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「だいち2号」(ALOS-2)と「だいち4号」(ALOS-4)による霧島山(新燃岳)の観測結果について

概要

  • 噴火活動が活発化している霧島山(新燃岳)について、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)と先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)による観測および解析を実施。
  • 6月28日の「だいち4号」の観測により、火口北縁周辺で今回の活動に伴う新たな割れ目や噴出物と見られる領域が確認された。
  • 7月4日の「だいち2号」の観測により、火口南東部周辺で新たな割れ目や噴出物と見られる領域が確認され、7月9日の画像でその領域が拡大していることが確認された。

はじめに

 霧島山新燃岳では2025年6月22日(日本時間、以下同じ)から噴火活動が活発になっています。火山活動衛星解析グループ(事務局:気象庁、国土地理院、JAXA)からの要請に基づき、JAXAは「だいち2号」(ALOS-2)と先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)による観測を実施し、データを気象庁、国土地理院などの防災機関に提供しました。図1に今回の観測範囲、表1に観測データの詳細を示します。

図1:「だいち2号」と「だいち4号」による2025年6月28日~7月9日の観測範囲(図中番号は表1と対応)。
図1:「だいち2号」と「だいち4号」による2025年6月28日~7月9日の観測範囲(図中番号は表1と対応)。
表1:「だいち2号」と「だいち4号」による観測一覧
  観測日時(日本時間) 衛星 パス番号 観測モード ビーム番号 軌道・観測方向
(1) 6月28日0時11分 だいち4号 130 Stripmap 3m UW01-06 昇交・右
7月4日0時11分 だいち2号 130 Stripmap 3m UB6 昇交・右
(2) 7月9日0時18分 だいち2号 131 Stripmap 3m UB9 昇交・右
(3) 7月9日12時11分 だいち2号 22 Stripmap 3m UB10 降交・右

JAXAにおける解析例

1) 6月28日の観測結果

 図2左は、2025年5月31日(噴火前)と2025年6月28日(噴火後)の観測データを用いて作成したコヒーレンス画像です。火口の北東部において、東西方向に約650 mの範囲で今回の活動に伴う新たな割れ目や噴出物によると考えられる非干渉領域(数値の低下)が見られます。図2右は同じ観測期間における干渉画像です。この観測では、およそ西側から東方向に電波を照射して観測しており、画像の青→ピンク→黄色の変化は地表が衛星から遠ざかる方向(東向きまたは沈降)、画像の青→黄→ピンク色の変化は地表が衛星に近づく方向(西向きまたは隆起)に動いたことを示します。今回の結果ではノイズレベルを上回る明確な変動は確認できていません。

図2:(左)「だいち4号」によるコヒーレンス画像。2025年5月31日(噴火前)と6月28日(噴火後)の地表面状態の変化による干渉性の低下を示す。
図2:(右)「だいち4」号によるコヒーレンス画像。2025年5月31日(噴火前)と6月28日(噴火後)の地表面状態の変化による干渉性の低下を示す。
図2:(左)「だいち4号」によるコヒーレンス画像。2025年5月31日(噴火前)と6月28日(噴火後)の地表面状態の変化による干渉性の低下を示す。(右)2025年5月31日(噴火前)と6月28日(噴火後)の観測データによる干渉画像。 (クリックで拡大)

2) 7月4日の観測結果

 図3左は、2025年6月28日と2025年7月4日の観測データを用いて作成したコヒーレンス画像です。火口の南東部において、新たな割れ目や噴出物によると考えられる非干渉領域(数値の低下)が拡大したことが分かりました。図3右は同じ観測期間における干渉画像です。この観測は、図2と同じ方向から電波を照射して観測しており,ノイズレベルを上回る明確な変動は確認できていません。

図3:(左)「だいち4号」と「だいち2号」によるコヒーレンス画像。2025年6月28日と7月4日の地表面状態の変化による干渉性の低下を示す。
図3:(右)2025年6月28日と7月4日の観測データによる干渉画像。
図3:(左)「だいち4号」と「だいち2号」によるコヒーレンス画像。2025年6月28日と7月4日の地表面状態の変化による干渉性の低下を示す。(右)2025年6月28日と7月4日の観測データによる干渉画像。(クリックで拡大)

3) 7月9日の観測結果

 図4は2025年4月1日と2025年7月9日0時18分との「だいち2号」の観測データを用いて作成したコヒーレンス画像(左)および干渉画像(右)です。割れ目や噴出物によると考えられる非干渉領域(数値の低下)の領域が拡大していることが分かります。なお、火口付近で10cm程度の、衛星に近づく方向の変位(隆起)が見られますが、これは4月1日から7月9日までの、主に噴火前の期間に蓄積された変位量であることに留意が必要です。同様に図5は2024年10月16日と2025年7月9日12時11分との「だいち2号」のコヒーレンス画像(左)および干渉画像(右)です。

図4:(左)2025年4月1日と2025年7月9日0時18分との「だいち2号」の観測データを用いて作成したコヒーレンス画像
図4:(右)2025年4月1日と2025年7月9日0時18分との「だいち2号」の観測データを用いて作成した干渉画像
図4:2025年4月1日と2025年7月9日0時18分との「だいち2号」の観測データによるコヒーレンス画像(左)および干渉画像(右)。(クリックで拡大)
図5:(左)2024年10月16日と2025年7月9日12時11分との「だいち2号」の観測データを用いて作成したコヒーレンス画像
図5:(右)2025年10月16日と2025年7月9日12時11分との「だいち2号」の観測データを用いて作成した干渉画像
図5:2024年10月16日と2025年7月9日12時11分との「だいち2号」の観測データによるコヒーレンス画像(左)および干渉画像(右)。(クリックで拡大)

4) 後方散乱強度の時間変化について

 図6は左から順に2025年6月28日の「だいち4号」偏波カラー合成画像(赤、緑、青にそれぞれHH、HV、HH偏波の強度を割り当て)、2025年7月4日の「だいち2号」画像(HH偏波のみによる観測のため、HH偏波の強度を白黒画像で表した、以下同様)、2025年7月9日の「だいち2号」画像です。6月28日のデータでは火口の北東部において新たな割れ目や噴出物によると考えられる強度の低下した領域が見られ、7月4日のデータではさらに火口の南東部においても新たな噴火口や噴出物によると見られる強度の低い領域が見られます(図2、図3で見られたものと同様)。図7には2025年5月31日(噴火前)、6月28日、7月4日、7月9日の画像を用いたアニメーションを示します。

  • 図6:2025年6月28日の「だいち4号」強度画像
  • 図6:2025年7月4日の「だいち2号」強度画像
  • 図6:2025年7月9日の「だいち2号」強度画像
図6:左から順に、2025年6月28日(「だいち4号」)、2025年7月4日(「だいち2号」)、2025年7月9日(「だいち2号」)の強度画像。(クリックで拡大)

関連リンク

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