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「だいち2号」による南米チリ南部のカルブコ火山噴火の観測 (2)
概要
2015年4月22日に噴火した南米チリ南部のカルブコ火山について、宇宙航空研究開発機構 (以下、JAXA) は、日本時間2015年4月29日14時35分頃(現地時間1時35分頃)に陸域観測技術衛星「だいち2号」(ALOS-2) 搭載のLバンド合成開口レーダ (PALSAR-2;パルサー2) による観測を行いました。今回の観測では、軌道の関係から噴火前の3月4日の観測時と同じ位置から観測を行うことができ、地殻変動量などの解析が可能となりました。
図1に今回の観測範囲を示します。
図2は今回の観測画像の全体図です。使用した観測モードは高分解能10mモード(2偏波)で、赤にHH偏波、緑にHV偏波、青にHH偏波/HV偏波を割り当てたカラー合成画像です。大まかに、青や黒が水や裸地、緑色が植生、局所的に明るい緑や紫が市街地を表します。
図3左は、図2赤枠のカルブコ火山付近を拡大したものです。比較のために、2015年3月4日に観測された画像を図3右に示します。山頂付近は噴火により地形が変わり、大きな火口が出現していることが分かります。火口周辺の領域(図の円内)で、噴火後の画像が全体的に暗くなっているのは、火口からの噴出物の堆積などにより表面の状態が変化したことを示していると推察されます。また、山頂周辺では、溶岩流ないし火山泥流などが谷に沿って流れたと思われる筋状の跡も多く見られます(図中の矢印)。
図4は、図3と同じ噴火前後のカルブコ火山付近の観測画像を重ねて比較したもので、マウス等の操作により、画像中央に現れるスライダを左右に移動することで、噴火前後の画像を視覚的に比較することができます(対応していないブラウザでは、単純に2つの画像が並べて表示されることがあります)。
図5は、図3と同じ噴火前後の2つのデータを干渉処理(インターフェロメトリ)することにより得られた差分干渉画像で、噴火に伴って起きた地殻変動の大きさを表します。火口の西側では最大10cm程度の地盤の沈降と思われる変動が見られ、噴火活動に伴う地下のマグマの噴出量を見積もる上で重要な情報になると考えられます(図中の矢印(1)周辺)。また、火口の北東側では、干渉性が低下(地表面の状態が大きく変わり、噴火前後のデータ間の類似性が失われたことから、変動量が検出できない状態)しており、地形の変化、火山の噴出物の堆積、噴火に伴う融雪、降灰などが起きていると考えられます(図中の矢印(2)周辺)。