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「だいち2号」による令和6年能登半島地震の観測結果について

概要

  • 2024年1月1日(日本時間)に能登半島でマグニチュード7.6の地震が発生し、建物損壊、土砂崩れ、火災、津波による大きな被害が発生した。
  • JAXAでは、国内防災機関等からの要請を受け、地震発生直後の1月1日から「だいち2号」による緊急観測を実施し、関係機関へのデータや解析結果の提供、アーカイブデータの公開を実施した。
  • 関係機関やJAXAによる解析結果から、能登半島における地震に伴う顕著な地殻変動が検出された。
  • 【1月11日追記】2.5 次元解析結果および1月8日の観測結果を追加しました。
  • 【1月17日追記】1月5日および10日のScanSAR観測結果を追加しました。
  • 【1月24日追記】2.5次元解析結果を追加しました。

はじめに

 2024年1月1日16時10分頃(日本時間、以下同じ)に能登半島で発生したマグニチュード7.6(気象庁報告)の地震について、JAXAは国内防災機関等からの要請に基づき、「だいち2号」(ALOS-2)搭載の合成開口レーダ「PALSAR-2」よる緊急観測を行い、データを関係機関に提供しました。図1に今回の観測範囲、表1に緊急観測データの詳細を示します。

図1:Stripmapモードによる撮像範囲
図1:ScanSARモードによる撮像範囲
図1:「だいち2号」による2024年1月1~15日の観測範囲(図中番号は表1と対応)。星印は震央の位置(気象庁発表*1)を示します。
(左図) Stripmapモードによる撮像範囲。(右図)ScanSARモードによる撮像範囲。
表1:「だいち2号」による観測の一覧
  観測日時(日本時間) パス番号 観測モード ビーム番号 軌道・観測方向
(1) 1月1日23時10分 121 Stripmap 3m U2-6 昇交・左
(2) 1月2日12時37分 26 Stripmap 3m U2-8 降交・左
(3) 1月3日23時51分 127 Stripmap 3m U2-9 昇交・右
(4) 1月5日12時01分 21 ScanSAR W2 降交・右
(5) 1月8日23時58分 128 Stripmap 3m U3-13 昇交・右
(6) 1月9日11時49分 19 Stripmap 3m U3-10 降交・右
(7) 1月10日22時59分 120 ScanSAR W2 昇交・左
(8) 1月12日23時44分 126 Stripmap 3m U2-7 昇交・右
(9) 1月14日11時56分 20 Stripmap 3m U2-8 降交・右
(10) 1月15日23時10分 121 Stripmap 3m U2-7 昇交・左

JAXAにおける解析例

1)1月1日の観測結果

 図2は、2022年9月26日(地震前)と2024年1月1日(地震後)の観測データを用いた差分干渉画像です。この観測では、およそ東側から西方向に電波を照射して観測しており、画像の青→ピンク→黄色の変化は地表が衛星から遠ざかる方向(西向きまたは沈降)、青→黄→ピンク色の変化は地表が衛星に近づく方向(東向きまたは隆起)に動いたことを示します*2
図3は、同期間の観測データを用いて、ピクセルオフセット法により検出した地殻変動図です。赤色(暖色系)の変化は地表が衛星から遠ざかる方向(西向きまたは沈降)の変動、青色(寒色系)の変化は地表が衛星に近づく方向(東向きまたは隆起)の変動を示します。干渉画像では干渉性の低下により能登半島北部から北西部にかけて干渉縞を検出できていませんが、ピクセルオフセット法により能登半島北西部の輪島市周辺で3m程度の近づく変動が検出されています。

2) 1月2日の観測結果

 図4は、2023年6月6日(地震前)と2024年1月2日(地震後)の観測データを用いた差分干渉画像です。この観測では、およそ西側から東方向に電波を照射して観測しており、画像の青→ピンク→黄色の変化は地表が衛星から遠ざかる方向(東向きまたは沈降)、青→黄→ピンク色の変化は地表が衛星に近づく方向(西向きまたは隆起)に動いたことを示します。
図5は、同期間の観測データを用いて、ピクセルオフセット法により検出した地殻変動図です。赤色(暖色系)の変化は地表が衛星から遠ざかる方向(東向きまたは沈降)の変動、青色(寒色系)の変化は地表が衛星に近づく方向(西向きまたは隆起)の変動を示します。東西両側からの観測において衛星に近づく地殻変動が検出され、隆起が示唆されます。

