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「だいち2号」による漂流する巨大氷山「A23a」の観測結果

概要

  • 2022年初め頃より、ウェッデル海の海底に座礁していた巨大氷山「A23a」が漂流を開始した。
  • JAXAは2022年2月13日、2022年12月10日、2023年11月30日に「だいち2号」の広域観測モードによる観測を行い、漂流する巨大氷山の移動を捉えることに成功した。
  • 複数の「だいち2号」の観測画像から、2022年2月13日~2023年11月30日の期間で巨大氷山が4,050㎞²の面積を維持しながら、大西洋に向けて約1,600㎞移動していることを確認した。
南極海を漂流する巨大氷山「A23a」(約4,000㎞²:東京都の約2倍の大きさ)が、まもなく大西洋に侵入しようとしています(2023年11月時点)。 巨大氷山が大西洋へ侵入すれば、大西洋での海運に大きな影響を与えることが予想されます。 加えて、「A23a」が島に座礁すれば、アザラシやペンギンなどの野生生物が通常の餌場から遮断される可能性が危惧されています。 「A23a」は、1986年に南極大陸の中で2番目の規模を誇るFilchner-Ronne(フィルヒナー・ロンネ)棚氷から分離後、ウェッデル海の海底に座礁していましたが、2022年初め頃より海底から外れ、漂流を開始しました。 JAXAは、2022年2月13日、2022年12月10日、2023年11月30日に撮影された「だいち2号」(ALOS-2)搭載のLバンド合成開口レーダ、パルサー2(PALSAR-2)の広域観測モード(観測幅350 km)の画像を用いて、この漂流する巨大氷山の移動を観測しました。 図1にそれらの観測範囲を示します。
図1:「だいち2号」の観測範囲
図1:「だいち2号」の観測範囲
図2は「だいち2号」の広域観測モードによって観測された画像です。 赤色と緑色にHV偏波、青色にHH偏波の画像を割り当てています。 黄色く写っている箇所はクレバスと呼ばれる氷体の亀裂であり、クレバスを持つ巨大氷山は、薄暗く写っている海氷に囲まれていることがわかります(2023年11月30日では,氷山は海洋に囲まれている)。 図3は、撮影された3枚の画像を地図上に表示させたものです。2022年2月13日、2022年12月10日、2023年11月30日の氷山の位置を比較すると、大西洋に向かって移動(約1,600㎞)していることがわかります。
  • 図 2 2022年2月13日、2022年12月10日、2023年11月30日に撮影された「だいち2号」の観測画像
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  • 図 2 2022年2月13日、2022年12月10日、2023年11月30日に撮影された「だいち2号」の観測画像
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  • 図 2 2022年2月13日、2022年12月10日、2023年11月30日に撮影された「だいち2号」の観測画像
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図 2 2022年2月13日、2022年12月10日、2023年11月30日に撮影された「だいち2号」の観測画像
図 3 「だいち2号」で観測された氷山「A23a」の位置変化
図 3 「だいち2号」で観測された氷山「A23a」の位置変化
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今回、巨大氷山「A23a」が2022年2月13日~2023年11月30日の期間で大西洋に向かって約1,600㎞移動していることがわかりました。 また、「A23a」の面積は、2023年11月30日時点で4,050㎞²であり、大西洋に侵入後もしばらくその規模が維持される可能性があります。 大西洋に侵入することが予想される巨大氷山「A23a」の漂流モニタリングは、大西洋の海運や野生動物への影響を評価する上で求められています。 「だいち2号」は、天候や昼夜の影響を受けずに地球の様子を広範囲かつ詳細に観測できるため、このような現地観測が非常に困難である南極域の雪氷体の変動を観測することができます。 JAXAでは今後も「だいち2号」による当該地域への観測を継続していく予定です。
JAXA EORC