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「だいち2号」によるハワイ・キラウェア火山噴火および地震の観測結果について(3)

Posted: Jun. 5, 2018, 9:00 (UTC)
Updated: Jun. 8, 2018, 5:00 (UTC)
Updated: Jun. 13, 2018, 9:00 (UTC)

概要

  • ハワイ島キラウェア火山において、2018年5月3日から噴火活動が継続している。
  • JAXAは5月31日(日本時間6月1日)に「だいち2号」による観測を行い、ハレマウマウ火口周辺の地殻変動と、レイラニ・エステート周辺の溶岩流の様子を捉えた。
  • 6月5日の観測画像から、ハレマウマウ火口周辺が沈降している様子を捉えた。
  • 6月9日の観測画像から、島の東部においてマグマの海への流入により新たな陸地が形成されている様子を捉えた。
  • データは現地関係機関へ提供しており、夜間あるいは雲や噴煙の下でも地表を観測可能な「だいち2号」の特性を活かし、火山活動の監視に貢献している。

ハワイ島キラウェア火山において、2018年5月3日より継続している噴火活動について、JAXAは国際災害チャーター等からの要請に基づき、「だいち2号」(ALOS-2)搭載の合成開口レーダ「PALSAR-2」により観測を行っています。表1に観測の概要を、図1に観測範囲を示します。

図1: ハワイ島の地形図
図1: ハワイ島の地形図。赤線は表1の②、青線は表1の③観測範囲を示す。黒線は図2、4、5、7の拡大図。
表1:「だいち2号」による観測の概要
観測日(UTC) 軌道番号 観測モード 偏波 観測方向 ビーム番号
2018年5月31日186ScanSARHH+HVW2
2018年6月5日89Stripmap 3mHHU2-6
2018年6月9日185ScanSARHH+HVW2
図2は表1①の2018年5月31日の観測データと2018年5月17日のほぼ同時刻の観測データを用いた差分干渉画像です。この画像は衛星視線方向(Illumination)の地表面の変位量を色で表し、この14日間で地表が衛星に近づく方向に動いた場合には青色(寒色系)、衛星から遠ざかる方向に動いた場合は赤色(暖色系)に変化することを意味しています。この解析結果では、レイラニ・エステート(Leilani Estates)近郊で最大10 cm程度の衛星に近づく変動(隆起もしくは東向き)が観測されました。ハレマウマウ火口周辺では最大50 cm程度の衛星から遠ざかる変動(沈降もしくは西向き)が見えています。また火口の南側では、現地時間5月28日に発生したM4.1の地震による地殻変動が見えています。
図2: 2018年5月31日と2018年5月17日の観測データを用いた差分干渉画像
図2: 2018年5月31日と2018年5月17日の観測データを用いた差分干渉画像。
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図3は、赤色に5月17日のHV偏波、緑色に5月31日のHV偏波、青色に5月31日のHH偏波の強度画像を割りあてたレイラニ・エステート(Leilani Estates)周辺の色合成画像で、溶岩流が赤色に見える着色になっています。5月22日に観測された画像を用いた色合成画像と比較すると、溶岩流が図の北側に広がっていることがわかります。プナ地熱発電所(PGV)周辺にも溶岩流が迫っていることがわかります。
図3: 2018年5月31日と2018年5月17日の観測データを用いたレイラニ・エステート周辺の強度画像のカラー合成
図3: 2018年5月31日と2018年5月17日の観測データを用いたレイラニ・エステート周辺の強度画像のカラー合成。
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図4は表1②の2018年6月5日の観測データと2017年12月19日のほぼ同時刻の観測データを用いた差分干渉画像です。この解析結果では、今回の噴火・地震に伴う一連の地殻変動が見えています。レイラニ・エステート(Leilani Estates)近郊で最大70 cm程度の衛星に近づく変動(隆起もしくは西向き)、East Rift Zoneでは100 cm程度の衛星から遠ざかる変動(沈降もしくは東向き)、ハレマウマウ火口(Halemaumau)周辺では最大90 cm程度の衛星から遠ざかる変動(沈降もしくは東向き)が見えています。
図4: 2018年6月5日と2017年12月19日の観測データを用いた差分干渉画像
図4: 2018年6月5日と2017年12月19日の観測データを用いた差分干渉画像。
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図5は図4と同じ観測データを用いたMultiple Aperture Interferometry(MAI)画像です。MAIは衛星進行方向の変位量を表し、地表が衛星進行方向と同じ方向に動いた場合は赤色(暖色系)、逆向きに動いた場合には青色(寒色系)に変化したことを意味します。この解析結果から、レイラニ・エステート(Leilani Estates)近郊ではほぼ南北に広がる最大2 m程度の地殻変動、ハレマウマウ火口(Halemaumau)付近では最大1 m程度の南北圧縮の地殻変動があったことがわかりました。
図5: 2018年6月5日と2017年12月19日の観測データを用いたMultiple Aperture Interferometry画像
図5: 2018年6月5日と2017年12月19日の観測データを用いたMultiple Aperture Interferometry画像
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図6には、表1の②6月5日と2017年12月19日の強度画像の比較を示します。噴火前の2017年12月9日の画像と比べると、6月5日の画像においてハレマウマウ火口全体(点線で囲まれた領域)が沈降していることがわかりました。
図6: 2018年6月5日と2017年12月19日の強度画像(HH偏波)の比較
図6: 2018年6月5日と2017年12月19日の強度画像(HH偏波)の比較。点線で囲まれた部分が沈降している領域。
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図7は表1③の2018年6月9日の観測データと5月26日のほぼ同時刻の観測データを用いた差分干渉画像です。この解析結果では、ハレマウマウ火口(Halemaumau)周辺で最大50 cm程度の衛星から遠ざかる変動(沈降もしくは東向き)が見えています。
図7: 2018年6月9日と2018年5月26日の観測データを用いた差分干渉画像
図7: 2018年6月9日と2018年5月26日の観測データを用いた差分干渉画像。
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図8は、赤色に6月9日のHV偏波、緑色に5月26日のHV偏波、青色に5月26日のHH偏波の強度画像を割りあてたレイラニ・エステート(Leilani Estates)周辺のカラー合成画像で、溶岩流が赤色に見える着色になっています。この画像から、画像左下から中央にかけて溶岩が流れたことがわかります。また画像右側の青い部分(矢印の先)には、マグマが海に流入したことで新たな陸地が形成された様子がわかります。
図8: 2018年6月9日と2018年5月26日の観測データを用いたレイラニ・エステート周辺の強度画像のカラー合成
図8: 2018年6月9日と2018年5月26日の観測データを用いたレイラニ・エステート周辺の強度画像のカラー合成。
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JAXAでは今後も「だいち2号」でハワイ島の観測を続けていく予定です。
JAXA EORC