画像ライブラリー
台湾付近の地震の観測結果について
概要
- 2024年4月3日(日本時間)に台湾付近でマグニチュード7.4の地震が発生し、建物損壊、落石、土砂崩れによる大きな被害が発生した。
- JAXAではセンチネルアジアや国内防災機関等からの要請を受け、4月4日から「だいち2号」による緊急観測を実施し、関係機関へのデータの提供、緊急観測・アーカイブデータの公開を実施した。
- 関係機関やJAXAによる解析結果から、台湾東部の花蓮市周辺において地震に伴う顕著な地殻変動が検出された。
はじめに
2024年4月3日8時58分頃(日本時間、以下同じ)に台湾東部でマグニチュード7.4(アメリカ地質調査所(USGS)推定*1、台湾中央気象署(CWA)発表ではML7.2*2)の地震が発生しました。JAXAはセンチネルアジアや国内防災機関等からの要請に基づき、「だいち2号」(ALOS-2)搭載の合成開口レーダ「PALSAR-2」よる緊急観測を行い、データを関係機関に提供しました。図1に本解析に使用した観測範囲、表1に観測データの詳細を示します。
観測日時(日本時間) | パス番号 | 観測モード | ビーム番号 | 軌道・観測方向 | 解析データ | |
---|---|---|---|---|---|---|
(1) | 4月4日12時37分 | 25 | ScanSAR | W3 | 降交・右 | Beam4-5 |
(2) | 4月5日0時57分 | 137 | Stripmap 10m | F2-7 | 昇交・右 | |
(3) | 4月5日12時55分 | 28 | ScanSAR | W2 | 降交・右 | Beam1-2 |
JAXAにおける解析例
1) 4月4日の観測結果
図2は、2024年2月8日(地震前)と2024年4月4日(地震後)のScanSARモードによる観測データを用いた差分干渉画像です。この観測では、およそ東側から西方向に電波を照射して観測しており、画像の青→ピンク→黄色の変化は地表が衛星から遠ざかる方向(西向きまたは沈降)、青→黄→ピンク色の変化は地表が衛星に近づく方向(東向きまたは隆起)に動いたことを示します(*3)。本解析では台湾を含むBeam4-5のデータを解析し,電離層による位相遅延を補正しています。地形の起伏に依存する干渉縞が見られることから対流圏による位相遅延が示唆され,地殻変動以外の位相変化が含まれる点に注意が必要です。図3は花蓮市周辺を拡大したアンラップ後の干渉画像です。花蓮市周辺では最大約47㎝の近づく変動が検出されています。
2) 4月5日の観測結果
図4は、2023年10月19日(地震前)と2024年4月5日(地震後)の高分解能モード(10m)による観測データを用いた差分干渉画像(電離層遅延補正後)です。この観測では、およそ西側から東方向に電波を照射して観測しており、画像の青→ピンク→黄色の変化は地表が衛星から遠ざかる方向(東向きまたは沈降)、青→黄→ピンク色の変化は地表が衛星に近づく方向(西向きまたは隆起)に動いたことを示します。図5は花蓮市周辺を拡大したアンラップ後の干渉画像です。花蓮市周辺では最大約40㎝の近づく変動が検出されています。花蓮市周辺では東西両側からの観測において衛星に近づく地殻変動が検出されており、隆起が示唆されます。
図6は、2024年3月8日(地震前)と2024年4月5日(地震後)のScanSAR観測データを用いた差分干渉画像です。この観測では、およそ東側から西方向に電波を照射して観測しており、画像の青→ピンク→黄色の変化は地表が衛星から遠ざかる方向(西向きまたは沈降)、青→黄→ピンク色の変化は地表が衛星に近づく方向(東向きまたは隆起)に動いたことを示します(*3)。台湾を含むBeam1-2のデータを解析し,電離層による位相遅延を補正しています。本解析結果においても,地形の起伏に依存する干渉縞が見られることから対流圏による位相遅延が示唆されます。図7は花蓮市周辺を拡大したアンラップ後の干渉画像です。花蓮市周辺では最大約47㎝の近づく変動が検出されています。
関係機関における解析例
アーカイブデータの公開
今回の災害で被害にあわれた全ての方々に心よりお見舞い申し上げます。
JAXAでは引き続きこの地域の観測を継続する予定です。