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陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)によるアンデス山脈の氷河崩落被害の経過観測

2010年4月11日、アンデス山脈の氷河の一部が湖に崩落し、高さ23mの津波が発生しました。報道によれば、湖に落ちた氷塊もしくは岩石の大きさは全長500m、幅200mほどの巨大なものということです。これにより、湖水が溢れ下流の町に洪水被害を及ぼしました。宇宙航空研究開発機構(JAXA)ではその後の被災地の状況把握を目的として、2010年5月25日0時35分頃(日本時間)に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載の高性能可視近赤外放射計2型(アブニール・ツー)*1により現地の観測を実施しました。

図1は今回観測した画像全体の様子を示したものです。氷河が崩落した湖はワスカラン国立公園内にあり、アンカシュ州ワラスから北に約36kmに位置しています。
図1: 今回観測した画像全体
図1: 今回観測した画像全体
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取得日時: 2010年5月25日0時35分頃(日本時間) センサ: AVNIR-2(アブニール・ツー) ポインティング角度: 0°、黄枠: 図2の範囲

図2は氷河崩落により水があふれた湖と、その下流にあるCarhuazという町の付近を拡大したものです。画像の右側の白い部分は一部雲もありますが、大部分は雪氷です。この雪氷のある山脈はワスカラン国立公園内です。
図2: 氷河崩落により水があふれた湖と下流の町Carhuaz付近の拡大(それぞれ約18km四方) 左:氷河崩落後(2010年5月25日), 中央:氷河崩落後(2010年4月16日), 右:氷河崩落前(2010年4月9日)
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図3は氷河崩落により水があふれた湖を拡大したものです。4月16日(洪水発生から5日後)と比較すると、5月25日の画像では湖の水がたまり始めていることが分かります。したがって、今回の洪水では湖末端のダムは決壊しておらず、越流によって発生したと考えられます。また、氷河湖上流の斜面に見えていた崩落した形跡が見えなくなっていることから4月16日以降に降雪があったと考えられます。4月9日(洪水発生前)と比較すると、ダム湖の水位は若干低いようです。
図3: 氷河が崩落したと考えられる湖の拡大(それぞれ約6km四方)
図3: 氷河が崩落したと考えられる湖の拡大(それぞれ約6km四方) 左:氷河崩落後(2010年5月25日), 中央:氷河崩落後(2010年4月16日), 右:氷河崩落前(2010年4月9日)
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JAXAでは今後も当該地域を継続して観測する予定です。

*1: 高性能可視近赤外放射計2型(アブニール・ツー):

青域から近赤外域の電磁波を4つのバンドで観測することができる光学センサで、衛星直下を観測の際には幅70kmの範囲を地上10mで識別できる能力があります。また、東西44度まで観測範囲を変更することができるポインティング機能を有しています。今回の画像は0度で取得しました。

JAXA EORC