3) 1月3日の観測結果

 図6は、2023年12月6日(地震前)と2024年1月3日(地震後)の観測データを用いた差分干渉画像です。この観測では、およそ西側から東方向に電波を照射して観測しており、画像の青→ピンク→黄色の変化は地表が衛星から遠ざかる方向(東向きまたは沈降)、青→黄→ピンク色の変化は地表が衛星に近づく方向(西向きまたは隆起)に動いたことを示します。
図7は、同期間の観測データを用いて、ピクセルオフセット法により検出した地殻変動図です。赤色(暖色系)の変化は地表が衛星から遠ざかる方向(東向きまたは沈降)の変動、青色(寒色系)の変化は地表が衛星に近づく方向(西向きまたは隆起)の変動を示します。


4)1月5日の観測結果

 図8は、2023年11月24日(地震前)と2024年1月5日(地震後)のScanSARモードによる観測データを用いた差分干渉画像です。本解析には能登半島が含まれるBeam1のみを使用しています。この観測では、およそ東側から西方向に電波を照射して観測しており、画像の青→ピンク→黄色の変化は地表が衛星から遠ざかる方向(西向きまたは沈降)、青→黄→ピンク色の変化は地表が衛星に近づく方向(東向きまたは隆起)に動いたことを示します。


5) 1月8日の観測結果

 図9は、2023年6月12日(地震前)と2024年1月8日(地震後)の観測データを用いた差分干渉画像です。この観測では、およそ西側から東方向に電波を照射して観測しており、画像の青→ピンク→黄色の変化は地表が衛星から遠ざかる方向(東向きまたは沈降)、青→黄→ピンク色の変化は地表が衛星に近づく方向(西向きまたは隆起)に動いたことを示します。

 図10は、同期間の観測データを用いて、ピクセルオフセット法により検出した地殻変動図です。赤色(暖色系)の変化は地表が衛星から遠ざかる方向(東向きまたは沈降)の変動、青色(寒色系)の変化は地表が衛星に近づく方向(西向きまたは隆起)の変動を示します。本解析では、これまでの観測範囲に含まれていなかった、能登半島先端部の珠洲市周辺の地殻変動が検出されました。


6) 1月10日の観測結果

 図11は、2023年1月25日(地震前)と2024年1月10日(地震後)のScanSARモードによる観測データを用いた差分干渉画像です。この観測では、およそ東側から西方向に電波を照射して観測しており、画像の青→ピンク→黄色の変化は地表が衛星から遠ざかる方向(西向きまたは沈降)、青→黄→ピンク色の変化は地表が衛星に近づく方向(東向きまたは隆起)に動いたことを示します。

図9:2023年1月25日(地震前)と2024年1月10日(地震後)の観測データによる干渉画像<br/>(左図)観測範囲全体図(右図)能登半島拡大図(クリックで拡大)
図11:能登半島拡大図(クリックで拡大)

7) 2.5次元解析結果

 図12,13,14はピクセルオフセット法で得られた地殻変動を2.5次元解析により準上下方向と準東西方向の成分に分離した結果です。能登半島北西部では最大5m程度の隆起が検出されました。

図12:1月1日観測ペア(図3)と1月2日観測ペア(図5)を使用した2.5次元解析結果(左)準上下変動(右)準東西変動

関係機関における解析例

 「だいち2号」による観測データは、関係機関へ迅速に提供され、それぞれで実施された解析結果が公開されています。各機関による解析結果を比べることで、結果の信頼性の向上につながります。以下は、現時点でJAXAが把握している公開サイトです。

アーカイブデータの公開

 本解析で使用した緊急観測データについては、L1.1(CEOSフォーマット)およびL2.1(GeoTIFF)データが公開されています。非商用利用目的でしたらどなたでも利用可能です。詳細は下記のサイトをご確認ください。

今回の災害で被害にあわれた全ての方々に心よりお見舞い申し上げます。
JAXAでは引き続きこの地域の観測を継続する予定です。
JAXA EORC