防災・災害

干渉SAR画像の見かたについて

干渉SAR解析について

「だいち(ALOS)」搭載PALSARや「だいち2号(ALOS-2)」搭載PALSAR-2などのSAR(合成開口レーダ)は、2回の観測データの差をとることにより地表の変位(地面がどれだけ動いたか)を測定できます。このような解析方法を干渉(かんしょう)SAR解析(またはインターフェロメトリ、InSAR)と呼びます。

地震の前後に取得された2回の観測データで干渉SAR解析を行うと、地震に伴う地殻変動を面的に可視化でき、断層の位置や動きの推定、今後の地震の危険性の予測などに役立ちます(図1)。火山活動においても、地表の変位から地下のマグマだまりの位置や動態を推定することができ、今後の火山活動の予測に役立てることができます(図2)。そのほか、地すべりや地盤沈下、極圏の氷河の移動などによる変位が測定された事例もあります。

なお、干渉SAR解析では、観測条件や解析方法によっては、地表の変位ではなく地形の形状そのもの(標高データ;DEM)が得られる場合もあります。本ページで主に説明するのは、地表の変位を得る解析方法で、これを特に差分干渉SAR解析(DInSAR)と呼ぶ場合もあります。

2007年ソロモン諸島地震のPALSAR干渉画像
図1: (左) 2007年ソロモン諸島地震のPALSAR干渉画像。この解析結果から南側に未破壊領域(地震の起こりうる地域)が残っていると推定された。 (右) 2010年ソロモン諸島地震のPALSAR干渉画像。推定されていた地域で実際に地震が発生した。
2011年霧島山(新燃岳)噴火前後のPALSAR干渉画像
図2: 2011年霧島山(新燃岳)噴火前後のPALSAR干渉画像。この解析結果から、この噴火に関与したマグマ溜りが火口より西約5kmの地下にあり、噴火によってその体積が減少し圧力が低下したことが推定された。

干渉画像の見かたと解釈

干渉SAR解析(差分干渉SAR解析)による解析結果は、一般的に、変動を虹色の縞で示した干渉画像(インターフェログラム)で表されます。

SARは電波を地表に放射しその反射波からデータを得る観測センサで、電波は波の性質(山→谷→山を一定の周期で繰り返す。この1周期内での位置を位相と呼び、1周期で元の波形に戻ることから0°~360°の角度で表す)を持つことから、2回の観測で地表の変位があると、観測される波の位置の差(位相差)が生じます。この差を干渉画像では、地表が衛星に近づく場合には緑→赤→青→緑、衛星から遠ざかる場合には、緑→青→赤→緑の色で表します。地表の変位が大きく、電波の往復経路が波長(山と山の間隔)と同じだけ変化してしまった場合、波形が再び一致する(位相差が360° =0°に戻る)ため、干渉画像では再び緑色に戻ります(図3)。このため、干渉画像では変位が大きくなるにつれて同じ色の順番が繰り返し現れます。

干渉画像で見られる色と地表の変位の関係を示した模式図
図3: 干渉画像で見られる色と地表の変位の関係を示した模式図。色は2回の観測での位相差を表し、地表が衛星に近づくほど緑→赤→青→緑、衛星から遠ざかるほど、緑→青→赤→緑の順に色が表れる。

PALSAR、PALSAR-2はLバンドと呼ばれる1.2GHz帯のマイクロ波を観測に用いており、その波長は約24cmです。電波の往復を考慮すると、約12cm地面が変位するごとに電波の往復経路は波長1つ分変化し(位相差が0に戻る)、干渉画像上では同じ色に戻ります。よって変位量が0cm、±12cm、±24cm、±36cm…のところはいずれも同じ色で表され、色と変位量が一対一には対応しません。そのため、干渉画像を解釈する際には、色の空間的な分布を観察します。変位が無いと考えられる場所(変動域から遠く離れた場所)の色(必ずしも緑色とは限りません)を基準(変位が0)とし、そこから色が1周して最初に基準の色に戻ったところを1周期(約12cm)の変位とします。衛星に近づく方向の変位か遠ざかる方向の変位かは、このときの色の順番が緑→赤→青→緑か、緑→青→赤→緑かで区別できます。同じ色の繰り返しがさらに連続して現れた場合には順に2周期(約24cm)、3周期(約36cm)…の変位と解釈します。変位量が大きくなるごとに同じ色が周期的に現れるので、干渉画像に現れる縞は、地表の変位量を表す等高線のようなものであるという見方もできます。

