防災・災害

「レーダーサットツー」(RADARSAT-2)による平成23年(2011年)台風12号豪雨災害の観測結果

2011年9月2日から4日にかけて大型で強い台風12号の通過に伴い、四国、近畿、中国、東海地方を中心に広範囲で記録的な大雨が続き、土砂崩れ、堤防の決壊や床上・床下浸水などが起こり、各地で被害がもたらされています。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、2011年9月7日5時48分頃(日本時間)に観測、国際災害チャータ*1を通じてカナダ宇宙庁(CSA)の協力により提供された、「レーダーサットツー」(RADARSAT-2)*2衛星のデータの解析を実施しました。

図1は今回観測された範囲を示したもので、赤枠がRADARSAT-2での観測範囲を示しています。
図1: RADARSAT-2観測地域(2011年9月7日観測)
図1: RADARSAT-2観測地域(2011年9月7日観測)
図2は、RADARSAT-2で、災害後の2011年9月7日5時48分頃(日本時間)に観測された画像です。RADARSAT-2を使った過去画像との比較解析の結果、変化があったと思われる箇所を図2内の黄枠部分で示しました。黄枠部分を拡大した画像を図3から図5に示します。
図2: RADARSAT-2観測による奈良県画像(2011年9月7日観測)

図2: RADARSAT-2観測による奈良県画像(2011年9月7日観測) (クリックで拡大画像へ)

図3は五條市大塔町付近の拡大画像で、画像左に2010年8月12日観測の画像、画像右に2011年9月7日観測の画像を並べて表示したものです。この図で色が暗くなっている箇所は、後方散乱(画像の明るさに相当)が小さい箇所を示しています。SARでは一般に水面などの平坦な面は暗く写る傾向があります。図3の左右の画像を比較すると、黄色い円の中で暗い領域が広がっており、観測領域内を流れる河川の幅が災害後に大きく広がっている事が今回の判読から分かりました。
図3: RADARSAT-2による奈良県五條市大塔町付近の災害前後比較画像

図3: RADARSAT-2による奈良県五條市大塔町付近の災害前後比較画像 画像左:災害前2010年8月12日観測、画像右:災害後2011年9月7日観測 (クリックで拡大画像へ)

図4は十津川村野尻付近の拡大画像で、画像左に2010年8月12日観測の画像、画像右に2011年9月7日観測の画像を並べて表示したものです。2010年8月12日の画像の中心右側、暗い領域(ダム湖)がせき止められているようにみえる部分が風屋ダムになります。図4の左右の画像を比較すると、2010年8月12日の時点では黄色い円の中に風屋ダムの水面が見えており画像は暗くなっていますが、2011年9月7日には明るく観測されています。これは今回の豪雨によって上流から大量の流木がダムに流れ込み、それが水面を覆う事で画像の明るさが変化したと考えられます。
図4: RADARSAT-2による奈良県吉野郡十津川村野尻付近の災害前後比較画像

図4: RADARSAT-2による奈良県吉野郡十津川村野尻付近の災害前後比較画像 画像左:災害前2010年8月12日観測、画像右:災害後2011年9月7日観測 (クリックで拡大画像へ)

図5は十津川村の拡大画像で、画像左に2010年8月12日観測の画像、画像右に2011年9月7日観測の画像を並べて表示したものです。図5の左右の画像を比較すると、黄色の枠で囲まれた部分が2010年8月12日と比べて2011年9月7日では明るくなっており、また災害前画像にはあった明暗の構造がなくなっています。これは斜面の崩壊に伴う明るさの変化と考えられます。
図5: RADARSAT-2による奈良県吉野郡十津川村付近の災害前後比較画像

図5: RADARSAT-2による奈良県吉野郡十津川村付近の災害前後比較画像 画像左:災害前2010年8月12日観測、画像右:災害後2011年9月7日観測 (クリックで拡大画像へ)

取得された画像は、内閣府、国交省、国土交通省国土技術政策総合研究所、和歌山県、三重県等の防災関係機関に提供しています。

なお、JAXAでは今後も、国際災害チャータやセンチネルアジア*3の協力を得て、当該地域の観測、データ解析を継続する予定です。

*1 国際災害チャータ:

正式名称を「自然または人為的災害時における宇宙設備の調和された利用を達成するための協力に関する憲章」といい、宇宙機関を中心とする災害管理に係る国際協力枠組みの事を指します。1999年7月、仏国立宇宙センター(CNES)及び欧州宇宙機関(ESA)によって発表され、翌2000年6月、両機関長の署名を持って発効しました。2005年4月現在までに、宇宙航空研究開発機構(JAXA)を含む7つの宇宙機関が参加しています。

*2 RADARSAT-1(レーダーサット・ワン)、RADARSAT-2(レーダーサットツー):

RADARSAT-2はCSA(カナダ宇宙局)及びMDA(MacDonald, Dettwiler and Associates)が共同で開発・運用している地球観測衛星で、Cバンド合成開口レーダを搭載しています。このレーダは、陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR)と原理は同様ですが、PALSARとは異なる波長のマイクロ波を用いて観測を行っています。

*3 センチネルアジア:

センチネルアジアはアジア太平洋地域の災害管理に資するため地球観測衛星画像から得られる災害関連情報を共有する活動です。JAXAをはじめとするアジア太平洋地域の宇宙関係機関、アジア防災センター(ADRC)をはじめとする防災関係機関、国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)をはじめとする国際機関、および大学、研究所などが協力して推進しています。得られた衛星画像、解析結果などはWebサイトに公開されています。また、WebサイトのGISにより各種の関連災害情報をGISで表示・解析することが可能です。