画像ライブラリー
ミャンマー地震の観測結果について
概要
- 2025年3月28日(日本時間)にミャンマー中部マンダレーでマグニチュード7.7の地震が発生し、建物損壊や火災による多数の被害が発生しました。
- JAXAでは、「センチネルアジア」や国内防災機関等からの要請を受け、地震発生直後の3月30日から「だいち2号」による緊急観測を実施し、関係機関へのデータの提供を実施しました。
- 関係機関やJAXAによる解析結果から、マンダレーからヤンゴンまでの約400㎞を超える範囲で地震に伴う顕著な地殻変動が検出されました。
- 「だいち4号」による観測データを用いた解析結果においても同様の地殻変動が検出されました。
- 【4月10日追記】2025年4月9日の観測結果および3次元解析結果を追加しました。
はじめに
2025年3月28日15時20分頃(日本時間、以下同じ)に、ミャンマー中部マンダレー周辺を震源とするマグニチュード7.7(USGS報告)の大きな地震が発生しました。JAXAは「センチネルアジア」や国内防災機関等からの要請に基づき、「だいち2号」(ALOS-2)搭載の合成開口レーダ「PALSAR-2」による緊急観測を行い、データを関係機関に提供しました。また、「だいち4号」(ALOS-4)搭載の合成開口レーダ「PALSAR-3」による観測データを用いた解析も実施しました。図1に今回の観測範囲、表1に観測データの詳細を示します。

観測日時(日本時間) | 衛星 | パス番号 | 観測モード | ビーム番号 | 軌道・観測方向 | |
---|---|---|---|---|---|---|
(1) | 3月29日14時34分 | だいち4号 | 42 | Stripmap 10m | 01_05-06 | 降交・右 |
(2) | 3月30日14時27分 | だいち2号 | 41 | ScanSAR | W2 | 降交・右 |
(3) | 4月9日2時42分 | だいち2号 | 152 | ScanSAR | W2 | 昇交・右 |
JAXAにおける解析例
1) 3月29日の観測結果
図2と図3は、2022年6月3日(地震前:ALOS-2により画像西半分を撮像)と2024年4月19日(地震前:ALOS-2により画像東半分を撮像)、2025年3月29日(地震後:ALOS-4により画像全体を撮像)の観測データを用いて、ピクセルオフセット法により作成した地殻変動図です。この観測では、およそ東側から西方向に電波を照射した観測が行われました。
図2は衛星進行方向の変動を示し、赤色(暖色系)の変化は衛星の進行方向(南向き)の変動、青色(寒色系)の変化は衛星の進行方向に対して逆向き(北向き)の変動を示します。図3は衛星視線方向の変動を示し、赤色(暖色系)の変化は衛星から遠ざかる方向(西向きまたは沈降)の変動、青色(寒色系)の変化は衛星に近づく方向(東向きまたは隆起)の変動を示します。マンダレー周辺を南北に縦断するザガイン断層を挟んで最大6 m程度の変動が検出されました。

2) 3月30日の観測結果
図4と図5は、2025年2月16日(地震前)と2025年3月30日(地震後)の観測データを用いてピクセルオフセット法により作成した地殻変動図です。この観測では、およそ東側から西方向に電波を照射した観測が行われました。また、ScanSARモードによりザガイン断層を含む広範囲が観測されました。
図4は、衛星進行方向の変動を示し、赤色(暖色系)の変化は衛星の進行方向(南向き)の変動、青色(寒色系)の変化は衛星の進行方向に対して逆方向(北向き)の変動を示します。図5は衛星視線方向の変動を示し、赤色(暖色系)の変化は衛星から遠ざかる方向(西向きまたは沈降)の変動、青色(寒色系)の変化は衛星に近づく方向(東向きまたは隆起)の変動を示します。広域観測により、ザガイン断層を挟んだ地殻変動が約400㎞を超える範囲で発生したことが分かりました。
3) 4月9日の観測結果
図6と図7は、2025年2月11日(地震前)と2025年4月9日(地震後)の観測データを用いてピクセルオフセット法により作成した地殻変動図です。この観測では、およそ西側から東方向に電波を照射した観測が行われました。
図6は、衛星進行方向の変動を示し、赤色(暖色系)の変化は衛星の進行方向(北向き)の変動、青色(寒色系)の変化は衛星の進行方向に対して逆方向(南向き)の変動を示します。図7は衛星視線方向の変動を示し、赤色(暖色系)の変化は衛星から遠ざかる方向(東向きまたは沈降)の変動、青色(寒色系)の変化は衛星に近づく方向(西向きまたは隆起)の変動を示します。
4) 3次元解析結果
3月30日観測ペア(図4・5)と4月9日観測ペア(図6・7)から得られた4方向の地殻変動を用いて、東西・南北・上下の3次元変動を推定しました。図8は推定された南北方向の地殻変動です。南北を縦断するザガイン断層を挟んで、断層西側は北向き、断層東側は南向きの地殻変動が検出されました。
関係機関における解析例
JAXAでは引き続きこの地域の観測を継続する予定です。