例として、図4の2008年岩手宮城内陸地震の例では、①震源の東側から震源に向かう向きに緑→赤→青→緑→…と色が変化しており、震源に近づくほど、衛星に近づく方向の変位が大きくなっていることが分かります。震源の手前付近までで色が2回ほど繰り返すことから、震源の東側で観測できた最も大きい変位は2周期(約24cm)と解釈できます。逆に②西側では震源に近づくほど、衛星から遠ざかる方向に変位が大きくなり、観測できた最大の変位は8周期(約94cm)です。以上の結果から、この地震が断層を境に逆向きの地殻変動が現れる活断層型の地震であることが分かります。動画によるイメージ図はこちら

図5のハワイの火山観測の例では、変位量が少ないため色が繰り返して現れることはありませんが、マグマだまりの周辺から中心部に向かって緑→赤→青の順に色が変化しており、衛星に近づく方向に同心円状の変位が起きていることが分かります。これは、地下のマグマだまりの膨張による地表の隆起と考えられます。動画によるイメージ図はこちら

干渉画像は位相差を色で表したものであり、位相に対する色の付け方は解析に使用するソフトウェアや解析者の色の付け方によって異なる場合もありますので、図中のカラーバーを参照してください。
海外衛星等は観測に使用する電波の波長が異なる(Cバンド、Xバンドなど)ため、1周期あたりの変位量は異なります。また、PALSAR-2では観測モードによっても波長にわずかな違いがあります。
位相の変化をつなげて1つのカラーバーで変位量の絶対値を見られるようにする解析方法もあり、位相アンラッピングと呼ばれます。ただし、アンラッピングでは変位量が正しく算出されない可能性や、全体の変位量を1つのカラーバーで表すことで局所的な変動を見落とす可能性もあることから、特に初期的な解析ではアンラッピングしない画像を示すことが多くあります。

干渉画像で見られる色と地表の変位の関係を示した模式図
図4: 2008年岩手・宮城内陸地震のPALSAR干渉画像と、その解釈。震源の東側では衛星に近づく方向の地殻変動、西側では衛星から遠ざかる方向の地殻変動が起きていることが分かる。動画によるイメージ図はこちら
干渉画像で見られる色と地表の変位の関係を示した模式図
図5: 2006年ハワイ島のPALSAR干渉画像と、その解釈。干渉画像の白い円内の領域で、地下のマグマだまりの膨張によるとみられる地表の隆起が起きていることが分かる。動画によるイメージ図はこちら

干渉画像の制約

1. 変位の向き

SARは、電波の往復時間の違いによって地表の異なる場所からの反射を見分け、二次元的な画像を得るという原理上、直下を観測することはできず、必ず斜め下方向を観測します。一度の干渉SAR解析で得られるのはあくまでこの衛星と観測点の間の斜め方向の距離の変化(変位量の衛星視線方向の成分)のみであり、それが地表のどのような向きの変位によるものかは原理的には分かりません。例えば干渉画像で衛星に近づく方向の変位が認められたとしても、地盤が横にずれて衛星に近づいたことによるものか、地盤が上に隆起したことにより衛星との距離が近づいたことによるものかは判別できません。 このため、画像内に地上のGPSの計測点がある場合にはそれと比較したり、火山のマグマだまりや地震の断層のすべり方向など地球科学の知見によって変位の方向がある程度推定できる場合はそれを参考に解釈したりすることができます。

