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「だいち2号」による南極半島Larsen-C棚氷で発生した大規模な氷山分離の観測結果

概要

  • 2017年7月12日、南極半島にあるLarsen-C棚氷から巨大な氷山が分離した。
  • JAXAは7月21日に「だいち2号」の広域観測モードによる観測を行い、分離した氷山の全体像を捉えることに成功した。
  • 2017年8月4日の「だいち2号」観測画像から、氷山が海氷によって押し戻されている様子を確認した。
  • 2017年9月1日の「だいち2号」観測画像から、氷山が再び棚氷から離れ始めている様子を確認した。
  • 2017年9月29日の「だいち2号」観測画像から、氷山と棚氷の間が20 km以上も離れている様子を確認した。
  • 「だいち2号」の特性を生かし、このような雪氷変動を継続的にモニターすることで、地球温暖化との関係や極域環境変動の理解に貢献することができます。
Larsen(ラーセン)棚氷は南極大陸の中でも有数の規模を誇る棚氷で、Larsen-Aは1995年、Larsen-Bは2002年にそれぞれ崩壊しています。 Larsen棚氷は現在の西南極の質量損失とそれがおよぼす海水準変動(注1)に影響するため、世界中の雪氷研究者が注目しているところです。 Larsen-Cでは、2017年に入りクラックの進行が加速し、同7月12日に大規模な氷山として分離しました。 この分離した氷山は重さがおよそ1兆トンと言われ、面積が約5,800 km2もあり、三重県とほぼ同じ大きさです。 JAXAは2017年7月21日に「だいち2号」(ALOS-2)搭載のLバンド合成開口レーダ、パルサー2(PALSAR-2)の広域観測モード(観測幅350 km)を用いて、分離した氷山の全体像を観測しました。
図1:2017年7月21日の「だいち2号」の観測範囲

図1:2017年7月21日の「だいち2号」の観測範囲

図2: 「だいち2号」による2017年7月21日(左)と2016年8月19日(右)の観測画像。中央の枠線は図3の表示範囲を示す。
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図2は「だいち2号」の広域観測モードによって観測された画像です。 赤色と緑色にHV偏波、青色にHH偏波の画像を割り当てています。 図の右側に暗く写っているのが海氷で、左側に白く見えるのが棚氷です。 図の中央にある枠線で囲まれた部分が今回氷山として分離した部分です。 2016年8月19日の画像では、亀裂が始まっている南側からおよそ100 km程度(図2右の矢印の場所)までしか割れ目がありませんが、 2017年7月21日の画像では亀裂が全体に入っており、棚氷から完全に分離していることがわかります(図2左)。

図3: 分離した氷山の拡大図。左は2017年7月21日、右は2016年8月19日の観測画像。
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図3は、図2の枠線範囲を拡大したものです。 棚氷上の亀裂がより鮮明に見えます。今回、幅約50 km、長さ約155 kmに渡って棚氷から氷山が分離したことがわかりました。 この大規模な氷山の分離によって、内陸側の棚氷の流動速度が加速し、さらなる氷山の分離が発生する可能性があります。 天候や昼夜の影響を受けずに広範囲に画像を取得できる「だいち2号」の特性を生かし、このような南極の大規模な雪氷変動を継続的に観測することで、地球規模の温暖化との関係や極域環境変動の理解に貢献することができます。 JAXAでは今後も「だいち2号」による当該地域への観測を継続していく予定です。

注1: 海水面の高さが変化すること。近年の地球温暖化による海水の膨張や、氷河の融解水の流入増加による海水面の上昇が懸念されている。

2017年8月9日追記

2017年8月4日観測図 2017年7月21日観測図

図4: 「だいち2号」による2017年8月4日と2017年7月21日の観測画像の比較。
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マウス等の操作により、画像中央に現れるスライダを左右に移動することで、画像間の変化を視覚的に比較することができます(対応していないブラウザでは、単純に2つの画像が並べて表示されることがあります)。
* 対応ブラウザ: IE9 およびそれ以降、Safari5.1 およびそれ以降、Chrome、Firefox、Opera

図4は2017年8月4日に観測された画像と2017年7月21日の画像です。 7月21日の画像で明瞭に確認された棚氷と分離した氷山との隙間が小さくなっていることがわかりました。 これは、画像の右側にある海氷が棚氷の方向へ動いており、それによって分離した氷山が棚氷方向に押されているためであると考えられます。 画像中に見えているいくつかの小さな氷山も海氷と同様に動いていることがわかります(赤矢印)。

参考URL:

2017年9月13日追記

図5: 「だいち2号」による2016年8月19日、2017年7月21日、2017年8月4日、2017年9月1日の観測画像を合わせたアニメーション動画。

図5は2017年9月1日に観測された画像とその前3時期の観測画像から生成したアニメーション動画です。 9月1日に観測した画像から、分離した氷山と棚氷との隙間が7月21日の画像よりも大きくなっていることがわかりました。 8月4日の画像と7月21日の画像の比較 (図4)では、海氷が棚氷の方向へ動いており、それによって分離した氷山が棚氷方向に押されていましたが、 9月1日に観測された画像を見ると、南側の棚氷と分離した氷山の隙間に小さな氷山や海氷が入りこんでいて、これらが棚氷を押している可能性があります。 この分離した氷山は今後棚氷からより離れていくことが予想されるため、今後もだいち2号で観測を続けていく予定です。

2017年10月12日追記

図6: 「だいち2号」による2017年9月29日(左)と2017年9月1日(右)の観測画像。
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図6は2017年9月29日に観測された画像と2017年9月1日の画像です。 9月29日の画像では、棚氷と分離した氷山との隙間が20 km以上も広がったことがわかりました(青矢印)。 これは氷山周辺の海氷が季節の進行と共に薄くなっており(黄矢印)、海氷が棚氷方向へ押す力が弱くなっていることが考えられます。 また、分離した大規模な氷山から一部小さい氷山が分離したことも確認されました(赤矢印)。 この大規模な氷山は今後沖合に向かって流れていくことが予想されます。JAXAでは今後もだいち2号で観測を続けていく予定です。

© METI, JAXA EORC