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「だいち2号」によるネパール地震の観測結果について (2)
概要
- 「だいち2号」でネパール東部を観測し、地震による地殻変動の抽出を試みた。
- 地殻変動が、震源から東南東約170kmにまでおよんだことを検知した。
- 断層付近の南側では衛星へ近づく向き、北側では遠ざかる向きの変動が検知された。
2015年4月25日 (現地時刻) にネパールで発生した地震について、宇宙航空研究開発機構 (以下、JAXA) はセンチネル・アジアや国際災害チャータ等の緊急観測要請に基づき、陸域観測技術衛星「だいち2号」(ALOS-2) 搭載のLバンド合成開口レーダ (PALSAR-2;パルサー2) による観測を実施しています。
今回は、地震後(4月28日)および地震前(3月31日)に観測された広域観測モード(観測幅350km)のデータを干渉解析し、地震に伴う地殻変動の検出を試みました。PALSAR-2では新たに、毎回の観測のタイミングを高精度に合わせることで広域観測モードにも干渉解析が適用できるようになり、広域の変動を一度に把握できるようになりました。
図1に、解析により得られた干渉画像の全体像を示します。虹色の縞模様(干渉縞)は衛星視線方向の地殻変動を表しており、干渉縞の数が多いほど地面が大きく動いたことを意味します。画像左下、カトマンズの東に今回の地震によるものと思われる干渉縞が確認でき、大きな地殻変動があったことが分かります。画像右下および右上部にも長周期の干渉縞が見られますが、これらは衛星軌道*1や電離層*2等の影響を受けて生じたものと思われ、本地震とは無関係と考えられます。
図2に、本地震による変動を捉えたと考えられる部分の拡大図を示します。北側と南側に縞の向きが逆向きの二つの縞が見えます。北側では衛星方向へ2周回(約24cm)遠ざかる向きに、南側では4周回(約48cm)近づく向きに地表面が変動したと考えられます。干渉縞のパターンから、本地震は、東南東-西北西方向に走行を持つ断層が関与したと考えられます。また、震源から縞の端までの距離が約170km程度あることから、地殻変動の規模が非常に大きかったことがわかります。
JAXAでは今後も関係機関と協力し、ネパールの観測を継続する予定であり、震源周辺の地殻変動観測は観測条件が揃う5月3日(日本標準時)に行われる予定です。観測データを関係機関に提供するとともに、解析結果は随時本Webサイトで公開します。