また、単一の干渉画像だけではなく、別の方向から観測した干渉画像を組み合わせて用いると、3次元的な変位を知ることができます。衛星は地球を南北に周回するため、衛星が北向きに飛行する昇交軌道(Ascending)と南向きに飛行する降交軌道(Descending)で、2通りの観測方向があります。また、PALSAR-2では左右の観測を切り替えできるため(PALSARでは右側のみ)、これによっても異なる方向の観測データが得られます。このように、同じ場所の干渉画像でも、どの方向から観測したデータであるかによって見えやすい変位の向きが異なり、得られる変位量も異なったものになります。

2. 変位量の精度

干渉画像から得られる地表の変位量にはさまざまな誤差が含まれます。その誤差の大きさは観測条件や処理方法によって異なりますが、一般的にPALSAR、PALSAR-2等のLバンドSARの単一の干渉画像で得られる地表の変位量の精度は数cmと考えられます。

衛星の軌道情報による誤差は、近年の衛星(ALOS以降など)では軌道データの精度が高いことから影響は軽減されていますが、軌道データには準リアルタイムで提供される速報値や、遅れて提供される確定値まで精度が2から3段階あり、どれを用いるかによって同じ観測データでも処理結果が異なる可能性があります。軌道の誤差は、干渉画像上では画像全体にほぼ均一に周期的な縞となって現れ、これを画像処理により平坦にして軌道誤差を低減することもあります。

電離層の擾乱はLバンドのような長い波長のSARで特に影響が大きい誤差要因で、干渉画像上ではスケールが10km~数十km程度、変位量が数十cm~1m程度の、不規則なムラのようなパターンとなって現れます。時刻や地域によって発生頻度の違いがあり補正も困難ですが、地表の変動と比べスケールが大きい場合などは、区別して解釈できる場合もあります(図6)。

 2014年8月28日と9月11日のPALSAR-2データによるアイスランドの干渉画像
図6: 2014年8月28日と9月11日のPALSAR-2データによるアイスランドの干渉画像。北側の不規則なムラのようなパターンは電離層の影響と考えられる。南側の氷河域では、氷河の移動と考えられる細かい縞が見られる。縞模様が見られずノイズになっている部分は変動が大きいために干渉しなかったと考えられる。 (クリックで拡大画像へ)

対流圏の水蒸気遅延も大きな誤差要因です。水蒸気の影響は2つのメカニズムが考えられ、水蒸気の鉛直分布に由来する誤差は地形(標高)に相関があり、標高が高いほど変位が大きくなるという特徴があります。一方で水蒸気の水平方向の分布による誤差は局所的な気象条件の違いによるもので、干渉画像上では不規則なムラとなって現れます。日本など水蒸気いずれも変位量はLバンドで数cm~10cm程度となります(図7)。

干渉SAR処理(差分干渉SAR)においては、標高の違いに由来する縞の除去で標高データ(DEM)を使用するため、使用したDEMの誤差も干渉画像の精度に影響します。ただしこの誤差は2回の観測データを取得した際の軌道が同一に近いほど影響が少なくなる性質があり、近年の衛星(ALOS-2等)では軌道の回帰精度が高いため、大きな問題にはならないと考えられます。 SARデータの干渉処理は現在も世界で活発に研究が行われており、これまでに述べてきた電離層や水蒸気による誤差も補正手法の開発が進められています。

2014年8月18日と9月27日のPALSAR-2データによる御嶽山付近の干渉画像
図7: 2014年8月18日と9月27日のPALSAR-2データによる御嶽山付近の干渉画像。枠内の中央付近の御嶽山火口付近に局所的に赤い変動域があるのは、噴火に伴う地形の変化と考えられる。一方、画像全体に見られる、標高が高いと青く、低いと赤くなるような地形に相関するパターンは、水蒸気の影響と考えられる。

