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「だいち2号」による御嶽山噴火の観測結果 (2)

2014年9月27日午前11時53分頃(日本標準時、以下同様)、長野県と岐阜県の県境に位置する御嶽山(おんたけさん)が噴火しました。

p>宇宙航空研究開発機構 (以下、JAXA) は、2014年9月27日から9月29日にかけて、陸域観測技術衛星「だいち2号」(ALOS-2) 搭載のLバンド合成開口レーダ (PALSAR-2;パルサー2) を用いて、合計4回、御嶽山を観測いたしました。ALOS-2は8月上旬より定常観測を開始していることから、当山に対する噴火前の画像を取得しており、それとの比較を通して今回の噴火に関する火山の状況や変化について観測しました。表1にこれまでに取得した観測画像を示します。以下では引き続き噴火前後で見られた山体の変化や火山灰堆積に伴うレーダー画像の明るさの変化と堆積場所について解析しました。

図1に、今回の解析で用いた観測画像の範囲を示します(表1参照)。
図1: 観測範囲 (数値標高データはGTOPO30を使用)
図1: 観測範囲 (数値標高データはGTOPO30を使用)
表1 御嶽山の観測画像リスト
No. 観測日時(JST) 観測モード 観測方向 入射角(度) 北向/南向 枠の色
1 2014/08/18 23:59 高分解能[3m] 右観測 46.4 北向 赤色
2 2014/09/27 23:17 高分解能[3m] 左観測 18.0 北向 ピンク色
3 2014/09/28 12:45 高分解能[3m] 左観測 46.4 南向 黒色
4 2014/09/28 23:37 高分解能[3m] 右観測 21.9 北向 青色
5 2014/09/29 23:59 高分解能[3m] 右観測 46.4 北向 橙色

図2は、9月29日23時59分頃に御嶽山付近を観測したPALSAR-2の高分解能[3m]モード (1偏波) の(入射角46°)画像です。画像中央部に御嶽山が位置します。

図2中の赤枠で示した御嶽山山頂付近について、噴火前後の比較結果を図3に示します。共に、オルソ補正*したものです。噴火後の画像(左)では地獄谷の左側に窪んでいる領域が見えます。一方、噴火前(右)にはそれが見られません。今回の噴火で新たにできた火口の可能性があります。
図2: PALSAR-2画像による御嶽山付近
図2: PALSAR-2画像による御嶽山付近
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図3: 観測範囲 (数値標高データはGTOPO30を使用)
図3: 御嶽山山頂付近の噴火前後のPALSAR-2観測画像 噴火後 (2014年9月29日)
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図4: PALSAR-2画像による御嶽山付近(白枠内が図2で示したもの)
図3: 御嶽山山頂付近の噴火前後のPALSAR-2観測画像 噴火前 (2014年8月18日)
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図3の噴火後、9月29日の画像から作成した鳥瞰図を図4に示します。
図4: 御嶽山山頂付近の噴火後 (2014年9月29日) の鳥瞰図
図4: 御嶽山山頂付近の噴火後 (2014年9月29日) の鳥瞰図
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「だいち2号」が観測した御嶽山山頂付近に発生した窪地の様子 (Youtube動画)

図5は8月18日と9月29日の御嶽山山頂部を同じ軌道から観測した画像の変化を抽出したものです。変化したところは赤に色づけされており、衛星画像においても御嶽山山頂の火口周辺に降灰堆積が多く分布していることが推察されます。

図5: 御嶽山山頂付近の噴火前後のカラー合成画像
図5: 御嶽山山頂付近の噴火前後のカラー合成画像 (赤:2014年8月18日観測、緑・青:2014年9月29日)
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観測されたPALSAR-2画像は国内防災関連機関へ提供しました。御嶽山の観測は今後も継続いたします。

使用データ: PALSAR-2 データ
解析アルゴリズム: Sigma-SAR 2014
使用したDEM: 国土地理院10m

オルソ補正: 地形情報を用いてSAR特有の画像の倒れ込みを補正する方法。(EORC 「PALSARオルソ補正画像」参照)

JAXA EORC