Broad-Band Radiometer, BBR)は、短波帯域、および短波~長波を含めた帯域に広帯域のチャンネルをもつ受動型センサです。 CPR, ATLID, MSIが雲やエアロゾルに関する物理量のリトリーバルを担うセンサであるのに対して、BBRは大気上端での放射エネルギー収支を求めることが目的です。BBRで得られる情報は、雲・エアロゾルと放射エネルギー収支との定量的な関係にアプローチする手がかりとなります。
BBRの観測データからは、短波(Shortwave: SW)および長波(Longwave: LW)それぞれの大気上端における放射フラックスが計算されます。長波のデータに関しては、短波~長波帯域と短波帯域のデータの差分により導出されます。これらの短波と長波における感度帯域の選択は、太陽放射と地球放射それぞれの波長の違いに関連したものです。
大気上端での放射フラックスの導出にあたっては、BBRが直接計測している量である放射輝度(視線方向だけの計測量)に対して、全天的な方向積分を考慮する必要があります。雲などは立体的な形状をしていることから、観測する方向によって放射輝度が異なるため、ある1方向のデータだけから放射フラックスを求めると大きな誤差を生じる可能性があります。このような誤差を軽減するために、BBRではある1つの地点に対して3方向(衛星直下視、前方視、後方視)からの観測データを取得できるような3つの光学系を備えた設計となっています。
BBRの観測では3方向視による放射輝度データが得られますが、これらとMSIによる観測データを組み合わせて、大気上端における短波・長波放射フラックスが計算されます。さらに、CPRやATLIDによる鉛直プロファイルデータを組み合わせることで、高さ500mごとの各層における短波・長波加熱率が求められます。
センサの種類 Sensor type |
放射収支計 |
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開発担当 Developer |
欧州宇宙機関(ESA) |
感度チャンネル Channel |
150 km (進行方向左側約115km、右側約35km) |
0.25μm ~ 50μm | |
ダイナミックレンジ Dynamic range |
SW: 0~450 Wm-2sr-1 |
LW: 0~130 Wm-2sr-1 | |
精度 Accuracy |
SW: 2.0 Wm-2sr-1 LW: 1.5 Wm-2sr-1 |
フットプリント Footprint (IFOV) | 約 10 km × 10 km |
サンプリング間隔 Sampling | 約 1 km |