3. 干渉性の低下

干渉画像中に、様々な色が混ざったノイズのように見える場所が見られることがあります。これは2回の観測画像が干渉していない領域で、このようなところでは虹色のパターンが明瞭に見えないため、変位量を知ることが難しくなります。

観測データが干渉する(位相の差がとれる)のは2回の観測で波形が十分に類似している場合で、これは地表の状態がほぼ変わらずに一様に平行移動するような変位に相当し、逆に2回の観測間で表面の状態が著しく変わった場合には干渉しなくなります(位相差がランダムになる)。具体的なケースとしては、積雪/融雪、降灰、山体の崩壊などによる地形の著しい変化、植生の変化、農作物の生育や水張りなどの農業活動、森林伐採や人工構造物の建設などの人為的な変化が挙げられます。また、水面は常に形態が変化するため干渉しません。

また、変動が大きすぎる領域では干渉しない可能性があります。図4の岩手宮城地震の震源の近傍や、図6の氷河の流動域で、縞模様が見えずノイズになっている箇所がこれに該当すると考えられます。

干渉SAR処理において、干渉している度合を干渉性(コヒーレンス)とも呼びます。波長の長いLバンドSARは透過性が高いため電波が森林の枝葉などを一部透過して地表まで届いていると考えられ、一般的に干渉性は高いと言えます。森林の密な日本の山岳地などでも、LバンドSARであれば地表の変位を広域に測定することができます(積雪時期などを除く)。

干渉SAR解析の方法

1. 干渉可能なペア

干渉SAR解析を行うには、干渉可能なペアである観測データが必要です。干渉可能なペアは、同じ軌道(同じパス番号)で取得されたデータで、観測範囲が同じであり、観測に用いた電波の帯域も同じである必要があります。ただし、観測範囲や帯域は完全に一致していなくても一部が重複(帯域の一部が重複しているなど)していれば干渉可能であり、このことから、異なる観測モード同士の干渉も原理的には可能です。同じパスのデータでも垂直基線長(軌道間の距離の、衛星視線方向に直交する成分)が大きいほど干渉性が低下し、ある一定の基線長(臨界基線長)を超えると全く干渉しないことが理論的に導かれます。異なるパスのデータや、軌道の異なる衛星のデータ(ALOSとALOS-2など)は一般に干渉しません。また、2回の観測で時期が大きく離れると干渉性が低下します。PALSAR、PALSAR-2の広域観測モードにおいてはバーストの同期が十分でないと干渉しない場合があります。

公開されているALOS-2/PALSAR-2のサンプルプロダクトにも、干渉可能なペアがあります。干渉処理には複素データ(SLC;PALSAR、PALSAR-2では標準プロダクトL1.1として提供されている)が必要で、強度画像(PALSAR、PALSAR-2ではL1.5、L2.1など)は複素情報(位相の情報)を持たないため、干渉処理を行うことができません。

2. 干渉SAR解析が可能なソフトウェア

干渉SAR解析ができるソフトウェアは商用のものからフリーソフトウェアまで多く存在します。商用ソフトウェアの対応状況については各ソフトウェアの配布事業者にご確認ください。フリーソフトウェアでPALSAR、PALSAR-2の干渉SAR解析が可能なものとしては、デルフト工科大学のDoris InSAR Processor、カリフォルニア大学サンディエゴ校のGMTSARなどがあります(ただしJAXAはこれらのソフトウェアでPALSAR、PALSAR-2のデータの完全な処理ができることを保証するものではありません)。JAXAが発表する干渉SAR解析結果では、JAXAが開発したソフトウェアであるSIGMA-SARが主に用いられています。

これらのソフトウェアの導入方法、使用方法については各ソフトウェアのWebサイトやマニュアルをご参照ください。JAXAではSIGMA-SAR利用の講習会などを実施しています。

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