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陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)による2010年チリ地震にともなう緊急観測 (3)
2010年2月27日15時34分頃(日本時間、以下同じ)、チリ中部の沿岸(チリの首都サンティアゴの南西325km、深さ35km)を震源とするマグニチュード8.8の地震が発生しました(地震の規模及び位置については米国地質調査所(USGS)による発表を参照)。宇宙航空研究開発機構(以下JAXA)は地震による被害状況を把握するため、3月9日13時頃に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)による緊急観測を実施しました。本観測では2009年10月22日に取得した同じ軌道からの画像と比較し、地殻変動検出を実施しました。「だいち」は夜間に南から北へ飛行しながら、震央の南西~北西の領域を観測しました。なお、本解析には高精度軌道情報を使用しました。
青枠、赤枠は図2、3で示すPALSAR観測領域を表します。赤い星印は本地震の震央位置を示しています。
地震に伴う地殻変動を検出するため、地震前後に取得したPALSARデータの差分干渉解析を行いました。図2左は地震前(2009年10月22日)と地震後(2010年3月9日)のPALSARデータから得られた差分干渉画像(地殻変動図)、図2右は地震後の強度画像を示したものです。図2左の差分干渉画像から、沿岸部に非常に多くの明瞭な干渉縞が確認でき、この領域で大きな地殻変動があった事が分かります(図3)。
図3は図2左の沿岸部を拡大したものです。この画像内で少なくとも25周期(およそ3m)の衛星に近づく向きの(隆起もしくは西向きの水平変位を含む)地殻変動があったことが分かります。今回「だいち」による観測から、震央から約100km北の地点でも3m程度の地殻変動が生じた事が明らかになりました。
JAXAでは今後も「だいち」によるチリ地震に関する観測を継続していく予定です。
(注1) パルサー(PALSAR):
フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ。衛星から発射した電波の反射を受信するマイクロ波レーダで、夜や曇天時も撮影が可能です。
(注2) 差分干渉処理:
PALSARは2時期に観測された衛星-地面間の距離に変化があった場合、それを高い精度で検出することが可能です。地震前後のデータを比較すると、地震によって発生した地面の隆起や沈降などの地殻変動は、距離の差となり、画像では干渉縞として表わされます。今回の画像にあるように、内陸から沿岸部に向かって、青→緑→黄→赤→青の変化は地面が衛星に近づくことを表わします。なお、色の一周期は11.8cm分の変動を示すものです。
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JAXA EORC