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東南アジア域高解像度土地利用土地被覆図【2023年】
(バージョン25.09)
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1. はじめに
宇宙航空研究開発機構 (JAXA) 地球観測研究センター (EORC) は, 人工衛星で観測されたデータを活用して, 地域や国レベルを対象とした高解像度の土地利用土地被覆図を作成しています。これらは生物多様性評価, 自然災害対策, 都市計画等, 地域・国土の保全のための基盤情報としてご活用頂くことを目的としています。
本プロダクトは2023年の東南アジア域 (SEA) の状況を反映した高解像度土地利用土地被覆図バージョン25.09 (以下, 2023SEA_v25.09 (*1) ) です。使用衛星およびセンサは欧州のSentinel-2/MSIおよび日本のALOS-2/PALSAR-2 (合成開口レーダ) です。
分類カテゴリについては有識者へのヒアリングを参考に現地の農業・林業の状況を反映できると思われる15カテゴリの構成としています。具体的には一期水田 (Single-crop Paddy Field), 多期水田 (Multi-crop Paddy Field) , ゴムノキプランテーション (Rubber Tree Plantation) やアブラヤシプランテーション (Oil Palm Tree Plantation) を設定することで東南アジア特有の土地利用の実態をより精緻に表現できるようにしました。独自に取得した検証点を用いて混同行列を作成した結果,2023SEA_v25.09は15カテゴリで94.59 [%] の全体精度を達成しました。
(*1): 「2023SEA_v25.09」という略称は以下のフォーマットにて定義されます。
フォーマット:YYYYRRR_vyy.mm
- YYYY: 観測データ年を示します。
- RRR: 国や地域を示します。国の場合はISO 3166-1 alpha-3に準拠した3文字のコードを採用しています。
- yy: リリース年下2桁を示します。1桁の場合はゼロ埋めをしています。
- mm: リリース月2桁を示します。1桁の場合はゼロ埋めをしています。
2. 使用したデータ
- Sentinel-2/MSI Level-2A (L2A) 地表面反射率データ
- ALOS-2/PALSAR-2 (FBD, WBD)
- ALOS PRISM Digital Surface Model (AW3D)
- AW3Dから求めた傾斜のラスターマップ
- 緯度経度情報
- 独自に収集・判読した教師情報
3. 分類方法
3.1 前処理
- Sentinel-2/MSIに対して, 1年を6分割して2ヵ月毎 (1-2月, 3-4月, 5-6月, 7-8月, 9-10月, 11-12月) の合成処理(コンポジット処理)を実施しました。
- コンポジット処理:雲マスクを実施した後に当年の2ヵ月の重みを3, 前年の2ヵ月の重みを2, 当年2ヵ月の前後1ヵ月の重みを1として中央値コンポジット処理をしました。
- ALOS-2/PALSAR-2の中でFBD (高空間分解能, 2偏波) は1時期を, WBD (中空間分解能, 2偏波, 高時系列) については6時期で整備しました。
- 特徴空間の構築:
Sentinel-2/MSI バンド B2, B3, B4, B5, B6, B7, B8, B8a, B11, B12; NDVI, GRVI, NDWI1, NDWI2, GSIの時系列データ
ALOS-2/PALSAR-2 FBD HH偏波強度, HV偏波強度, 局所入射角
ALOS-2/PALSAR-2 WBD HH偏波強度, HV偏波強度, 局所入射角
補助データ (AW3D DSM, Slope, 緯度経度情報) の非時系列データ - 平均と標準偏差を用いた標準化を特徴量毎に適用しました。
3.2 分類
- 3.1 に示した特徴量を使用し, SACLASS2 (*2) の発展形で分類を実施しました。
(*2): マルチスペクトル・時系列特徴空間でのパターン認識に特化したCNNアルゴリズムおよびNNアルゴリズム。
3.3 後処理
- ガウシアンフィルタの適用
- 海マスクの適用
4. データ形式
対象期間 | 2023年 |
---|---|
座標系 | 等緯度経度座標系 (WGS84) |
格納単位 | 緯度経度各1度の範囲をカバーするグリッドタイル, 12,000ピクセル×12,000ピクセル |
メッシュサイズ | (1/12,000) 度 × (1/12,000) 度 (およそ10m×10mに対応) |
ディレクトリ構造 |
2023SEA_v25.09 | --
| --
| -- ... | -- README_2023SEA_v25.09.txt | -- 2023SEA_v25.09_overview_legend.png |
ファイル命名規約 |
フォーマット: LC_XxxYyyy.tif
たとえばLC_N13E100.tifの場合, 北緯13度から14度, 東経100度から101度をカバーするタイルです。 |
格納形式 | GeoTIFF形式 |
ファイル数 | 619タイル |
各画素の値は分類カテゴリのID番号であり, 下記の通りです。図1に定義を示します。:
- #1: 水域 (Water Bodies)
- #2: 人工構造物 (Built-up)
- #3: ソーラパネル (Solar Panel)
- #4: 畑地 (Cropland)
- #5: 一期水田 (Single-crop Paddy Field)
- #6: 多期水田 (Multi-crop Paddy Field)
- #7: 湿地 (Herbaceous Wetland)
- #8: 草地 (Grassland)
- #9: 落葉広葉樹林 (DBF: Deciduous Broad-leaved Forest)
- #10: 常緑広葉樹林 (EBF: Evergreen Broad-leaved Forest)
- #11: 常緑針葉樹林 (ENF: Evergreen Needle-leaved Forest)
- #12: ゴムノキプランテーション (Rubber Tree Plantation)
- #13: アブラヤシプランテーション (Oil Palm Tree Plantation)
- #14: マングローブ林 (Mangrove Forest)
- #15: 裸地 (Bare)
表1: 分類カテゴリとカラーコード,定義の一覧

5. 精度検証
教師情報とは独立の検証情報を用いて, 15カテゴリの混同行列による精度検証を実施しました。5,688点の検証情報から, 全体精度 94.59 [%], κ係数0.94を得ました。
混同行列の詳細を表2に示します。
精度検証については, 検証点がランダムサンプリングでない理由等で誤差が生じることをご留意ください。
表2: コンフュージョンマトリクス (2023SEA_v25.09)

図3に2023SEA_v25.09の全域図を示します。

(西はバングラデシュ、東はフィリピン)
図4, 図5に他プロダクトとの比較図を紹介します。

ベトナム・カンボジア国境付近 (Lat/Lon : 14.0226, 107.366549), 各色は図中参照.
2023SEA_v25.09は森林内のカテゴリ区別が出来ているほか,図中赤紫で表示されているRubber Tree Plantation が明確に区別出来ていることが分かる。

カンボジア域 (Lat/Lon : 10.960103, 103.902219)
2023SEA_v25.09は図中薄紫色で示すPalm tree Plantationが明確に区別出来ているほか,プランテーション間の境界が判読できる。
6. 参照
- 平山颯太, 田殿武雄, 水上陽誠, 大木真人, 奈佐原 (西田) 顕郎, 伊藤駿, 平出尚義, 今村功一, 佐竹崚, 大串文美 (2023): 2022年度版日本域高解像度土地利用土地被覆図の作成に関する事前検討, 日本リモートセンシング学会第75回学術講演会論文集, pp. 25-28
- 平山颯太, 田殿武雄, 大木真人, 水上陽誠, 奈佐原 (西田) 顕郎, 今村功一, 平出尚義, 大串文美, 道津正徳, 山之口勤 (2022) : JAXA高解像度土地利用土地被覆図日本域21.11版 (HRLULC-Japan v21.11) の作成. 日本リモートセンシング学会誌, 42 (3) , 199-216
- 平出尚義, 佐竹崚, 今村功一, 大串文美, 平山颯太, 田殿武雄, 水上陽誠, 伊藤駿, 奈佐原 (西田) 顕郎 (2025): 時系列整合性を考慮した2020・2022・2024年におけるJAXA日本域高解像度土地利用土地被覆図の作成, 日本リモートセンシング学会第78回学術講演会論文集, pp. 15-18
- Van Thinh Truong, Sota Hirayama, Doung Cao Phan, Thanh Tung Hoang, Takeo Tadono, Kenlo Nishida Nasahara (2024): JAXA’s new high-resolution land use land cover map for Vietnam using a time-feature convolutional neural network, Sci Rep 14, 3926 (2024).
- Brown, C.F. et al. Dynamic World, Near real-time global 10 m land use land cover mapping. Sci Data 9, 251 (2022).
- Zanaga et al., ESA WorldCover 10 m 2021 v200, Zenodo (2022).